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「あまりにリアル」「辛すぎて死ぬかと思った」“生々しい脚本”に震撼…名女優に“オファー拒否”されるも“白紙覚悟”で挑んだ衝撃作

  • 2025.6.27

映画の中には、胸を締め付けられるような感動を描いた名作があります。今回は、そんな中から“心がえぐられる作品”を5本セレクトしました。本記事ではその第1弾として、映画『ひとよ』(日活)をご紹介します。

あの夜の母の決断が三兄妹の人生を狂わせた…。15年の時を経て再会した家族は、果たして失われた絆を取り戻すことができるのでしょうか?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

「父を殺した」母の告白で止まった時間…15年後、再び動き出す家族の物語

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(C)SANKEI
  • 作品名:映画『ひとよ』(日活)
  • 公開日:2019年11月8日
  • 出演:佐藤健(稲村雄二 役)

ある夜、稲村家の三兄妹(大樹、雄二、園子)が家で両親の帰りを待っていると、母こはる(田中裕子)が戻り、「父を殺した」と告げます。夫が子どもたちへ暴力をふるっていたため、子どもたちの幸せのためと信じての犯行でした。そして、こはるは子どもたちに15年後の再会を誓い、家を去ります。

それから15年、長男の大樹(鈴木亮平)は地元の電器店で働いていますが、吃音に悩み、妻とは別居中。小説家を夢見ていた次男の雄二(佐藤健)は、東京でフリーライターに。美容師を目指していた妹の園子(松岡茉優)は、地元のスナックで働きながら、酒に溺れる日々…。

そんな三人の前に、こはるが姿を現し、止まっていた家族の時間が、再び動き始めます――。

「リアルおかんすぎる」絶賛の声…“予測不能な演技”で魅せる大物女優の底力

本作の原作は、劇団KAKUTAによる同名の舞台です。監督は『凶悪』や『彼女がその名を知らない鳥たち』で知られる白石和彌さん。これまで社会の暗部に切り込んできた監督が初めて“家族”というテーマに向き合った作品です。

監督は母・こはる役に田中裕子さんを熱望しました。“田中さんでなければ成立しない作品”と考え、出演が叶わなければ企画自体を白紙に戻す覚悟だったとか。当初、田中さんは出演を辞退していましたが、約2年にわたる交渉を経て、出演が決まりました。

出演が決まると、田中さんはおよそ半年間、他の仕事を控えて役作りに専念。劇中のこはるの姿に合わせ、髪を地毛の白髪に戻して撮影に臨みました。白髪で演じることを自ら申し出たという田中さんの真摯な姿勢に、監督も感動したといいます。

娘・園子役を演じた松岡さんも、田中さんの演技について映画.comのインタビューで次のように語っています。

田中裕子さんのお芝居は、演者だけではなく、スタッフさんもザワつくくらい、そう来る!?そうなる!?の連続でした。決して奇をてらうわけではなくそれがスタンダードで、私たちが考えつかないお芝居でした。
出典:『佐藤健×鈴木亮平×松岡茉優、“家族”として向き合って得た確信』 映画.com 2019年11月8日配信

SNSでも「ひとよの田中裕子はリアルおかん過ぎる。圧巻」「田中裕子の目つきにボロ泣き」といった絶賛の声が多数寄せられています。

あの夜の“選択”は母の愛か、それともエゴか?

映画『ひとよ』が「心をえぐられる」と言われるのは、“あの夜の衝撃的な事件”が三兄妹それぞれの人生を大きく狂わせ、その後の歩みに深い傷を残したからです。父の暴力が原因だったとはいえ、母が父を殺害したという事実の受け止め方は、三人三様。

長男・ 大樹(鈴木亮平)は、「真実を話せば家族が離れていく」と思い込み、母の存在ごと過去を封じ込め、次男・ 雄二(佐藤健)は、夢だった小説家を諦め、東京でフリーライターに。母への愛情と後悔を抱えたまま、心の奥にある感情をうまく処理できずにいます。妹・園子(松岡茉優)は「お母さんは私たちを助けてくれた」と信じ、その思いが強すぎて、美容師の夢を諦め、地元のスナックで働くことに…。

そんな三人の前に、15年ぶりに姿を現したこはる。彼女の行動は15年前と同様、すべて子どもを思うがゆえ。しかし、その言動はときに常識から外れることも…。それでも根底にあるのは、一方的で不器用な、しかし確かな母の愛なのです。

こはるは、子どもたちに拒まれても責められても、少しも動じません。無理に分かってもらおうとしたり、謝ることで関係を取り繕ったりはせず、ただひたすら“母”として、そこに居続けるのです。

SNSでは「理由はどうあれ殺人犯の子供にしてはいけない」「違う形の選択をしていればもう少し幸せに生きられた」「子供の為だったと言いながら自分勝手な母親にも思える」と、母親の選択に苦言を呈す声や、一方で「何が正しい選択なのか本当に難しい」「何が正しくて、何が間違いかは人の立場によって変わる」「自分だったらどうする?」と葛藤や自身に問いかける声など、さまざまな意見がありました。

そんな物議を醸した本作ですが、「あまりにリアルで観てて苦しくなる」「ただただしんどい」「途中、辛すぎて死ぬかと思った」など深く感情移入している視聴者も多く、「白石和彌作品の完成形では?」「素晴らしい映画でした」と称賛の声が殺到。

『ひとよ』は、感動の再会ではなく、その後に続く苦悩と再構築の時間を描いた物語です。家族だからこその痛みに向き合う登場人物たちの葛藤を通して、観る者の心に深く迫る、まさに“心をえぐられる名作”です。


※記事は執筆時点の情報です