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39年前、日本中をときめかせた“季節と恋の名曲” バレンタインを永遠に変えた“大人っぽいアイドル”とは?

  • 2025.5.12
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(C)SANKEI

1986年、“アイドルのリアルな恋”が歌になる時代が始まった。

「39年前、どんな女の子が一番キラキラしていたか覚えてる?」

おニャン子クラブのブームが頂点を迎えていた1980年代半ば。“会いに行けない”アイドルから、“クラスにいそうな女の子”へ――アイドル像が少しずつ変わりはじめていたその時代。

中でも“ちょっと背伸びした恋を知っていそうな”イメージで、世間の注目を集めたのが国生さゆりだった。

1986年2月1日、シングル『バレンタイン・キッス』でソロデビュー。季節と恋をテーマにしたこの一曲が、やがて“2月の風物詩”として、何十年も歌い継がれることになる。

「バレンタイン・キッス」が教えてくれた、“アイドルの等身大”

おニャン子クラブ会員番号8番として活動していた国生さゆりは、グループ内でも大人っぽいムードと、どこか近寄りがたい魅力を併せ持った存在だった。

そんな彼女のソロデビュー曲は、まさかの“バレンタイン”というど真ん中の恋愛テーマ。しかも、女子中高生のリアルな目線で語られるラブソングだった。

『バレンタイン・キッス』は、可愛さとちょっとした“自信”がミックスされた詞に、覚えやすいメロディ、そして国生さゆりの“ぶっきらぼうなのに惹かれる”ようなボーカルが重なり、瞬く間に“恋する女の子のテーマソング”として広まった。

なぜ国生さゆりは特別だったのか?

彼女は、いわゆる“ぶりっ子”でもなく、“元気印”でもなかった。その代わり、少し尖った雰囲気と、クールで真面目な一面を持っていた。

グループの中でのポジションも、どこか“ひとりだけ別の空気を纏っている”ような存在感があった。だからこそ”恋をしてるけど、簡単には踏み込めない”そんな思春期の微妙な感情を、彼女の歌声がリアルに表現できたのだ。

国生さゆりは“自立した女性像”を先取りしていたとも言える。アイドルでありながら、媚びない、甘えない、でも確かに“女の子”として揺れている。そのバランスが、当時の女の子たちに新鮮だった。

“季節ソング”と“アイドルソング”の境界を壊した名曲

『バレンタイン・キッス』は、今や2月の定番ソングとして知られているが、当初からそうだったわけではない。

1986年のリリース後、アイドルソングとしては異例のロングヒットを記録し、やがて学校、街中、テレビ、カラオケとあらゆる場所で流れる“バレンタインのBGM”に定着していった。

その背景には、アイドルソングを“記念日と結びつける”という発想が斬新だったこと、そして楽曲そのものの完成度が高かったことがある。国生さゆりの表現力が、そうした“音楽としての強さ”を支えていたのは間違いない。

39年経った今でも、彼女の声が2月を連れてくる

今では「バレンタイン・キッス」は、AKB48など多くの後輩アイドルにもカバーされ、バレンタインシーズンには欠かせない存在となった。

だが、あの年の、あの声の、あの空気感を再現するのはなかなか難しい。国生さゆりの“ちょっとツンデレな歌声”があってこそ、この歌はより輝いていた。

アイドルが、ただの“夢”ではなく、“自分たちの隣にいる存在”として描かれはじめた時代。その象徴のひとつが、国生さゆりだった。


※この記事は執筆時点の情報です。