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「ただただ辛い…」「二度と観れない」“度肝を抜く脚本”に悲痛の声も…だけど「異様なレベル」主演俳優の快演に“衝撃走る”名映画

  • 2025.7.4

映画の中には、実際に起きた事件とよく似た状況を描いた作品があります。今回は、そんな「実在の事件を彷彿とさせる作品」を5本セレクトしました。本記事では第3弾として、映画『楽園』(KADOKAWA)をご紹介します。少女失踪をめぐり疑われた青年と、孤立した男…。ふたりの運命が向かう先とは――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

少女失踪事件と12年後の悲劇

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(C)SANKEI
  • 作品名(配給):『楽園』(KADOKAWA)
  • 公開日:2019年10月18日
  • 出演:綾野剛(中村豪士役)

ある地方都市で起きた少女の失踪事件。それは家族や地域に深い傷を残し、ある青年・豪士(綾野剛)と、失踪した少女の親友・紡(杉咲花)を引き合わせました。孤独や過去の痛みを抱えるふたりは、どこか似た境遇に共鳴しあいます。

しかし12年後、再び同じ場所で少女が姿を消し、事態は思わぬ展開へ。一方、近くの集落で愛犬と静かに暮らしていた善次郎(佐藤浩市)も、ささいな誤解をきっかけに周囲と溝を深め、やがて取り返しのつかない事件へと巻き込まれていきます。

交錯するふたつの事件と三人の運命。その裏に隠された“真実”とは――。

疑い、孤立、そして崩壊――美しい田園に潜む闇と対立

この映画は、『悪人』『怒り』などで知られる作家・吉田修一さんの短編集『犯罪小説集』に収録されている『青田Y字路』『万屋善次郎』を原作とし、『64 -ロクヨン-』の瀬々敬久さんが監督を務めています。

舞台は、美しい田園が広がる地方の町。少女の失踪事件をきっかけに、人々の運命が大きく揺らいでいきます。12年後、再び起きる悲劇。容疑者として追い詰められる青年と、村人との対立から孤立していく男の姿を通して、人間の光と闇が静かに描かれていきます。

主演は綾野剛さん。共演には杉咲花さん、佐藤浩市さん、柄本明さん、村上虹郎さんら、実力派が顔をそろえました。

なかでも、主演を務めた綾野剛さんへの称賛の声は多く見られ「とくに綾野剛は異様なレベル」とまで称されるほどの怪演をみせました。

また、杉咲花さんが演じたのは、少女失踪事件の被害者と直前まで一緒にいた親友・湯川紡。罪悪感を抱えて生きる複雑な役どころ。感情の輪郭がつかみにくく、明確な答えを持たずに現場に入ったという杉咲さんは、あえて「分からないまま演じる」ことで、揺れ動く紡の心をリアルに表現したといいます。

きっかけは実在の事件――フィクションと割り切れない、登場人物たちのリアル

しばしば、実在の事件をモチーフにしているのではと囁かれる『楽園』ですが、原作者の吉田修一さんはMOVIE WALKER PRESSのインタビューで次のように明言しています。

執筆のとっかかりは実際にあった事件ですが、モデルとして出来事をなぞって小説にするのではなく、『犯罪によって人生が狂ってしまった人たちのことをもっと詳しく知りたい』という気持ち、その一心で書きあげました
出典:『吉田修一×綾野剛が白熱対談! 一瞬を永遠にする『楽園』はどこにある?』 MOVIE WALKER PRESS 2019年8月20日配信

原作となった『犯罪小説集』の短編『青田Y字路』と『万屋善次郎』は、現実の事件に着想を得たフィクションであると語られています。具体的な事件名は明かされていませんが、ネットの間では、『青田Y字路』は2005年に栃木県今市市で起きた栃木女児殺害事件(通称・今市事件)、『万屋善次郎』は2013年の山口連続殺人放火事件を想起させると指摘されています。

ただし、これらの事件が公式にモデルとして認められているわけではなく、あくまで「よく似ている」と噂されているにすぎません

現実の痛みを受け止めながら描かれたこの映画には、SNSでも、「集団心理って本当に恐ろしい」「実は身近に起こり得る話かもしれないとドキッとさせられる」「二度と観れない」「ただただ辛い」といった感想が寄せられています。

フィクションでありながら、私たちのすぐそばにある現実を映し出す――『楽園』は、そんな力を持つ名作です。


※記事は執筆時点の情報です