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埼玉でオーガニックに触れる旅 。東京から1時間半で行ける「有機の里」へ

  • 2025.5.2

みなさんは「オーガニック」という言葉を聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?

農薬を使っていない野菜やお米、少し値段が高いけれど安心できる食材……色々なイメージがあるかもしれません。

じつはオーガニックとは、単に「農薬を使わない、安全な食べもの」という意味だけではありません。化学肥料や合成農薬、遺伝子組み換え技術を使わず、環境保全を大切にする農業のこと。地域の資源を循環させ、自然と共存するライフスタイルそのものです。

そんなオーガニック文化を肌で感じてみたい。まだイメージがあまり沸かないからこそ、体験してみたい。

そんな方にぴったりの場所が、東京から車や電車でたった1時間半ほどの埼玉県にあるのです。

埼玉に息づく「有機の里」

2023年に「オーガニックビレッジ」を宣言した小川町。なんと1970年代から有機農業が広がっています。

個性豊かな農業者が有機農業に取り組み、それがさらに新しい人を呼び込み、今では埼玉県のオーガニック文化の発信地となっています。

そこから車で30分弱の寄居町も、オーガニック農業に熱心に取り組んでいる町です。

この記事では、小川町と寄居町のオーガニックスポットをめぐる1泊2日の旅をご紹介します。

有機野菜をふんだんに使った食事、無農薬のブドウで作るワイン、自然の恵みを活かした宿泊施設。そんな場所を巡りながら、自然と共存する暮らしに触れる旅。GWのお出かけ先の候補にいかがでしょうか?

「有機野菜食堂わらしべ」でヘルシーランチ

Photo by Yuka Chiba

小川町に到着したら、まずは腹ごしらえ。向かったのは「有機野菜食堂わらしべ」です。

「有機野菜のおいしさをもっと気軽に」という想いから、2004年にオープンしたこのお店。小川町の有機農業の広がりとともに歩んできた、地元で人気の食堂です。

木のぬくもりを感じる温かな空間で、オーガニックパスタ、地産の有機野菜、国産小麦の天然酵母パンなどを楽しめます。

私は、野菜オムレツとソーセージの2種類を楽しめる、ピタパンセットを注文。友人は日替わりランチの豆腐ステーキをチョイス。

ピタパンセット Photo by Yuka Chiba

豆腐ステーキランチ Photo by Noriko

素材の味がをしっかり感じられる、やさしくて美味しいお食事でした。

この日は子連れのご家族とご一緒したのですが、小上がりの席は子どもがいても安心。飽きないように、絵本やおもちゃまで用意されていました。

食事の後は、店内の物販コーナーをのぞいてみましょう。無農薬野菜で作られたジャムや、有機小麦のうどんなど、お土産にぴったりなアイテムがそろっています。

Photo by Yuka Chiba

「武蔵ワイナリー」で無農薬ぶどうのワインとジェラート

Photo by Noriko

お腹を満たしたら、次に向かうのは武蔵ワイナリー。ここでは、完全無農薬のブドウで作るナチュールワインを生産しています。

このワイナリーのすごいところは、JAS有機でも使用が認められているボルドー液すら使わない、完全無農薬でのブドウ栽培にこだわっていること。さらに酵母も小川町のものを使い、土着酵母のみで発酵させたワインを作っています。

ワインの世界では「テロワール」という言葉が使われますが、これはブドウの生育環境のこと。その土地の気候や土壌、そこで働く人々の想いまでもが反映された、まさに“小川町の風土をそのまま味わう”ワインです。

武蔵ワイナリーのブドウ Photo by Noriko

私が購入したのは、「KANPAI」というスパークリングの赤ワイン。普段あまり赤ワインを飲まない夫家族も、「これはおいしい!」と目を丸くしていました。泡と赤ワインの組み合わせが新鮮で、フルーティーながらもしっかりとした味わいです。

ワイナリーでは、無農薬ブドウのジェラートも食べることができます。想像していた「ブドウ味」とはちょっと違う。ブドウの爽やかな風味はありつつも、さつまいものようなほっこりとした甘みがありました。

Photo by Yuka Chiba

面白いのが、こちらのワイナリー、日本酒もつくっているとのこと。米麹も手作りされていて、ワイナリーで米麹の購入もできます。

発酵好きの私にとって、大変心踊るスポットでした。無農薬ブドウのジュースも購入して、次の目的地へと向かいます。

季節の野菜とジビエのレストラン&ゲストハウス「mujaqui」で至福の一夜

Photo by Yuka Chiba

日が傾きはじめたころ、今夜の宿に到着しました。寄居町にある「mujaqui(ムジャキ)」。季節の野菜とジビエをいただけるレストランに、ゲストハウスが併設しています。

