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30年前、日本中の背中をそっと押した“感謝のメロディ” 言葉にできない想いを伝えた“奇跡の1曲”

  • 2025.5.11
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(C)SANKEI

1995年、音楽は“背中を押すもの”から“そっと寄り添うもの”へと変わりはじめていた。

「30年前、誰に“ありがとう”を言いたくなったか覚えてる?」

小室ファミリーが旋風を巻き起こし、ミリオンヒットが連発されていた1995年。そんな派手さに彩られたJ-POPシーンの中にあって、DREAMS COME TRUEは"変わらない優しさ"と"心に響く言葉"を貫き続けていた。

「サンキュ.」――1995年2月22日リリース。売上や派手な演出に頼ることなく、たったひとことの“ありがとう”に、これほどの説得力を持たせた楽曲は、そう多くない。

「愛してる」と言わない。でも心は伝わってくる

「サンキュ.」は、DREAMS COME TRUEの17枚目のシングルであり、アルバム『DELICIOUS』にも収録されたナンバー。吉田美和の優しくも芯のあるボーカル、中村正人の洗練されたアレンジが重なり、シンプルな言葉のなかに深い想いが宿る名曲だ。

"ありがとう"という一言に込められた、愛情、感謝、祈り――それらをいちいち説明することなく、“空気のように大切な誰か”への想いをまるごと包み込む。

言葉は少ない。でも、だからこそ伝わる。そんなドリカムらしい“感情のかたち”がここにはある。

なぜ「サンキュ.」は長く愛され続けているのか?

ひとつには、どんな状況でも受け止められる“普遍性”がある。

誕生日に、卒業式に、結婚式に、別れの場面にも――聴くタイミングによって、意味が少しずつ変わる。でも、そのどれにもやさしく寄り添ってくれるのが、この曲のすごさだ。

また、DREAMS COME TRUEというユニット自体が"誠実なポップス"を象徴してきたことも大きい。吉田美和の“泣いてるようで笑ってる”ような歌声は、この曲においても、聴き手の心をそっと撫でていく。

「うれしい」「かなしい」といった感情を、わざわざ言葉にしなくてもわかってくれる。それが、"ドリカムのありがとう"なのだ。

感謝を言葉にすることの尊さを教えてくれた歌

この曲がリリースされた1995年は、阪神淡路大震災が発生した年でもある。

多くの人が「当たり前にある日常の大切さ」に気づかされた中、“ありがとう”という言葉が、いつも以上に重く響いた。「サンキュ.」は、ただのラブソングではない。“失ったこと”に対しても、“今そばにいてくれる人”にも、どちらにも届く優しさがあった。

何かに失望したとき。言葉がうまく出てこないとき。この曲がそっと流れると、それだけで少し救われる。

30年経っても、「ありがとう」が、こんなに心に沁みるとは

現代は、SNSで気軽に感情をシェアできる時代になった。だけど、感謝や愛情を“真正面から伝える”ことには、いまだに照れやためらいがある。

そんな今だからこそ、「サンキュ.」は再び注目されるべき一曲だ。多くを語らず、少し俯きながら、それでもちゃんと気持ちが伝わる――そんな歌を、ドリカムは30年前にすでに完成させていた。

それが、彼らが「時代を超えて信頼される音楽」を作り続けてきた理由であり、この曲が今も、静かに誰かの人生のBGMになっている理由だ。


※この記事は執筆時点の情報です。