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40年前、日本中を驚かせた“アイドルによるアイドル批評” 常識すら塗り替えた“革命の1曲”

  • 2025.5.11
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(C)SANKEI

1985年「アイドルとは何か」をアイドル自身の口から歌われた“革命の1曲”

「40年前、どんな歌に“アイドルの本音”を見た気がしたか覚えてる?」

中森明菜のドラマティックなバラードが大人たちを魅了し、おニャン子クラブが“身近な女の子像”として支持を集めていた1985年。
そんな中、“ど真ん中のアイドル”が、自らの職業をタイトルにした歌を世に放ち、世間に衝撃を与えた。

小泉今日子『なんてったってアイドル』――1985年11月21日リリース。キュートな笑顔、ポップなメロディ、そして歌詞に潜んだ“自己言及”のメッセージ。この一曲が、“アイドル=偶像”という構図を大きく揺るがすことになる。

スパンコールを着て、アイドルの矛盾を歌った女の子

『なんてったってアイドル』は、小泉今日子の17枚目のシングル。作詞は秋元康、作曲は筒美京平という、日本ポップス界を代表するコンビによるもの。

 “本音と建前、使い分けなきゃ生きていけない”――そんなアイドルの裏側を、キョンキョンは明るく軽やかに、でも鋭く歌った。

アイドルを演じながら、アイドルの現実を突く。この“メタ構造”は当時としてはきわめて新しく、同時に彼女の知性と戦略眼を強く印象づけた。

なぜこの曲は、ただのアイドルソングで終わらず常識すら塗り替えたのか?

ひとつには、小泉今日子という存在そのものの強さがある。

彼女は、王道路線のアイドルでありながら、決して「つくられた笑顔」だけではなかった。インタビューでは素直に迷いや不安を語り、ドラマや映画では“普通の女の子”をリアルに演じた。

そんな彼女が歌う『なんてったってアイドル』は、どこか開き直っているようで、どこかあきらめていて、そしてどこか楽しんでもいた。それが、アイドルファンだけでなく同世代の女の子たちの共感を呼び、アイドルソングの常識すら塗り替えたと言えよう。

“アイドルでいること”を嘘にしない。そんな潔さが、小泉今日子を“アイドルの中のアイドル”に押し上げた。

自己言及型アイドルのはじまり

「なんてったってアイドル」は、いわば“アイドルによるアイドル批評”とも言える。これは、のちの自己プロデュース型アーティストや、セルフパロディを含んだアイドル像のはしりでもある。

“アイドルってこういうもの”だと言われる前に、“私はこういうふうにアイドルをやってるよ”と笑い飛ばすようなポップな楽曲にしたこと。それが、この曲が今も“特別”であり、愛され続ける理由だ。

40年経っても、“なんてったって”は誇りになる

時代が変わっても、「アイドル」という言葉に求められるものは大きい。夢を与える存在であり、笑顔を絶やさない存在であり、何より“完璧”であろうとされる。

でも、この曲が教えてくれたのは、その裏にある矛盾や人間らしさを、“ユーモアと開き直り”で乗り越えていく強さだった。

「なんてったってアイドル」と、今も堂々と歌える存在が、40年経った今も日本中で語り継がれているのは、決して偶然じゃない。


※この記事は執筆時点の情報です。