築100年以上の古民家を改装した宿は、どこか懐かしい雰囲気。予約時のQRコードを用い、専用端末でチェックイン。部屋の鍵はオートロックで、古き良きものと現代の技術が融合した面白さを感じます。

Photo by Yuka Chiba

部屋に荷物を置いてひと息つくと、ラウンジではオーガニックのお茶やコーヒーを自由にいただけます。さっそく有機ほうじ茶を飲んであたたまりました。

そして楽しみにしていたディナータイム。有機野菜とジビエのコース料理です。レストラン・バー営業もしており、ここで食事だけを楽しむこともできます。

オーナーの上田さんは離島専門のコンサルタントをしていたそうで、寄居町の食材だけでなく、離島の生産者からお預かりした食材も大切に調理されています。

レストランはオープンキッチンになっていて、シェフの赤野さんとお話ししたり、調理の様子を見せていただいたりしながら、お食事を楽しみました。

Photo by Yuka Chiba

地元の旬の有機野菜に、ジビエの出汁を掛け合わせた料理は、どれも絶品。

なかでも印象的だったのは、赤野さんの調理の工夫。たとえば、鹿肉の藁焼き。海外の焚き火料理からヒントを得て、蓋をして燻製のような香りを閉じ込める手法に、試行錯誤の上たどり着いたとのことです。

Photo by Yuka Chiba

お食事と共にいただくお酒は、ナチュールワインや自然酒の日本酒など、どれも体に優しく飲みやすいものばかり。

Photo by Yuka Chiba

「食材の背景や、調理してくれる人の想いを知ると、食事は何倍も美味しくなるなぁ。」

そんなことを考えさせられる、心温まる夜でした。

自然の恵み、日本水を汲む

古民家でも寒くないよう、暖房設備を整えてくださっていたおかげで、熟睡できました。翌朝、ラウンジのオーガニックコーヒーを飲んでチェックアウト。mujaquiをあとにします。

向かったのは、車で15分ほどの場所にある「日本水(やまとみず)」。寄居町の風布川(ふうっぷがわ)という、少し変わった地名の場所にある湧水スポットです。

Photo by Yuka Chiba

日本名水百選にも選ばれているこの湧水は、冷たくて透明度の高い水。大きなボトルを持参して、汲んで帰る地元の人も多いそうです。

実際に汲んだ水をひと口飲んでみると、キリッと冷えた、自然の恵みを感じる味わいでした。

じつはこの水には、日本武尊の伝説にちなんで、縁結びや子授け、安産、不老長寿のご利益があるとも言われています。

水筒いっぱいに汲んで、次の目的地へ向かいます。

農産物直売所で、地元のうどん

旅の最後は、小川町に戻り、バイパス沿いにあるJA小川農産物直売所に立ち寄ります。

地元で採れた新鮮な野菜や果物が所狭しと並ぶ直売所は、地域の台所とも言える場所。直売所の一角には食事処があり、地元のおばちゃんたちが作る手打ちうどんが食べられるとのこと。

「いらっしゃい!うどん美味しいよ、食べてって!」

というおばちゃんの元気な声に誘われて、早速注文。

Photo by Yuka Chiba

選んだのは「きのこ肉汁うどん」。「かけ」と「つけ」のスタイルも選ぶことができました。

素朴な味わいのうどんに、地元で採れた新鮮なきのこと豚肉がたっぷり。

「お肉ときのこで旨みを出すのは、海が遠いこの土地ならではなのかも」と思ったり。旅の終わりに、地元の味でほっと一息つけるのが嬉しいポイントです。

お土産に、地元の養鶏場がつくる、卵の味わいを活かしたシンプルなお菓子「鶏卵われせんべい」を購入。1泊2日の旅を終えます。

オーガニックな旅が教えてくれたこと

東京から約1時間半。でも、そこには全く違う世界が広がっていました。

オーガニックとは、単に食べ物の話ではなく、自然と共存するライフスタイルそのもの。それは、作り手の顔が見える関係性であり、土地と人と食べ物がつながるストーリーなのだと気づかされました。

都会の暮らしに疲れたとき、ふと思い出す場所になりそうです。そして、また別の友人を誘って訪れたい。そんな風に思わせてくれる旅でした。

みなさんも、埼玉のオーガニックスポットをめぐる小さな旅に出かけてみませんか? 体も心も、きっと豊かになるはずです。

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