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本誌独占インタビュー。世界を魅了するアンナ・サワイが持つ「特別な才能」と「普通の感覚」

  • 2025.5.26
撮影時、メイクのタッチアップ中に見せたとびきりの笑顔。好きな言葉は? という問いにも「スマイル! 少しハッピーになる言葉が好き」と答えてくれた。ニット ¥300,000/DIOR(クリスチャン ディオール)
撮影時、メイクのタッチアップ中に見せたとびきりの笑顔。好きな言葉は? という問いにも「スマイル! 少しハッピーになる言葉が好き」と答えてくれた。ニット ¥300,000/DIOR(クリスチャン ディオール)

アンナ・サワイほど激動の一年を過ごした俳優はいないだろう。ドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」が配信されたのが2024年の2月。混乱の戦国時代末期に生きる戸田鞠子を熱演した彼女は、瞬く間にスターダムへと駆け上がり、今最も注目を集める俳優の一人となった。しかもその舞台はハリウッドを中心とした世界規模で、だ。

このインタビューが行われたのは、桜が満開のときを迎えた4月上旬。サワイはヴォーグ ジャパンのオフィスへマネージャーの付き添いもなく一人でやって来た。白のTシャツにデニムのカジュアルなスタイルに、レッドカーペットでも印象的な、あの笑顔。

「実は『SHOGUN 将軍』が公開される前に自信がなくなっていた時期があって。演技を学び直さないといけないな、とコーチを探してトレーニングをするようになったんです。でも、公開されてからの世間の反応を見て『あ、私がこの作品で感じて表現したことは間違っていなかったんだな』と思えるようになりました」

俳優としてのブレイクは、彼女に“選ぶ”という新たなパワーももたらした。「一緒に仕事をしたいと言ってくださる方も多くなっている。これまではオーディションを受けてオファーされた役を演じていたけれど、今はもうちょっとセレクティブ。だからこそ、意味のある役を選びたい。自分への責任感も増したなと感じています」

現在はアメリカを拠点に活動をしているサワイ。幼少期には海外で育ち、「もっと自分らしい表現ができる場所へ」と20代で単身渡米するなど、インターナショナルな感覚を持つ彼女だが、意外にも「常に私は日本人だな」と感じているという。

「おそらく私たちは気を使うことに慣れているから、海外にいても周りを気にしすぎてしまうことがある。海外では自分の意見を言うことがとても大事なんですが、『こんなふうに言ったら大丈夫かな』とすごく迷ったり、探り探り言ってしまったり。あとは食事。脂っぽいものよりもお米を食べたいとか。自分の心と体を作っている基礎が日本人だと感じます。日本が一番落ち着く。海外は楽しいですけれど、長くいるとやっぱりもう帰りたい!って(笑)」

商業的にも大きな成功を収めた「SHOGUN 将軍」は、天下取りを目指す武将同士の血生臭い戦いをベースとしているが、時代に奔走されながらも懸命に生きる女性たちやその関係性も丁寧に描いた作品である。男性が同席しない食卓で、鞠子と宇佐見藤(穂志もえかが好演)が愚痴を言い合いながらヤケ食いをするシーンは、彼女たちの人間味をのぞかせながら、現代女性も共感する女性同士ならではの連帯感が表現された印象的な場面だ。

「そのシーンはこだわりがあったので注目してもらえてうれしいです。撮影のとき人前じゃないからとヤケ食いをしたら、時代考証の方に『当時の女性はそんなふうに食べません』と言われてしまって。でも、彼女たちの抱えている思いを、人前では決して見せない所作で表現することがポイントだった。作品中の女性たちは、会話をすることはなくても、お互いの苦しみを分かっているから目線だけでも通じ合える。そんな関係性を大切にしたんです」

