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視聴者の感情をかき乱す“気持ち悪いのに目が離せない”衝撃作、今夏の注目株に

  • 2025.7.10

本格的な夏が目前に迫っている。猛暑が予想される今夏、背筋がぞくっとするようなホラーアニメで涼をとってみてはいかがだろうか。

2025年7月5日より放送がスタートするモクモクれんによる漫画を原作としたTVアニメ『光が死んだ夏』は、ホラーや青春ドラマ、サスペンスといったジャンルが混ざり合い、“恐怖”と“切なさ”を味わえる独特な作品となっている。

帰ってきた親友は、親友ではない“ナニカ”だった

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(C)モクモクれん/KADOKAWA・「光が死んだ夏」製作委員会

「お前やっぱ光ちゃうやろ」――ある日、親友・光が別の“ナニカ”にすり替わっていることに気づく高校生・辻中佳紀(つじなかよしき)。親友の形をした“ナニカ”と日常を送るなか、奇怪な事件が彼らの住む村を襲い始める。『光が死んだ夏』は、作者・モクモクれんにとって初連載作品にもかかわらず、“このマンガがすごい!2023”のオトコ編で第1位を獲得し、累計発行部数は300万部を突破した。

『光が死んだ夏』の怖さのひとつは、以前と姿や口調は同じ親友が、中身は別のものにすり替わっているという“違和感”だ。山で行方不明になった光は、数日後なにもなかったかのように戻ってきた。しかし、よしきは光の中身が本物ではないことに気づくと、光にすり替わった“ナニカ”がどろりと異形の正体を見せる。

いきなり幽霊が現れるようなわかりやすい怖さというより、じわじわと侵食するような“静かな恐怖”が本作の特徴だ。光が“ナニカ”にすり替わったのをきっかけに、無理やり自分の手を喉に詰めて死ぬ村人や、林道を歩くよしきについてくる“ナニカ”といった不可解な出来事が次々に起こる。徐々に狂い始める村や人々に、ぐいぐい引き込まれるのだ。

さらに、本作の舞台となっている集落では、村人がなぜか他の村人のことを詳細に把握しているという、狭いコミュニティ特有の“気持ち悪さ”が描かれている。異形に対する恐怖とはまた違う、ねっとりとした怖さだ。原作では、スーパーの店員がよしきの家庭事情を事細かに話しかけてくる場面がある。いつの間にか自分のことを知られている気持ち悪さが、村全体から感じる不気味さに拍車をかけているのだ。

ちなみに、よしきや光をはじめとした村人たちは三重弁を話しており、自転車のことを「けった」と言ったり、語尾に「やに」とつけていたりする。アニメではキャストに対して三重弁の方言指導もされており、“村”をよりリアルに表現。ホラー作品において重要なリアリティを、キャラクターのセリフからも感じられるようになっている。

それでも一緒にいたい……よしきと光の友情を超えた関係の“切なさ”

『光が死んだ夏』は、光とすり替わった“ナニカ”の恐怖や、村から漂う不気味さだけでなく、よしきと光の関係も見どころとなっている。よしきにとって光は大切な存在であり、友情を超えた感情を抱いているようにも受け取れるのだ。2人の関係に、BLやブロマンス(男性同士の恋愛感情を含まない深い友情や絆)といった言葉を連想する人も多いだろう。

いなくなってしまった本物の光を思い出し、よしきが涙を流すシーンも。しかし、光はよしきの目の前で、以前と同じように笑っている。もういないはずの光が、まるで生きているように存在しているのだ。それでも、よしきは大切な光と一緒にいたいと願ってしまう。歪な現実に苦しむよしきの葛藤が、胸を打つ。そして、よしきの抱える喪失感は、とりわけ本作をBLやブロマンスとして見たときに、胸がぎゅっとなるような切なさをまとうのだ。

『光が死んだ夏』は、じわじわと浸食するような怖さを感じる青春ホラー作品であり、暑さを忘れるのにぴったりだ。加えて、よしきと光の関係には切ない“ドラマ”があり、ホラーが苦手な人も楽しめる要素となっている。『光が死んだ夏』を観て、恐怖と切なさに情緒をかき乱される夏を過ごすのも面白いだろう。


光が死んだ夏
ABEMAにて毎週土曜25:55より最新話を無料放送
[番組URL]https://abema.tv/video/title/218-757
https://x.com/Anime_ABEMA/status/1903282988600680807
【(C)モクモクれん/KADOKAWA・「光が死んだ夏」製作委員会】

ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari