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GW明け、気分が上がらない“五月病”の対処法

  • 2025.5.7
Credit:canva

ゴールデンウィークが終わり、そろそろ日常のペースを取り戻さねばと思っている方も多いでしょう。

けれど、朝起きるのがつらい、やる気が出ない、なんとなく憂うつ――そんな感じでなかなかやる気が出ず悩んでしまう人も同様に多いはずです。

これらはよく「五月病」と呼ばれます。

4月に新生活をスタートさせたばかりの人たちにとって、GWは一息つけるタイミングです。

しかし、その安堵の後に待っている現実が重たく感じられ、心身に不調をきたすケースが少なくないのです。

実はこの五月病、日本特有の社会構造と深く結びついており、海外ではほとんど見られない現象です。そのため学術的にはあまり関心を持たれていません。

とはいえ、既存の心理学の知見は、この気の重い時期を安定して乗り越えるための方法をきちんと示してくれています。

今回は、五月病とは何なのか、どう対処すべきなのかをわかりやすく解説します。

目次

  • 五月病はなぜ起きるのか?
  • 五月病の対処法

五月病はなぜ起きるのか?

「五月病」は、医学的には正式な病名ではありません。

多くの場合、「適応障害」や「軽度のうつ状態」などの診断名に該当しますが、一般には新年度のスタートから1カ月ほど経った5月頃に、心身の調子を崩す状態を総称してこのように呼んでいます。

主な症状は、倦怠感、無気力、不眠、食欲低下、イライラ、不安感、そして「会社に行きたくない」「やる気が出ない」といった感情の揺らぎです。

特に新社会人や大学新入生に多く見られますが、異動したばかりの中堅社員など、環境の変化を経験したあらゆる年代に起こりえます。

背景には、「環境の急激な変化」と「その後の休息」があります。

4月は日本の年度始まり。就職、進学、転勤など、生活が大きく変わる時期です。

人は新しい環境に適応しようと無理を重ねがちで、その緊張感の中で1カ月を乗り切った直後に、GWというまとまった休みがやってきます。

この休暇で一旦心身が弛緩すると、5月に入ってから「燃え尽き感」や「現実への反発」が押し寄せ、急に疲労感や抑うつ状態が出てくるのです。

五月病は4月から新生活を始めた人の「がんばりの反動」であり、心理学的には「緊張の糸が切れた」状態ともいえるのです。

なので、4月に環境の変化を経験しなかった人には、あまりピンとこない症状でもあります。

そのため日本では社会的にも広く知られている五月病ですが、意外なことに学術的にはあまり関心を持たれておらず研究もあまり行われていません

理由のひとつは、最初に述べた通り「五月病」があくまで俗称であり、正式な精神疾患名として扱われていないこと。もうひとつは、この現象が日本の社会構造に強く依存しており、国際的に通用する概念として扱いにくいからです。

海外では、新年度の始まりは9月(欧米)や3月(韓国)など国によって異なり、GWのように新生活直後にまとまった長期休暇が訪れるという社会的リズムはほとんど存在しません。

したがって、「新しい環境で無理をして、GWで力が抜けて、五月に調子を崩す」という日本的なサイクルは、世界的にはかなり特異なのです。

カレンダーと心の健康がこれほど密接に連動した「五月病」は、世界でもまれな現象といえるでしょう。

そのため、五月病自体に対する学術的な報告というのはあまりないのですが、五月病の特徴となる症状には、すべて有効な対処法が存在します。

この時期、気分が沈んでなかなかやる気になれない、つらい、という人は、この対処法を意識すると苦しい時期を比較的安定して乗り切れるかもしれません。

五月病の対処法

では、この「五月病」にどう向き合えばよいのでしょうか?

「五月病」は4月から続いた緊張の連続に対して、連休中に心理的緊張が一気に緩むことで起こるで起きています。

これが休み明けの「目標の喪失感」や「現実への抵抗感」を高め、仕事や学業の遂行能力に影響するだけでなく、意思決定や対人関係の回避傾向を誘発しやすい状態へと連鎖していきます。

この状態を解消するには、次のようなことを意識すると良いでしょう。

Credit:canva

1. 「今日は何をするか」を具体的に決めておく

連休明けは、「何から手をつければいいか分からない」「どこから始めても気が重い」という状態になりがちです。

これは、脳がたくさんの判断を一度に求められ、疲れてしまうことが原因です。

これを軽減するためには、業務や行動の「構造化」が有効です。おすすめなのは、「やることをあらかじめ紙に3つだけ書いておく」ことです。

優先順位や順番も書いておくと、余計な迷いが減り、動き出しやすくなります。

少数のやるべきこととその順番をあらかじめ決めておく、という行動の単純化が、意思決定の疲れを防ぎ行動しやすくしてくれます。

2. 大きな目標より「すぐできる小さなこと」を重ねる

「もっとちゃんとしなきゃ」「理想通りにやらなきゃ」と思えば思うほど、体も心も動きにくくなります。

この時期は、「小さくても、できた」という感覚を積み重ねることの方がずっと大事です。

そのため、対処戦略として有効なのは、「目標のタイムスパンを短くし、成果を視覚化すること」です。

たとえば、「3日以内に仕上げる簡単な作業」「午後にひとつだけ処理する課題」を明確化し、それをカレンダーやアプリに記録する。

こういった“確実に終わること”を毎日ひとつこなすだけで、徐々に心にエンジンがかかってきます。

GWも明けて、ここからが本格始動だという気持ちで、長期的目標や理想像に向けて動き出そうとすると、エネルギーが枯渇しやすくなります。

やる気を出して頑張って動くのではなく、「少しずつ動いているうちに、自然とやる気が出てくる」という流れを意識すると、行動することがだいぶ楽になるでしょう。

3. 最初の一歩だけを決めておく

1の提案と似ていますが、こちらはそもそもまず動き出せないという問題に対処する方法です。

何かを始めるとき、やるべきことを全部頭に浮かべていると、スタートの足が止まってしまいます。

そこで大切なのは、「最初の行動を決めておく」ことです。

たとえば、「朝、パソコンを開いたら、まず最初に1通だけメールに返答する」など、“始まりのスイッチ”を作っておくと、自然に次の行動へとつながっていきます。

これは、習慣化の研究でも有効だとされているテクニックです。

4. 情報を減らし、自分の作業に集中する

五月病などの落ち込みやすい時期は、「他人と比較して自分が劣っている」という思考が強まりやすくなります。

そんなときにSNSやネットニュースを見続けていると、どんどん気持ちが落ち込んでいきます。

なので取得する情報を一時的に減らして、自分の手で何かを「やってみる」時間を増やすことが大切です。

たとえば、文章を書いてみる、家事をひとつ終わらせる、机の上を整理する――そんな小さな「自発的な行動」が、自分のペースを取り戻すきっかけになります。

5. 自分をひとりにしない「仕組み」をつくる

やらなきゃいけないことがあっても、「別に今日じゃなくてもいい」「誰にも怒られないし」と思っていると、どんどん動けなくなることがあります。

こういうときは、あえて「人との約束」をするなど外部からやる理由を与えてもらうことが有効です。

たとえば、同僚に「今日中にここまでやります」と伝えておく、図書館で作業する予定を入れておく、人と会う約束を入れるなど、自分ひとりではなく、ちょっとした外の“きっかけ”を用意するだけで、行動の後押しになります。


以上の5つの方法は、「気持ちを切り替える」ためのテクニックではありません。

むしろ、動けない時期に“どうやって動けるような状況を自分で作るか”という、現実的な工夫です。

気分を変えようとするのではなく、動き方を少しだけ変えてみることが、気分の変化につながります

その順番こそが、五月病から抜け出すためのカギなのです。

参考文献

働き方に不満を感じている人の半数以上が 5 月病を経験 自宅でのリフレッシュのすすめ

Click to access 20230420r.pdf
https://www.sekisuihouse.co.jp/company/research/library/2023/20230420/20230420r.pdf

元論文

Breaking habits with implementation intentions: A test of underlying processes
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0146167211399102

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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