新たなステージで見つけた

俳優同士のあたたかな繋がり

そんなシスターフッド的な繋がりは、この成功によりサワイが実生活でも手に入れたものだ。「ゴールデングローブ賞で、キャシー・ベイツ(『ミザリー』(90)でアカデミー主演女優賞を受賞)と一緒にノミネートされたんです。結果的に私が受賞したのですが、彼女が花を贈ってくれて。で、次のクリティクス・チョイス・アワードでは彼女が受賞をしたので私からお花を贈ったんです。式で撮影をしたときも彼女は、“Now it ’ s your time(あなたの時代が来たから)”と私を前へと押してくれて。でも、彼女は本当に素晴らしい俳優だし、私にとってもレジェンドな存在だから、お祝いのお花には、“It ’ s still your time(今もあなたの時代です)”とメッセージを添えました。なんて素敵なんだろうと思って。女性同士がライバル視をしてしまうことは、多少なりともあるとは思うんですけど、優しくサポートしてくれる。自分もそういう存在になれたらいいな」

2024年度のショーレースの顔となった彼女。レッドカーペットや受賞ステージでフレッシュなドレス姿を披露するサワイを、ファッション界が放っておくはずもない。カルティエをはじめ2月にはディオールのグローバル・アンバサダーにも就任した。

「どのブランドと一緒に仕事がしたいかと考えたとき、私は身長が低いことがコンプレックスなので、それをあまり気にしなくていいほうがいいな、と思ったんです。ナタリー・ポートマンジェナ・オルテガといったディオールと縁のある人たちには、私と身長が近い人がたくさんいる。それなら大丈夫だなと。メゾンが持つクラシカルなイメージは、自分にも合っているなと思います」

ニット ¥300,000 カーフレザーのパンツ ¥1,300,000 「グラン トゥール」バッグ ¥760,000/ すべてDIOR(クリスチャン ディオール)
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トップブランドのドレスを身に纏い、錚々たる俳優たちと肩を並べながらも、受賞発表を待つときの気持ちは、不思議と彼女の俳優人生の原点である、幼少期に受けたオーディションのことを思い起こさせたという。

「ミュージカル『アニー』のオーディションを小さな頃に受けたときの感覚に似ていたんです。呼ばれるかもしれないし、そうじゃないかもしれない……そんなドキドキする時間。エミー賞のときには母が後ろの席に座っていたんですけど、『アニー』のときも後ろで立って待っていてくれて。後日『アニー』に一緒に出演した友人が連絡をくれて『授賞式のときのアンナのママ、オーディションの結果発表のときと同じ顔をしていた』って(笑)」

結果的に戸田鞠子という役はサワイにエミー賞やゴールデングローブ賞など、多くの賞をもたらした。輝かしい成功の証しは今どこに飾ってあるのだろうか。「実はトロフィーはまだ箱に入って部屋の角に置いたまま(笑)。今の家にはちゃんと飾る場所がなくて。もう少しスペースのある部屋に引っ越したら、ちゃんとトロフィー用の棚を買って飾らなきゃ」

一人の俳優が一生をかけても手に入れるのが難しい名声の数々を一年ほどで手中に収めたが、本人はいたって冷静に、この“追い風”にどう自分らしく乗るかを模索しているようだ。「キャリアのピークが10だとしたら、まだ2ぐらい。ここからだなっていう感じです。俳優は続けようと思ったらあと50年ぐらいはできる職業だし、もっと伝えたい話とか、チャレンジしてみたい役とか、まだまだ開拓できていない自分がたくさんある気がするので、2……2.3かな(笑)!」

問い合わせ先/クリスチャン ディオール 0120-02-1947

Talent: Anna Sawai Photography: Nick Yang Styling: Rena Semba Hair: Asashi at Ota Office Makeup: Yuka Washizu at Beauty Direction Shot on location at Kait Plaza, Kanagawa Institute of Technology Special thanks to Oolong Zhang Cooperation: Sparking Art Studio Location Coordination (Tokyo Street): Dharmastar and Toku Production: HK Productions Editors: Gen Arai and Yui Sugiyama Interview&Text:Gen Arai

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