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プレゼン資料の99%は「この一文」で決まる…「パワポ作りに精を出す人」ほど相手に刺さらないワケ

  • 2025.4.18

相手に刺さる資料はどうすれば作れるのか。ITコンサルタントの江村出さんは「どのような資料にもメインの主張が必要だ。この主張を表現にこだわり魂を込めた一文に圧縮することで、相手に刺さる資料となる。刺さる一文さえあれば、補足資料のツメが少々甘くとも、問題ない」という――。

※本稿は、江村出『仕事を上手に圧縮する方法 仕事時間を1/5にして圧倒的な成果を上げたITコンサル流 仕事の基本』(日経BP)の一部を再編集したものです。

長文メールは必要ない

あなたは普段、どんなメールを書いていますか?

本当に言いたいことはわずかであるにもかかわらず、10行や20行もの長文のメールを作成してはいないでしょうか?

あるいは、資料作成でも、調査に時間をかけたからといって5枚や10枚にもわたる資料をつくってはいませんか?

つい私たちは、自分が力を入れたことや多くの時間を費やしたことについては、必要以上に文章を書き連ねて説明をしてしまいがちですが、これは大きな間違いです。「全のせ」してうれしいのはラーメンくらいですから、メールも資料も今日から書き方を変えましょう。

最も力を入れるべきは「あなたが考え抜いた1つの光る解」だけです。それ以外の99%はメインの考えを補足するものにすぎません。

【図表1】残念な人が書きがちな力作資料やメールの特徴
出所=『仕事を上手に圧縮する方法 仕事時間を1/5にして圧倒的な成果を上げたITコンサル流 仕事の基本』(日経BP)
メインの考えを一文に圧縮する

例えば、ある企業をITコンサルとして支援していて、その企業がさらなるIT投資をすべきか悩んでいたとします。

事例調査をしたところ、「一般企業におけるIT投資の割合の目安は、全体の売上の1~2%が妥当」ということがわかったとして、これを文章にしてそのまま相手に説明するのは得策ではありません。

「結局、うちの会社ではどうすると最適なの?」

と問われてしまいます。調べた内容はあくまで補足であり、相手に最も伝えるべきことはこの情報ではないからです。

本当に伝えたいことは、

「御社のIT投資の割合を一般企業のレベルにまで引き上げ、○○というテーマに取り組むべきだ」

となるはずです。一般事例の情報はあくまでも相手に伝えたいことの補足であり、メインの主張がなければ意味はないのです。

メインの考えを一文に圧縮して書くことができれば、文章は99%完成です。補足として用意した資料のツメが多少甘くても問題ありません。詳しく聞きたければ相手から聞いてもらえばよく、それに対して口頭で返せば十分です。

パワポのリード文に書くべきこと

パワポも同様です。力を込めるのは「リード文」のみで十分で、それ以外のグラフや表、多くの文章は基本的に補足です。にもかかわらず、パワポづくりに精を出す人ほど、むしろ主客が転倒したパワポを作成しがちです。

例えば、3カ月のタスクスケジュールを作成するように指示され、パワポで示すことになったとします。ガントチャート(2週間単位くらいのタスクを並べて絵にしたもの)にまとめたとして、あなたはこのとき、このリード文に何を書きますか?

「タスクは以下の通りです」

というリード文では中身がなく、書かないのと同じです。

「タスクA→B→Cの順番で進めます」

これも絵を見ればすぐにわかるので、いいリード文とはいえませんね。

「遅延しないよう前倒しに進める予定です」

この意気込みはけっこうですが、リード文としては不適格です。

このとき、リード文に書くべきは、タスクを進める上での「工夫ポイント」です。例えば、「早期にプロトタイプを実施しトライアンドエラーで進める方針」などと記載すれば、通常より精度は落ちても短期間で進めるスケジュールを組んでいるということが伝わります。

スケジュールの概要をそのまま書こうとするのではなく、一段上の視点で考え方を示そうとすれば、うまいリード文をつくりやすくなります。

このリード文を相手に「刺さる(深く納得させる)」表現で、資料の冒頭に1~2行で端的に示すことができればパワポも99%完成といえるのです。

【図表2】資料の目的別リード文のポイント
出所=『仕事を上手に圧縮する方法 仕事時間を1/5にして圧倒的な成果を上げたITコンサル流 仕事の基本』(日経BP)
聞き手の興味をしっかりおさえる

リード文の書き方は、資料の目的によって少しずつ変わります。

例えば、進捗報告で遅延を伝える場合、本文に必ず遅延の情報が載るため、リード文でも「遅延です」と書けば重複になってしまいます。また、報告を受ける立場からしても、遅延であることだけを聞いても「それで?」となるでしょう。

聞き手が知りたいのは、「遅延による影響は何か」と「今後どうするのか」です。

ここに意識を向けると、タスクの遅延そのものではなく、他のタスクや後続のタスクに目を向けることが効果的であるとわかります。

たとえ遅延していても、後続に影響がないと言いきれれば読み手は安心しますし、後続に影響があったとしても先行して他のタスクを実施するなどの今後のプランを示すことができれば、過剰に心配されることはないでしょう。

リード文はワンパターンで書けるものではありません。読み手の興味をしっかりおさえ、「なるほどね、そのアクションでいこう」と言われる文を目指しましょう。

はじめは冗長な文章で構わない

とはいえ、読み手の心に刺さる一文は簡単につくれるものではありません。ここでは、私が実際に行っている、刺さる一文をつくる手順を紹介します。

まず情報を入手することから始めましょう。そして、伝えたい内容をできるだけたくさん、ギッチリ詰め込んで、とにかく文章を作成します。このときは、何行にもわたる冗長な文章になっても構いません。むしろ情報が多いほうが、本当に伝えたい要点を発見しやすく、また刺さる一文も生まれやすいため、書けるだけのことを書き出してみてください。

その後、主張をクリアにするために「そぎ落とし」の作業に入ります。先ほど書いた文章の中には、一般論や誰でもわかる情報が入っているでしょう。それらを省いて、必要最低限の主語・述語・修飾語だけを残しておきます。

ペンと定規で線を引く人
※写真はイメージです
「平凡」からインパクトがあるワードに変えていく

ここまでできたら、次は表現を見直していきましょう。メッセージ性が強くてインパクトのあるワードに変えていきます。

例えば、「柔軟な組織づくりを目指す」と書いてしまうと何だか平凡ですよね。状況に応じて変化させていこうとしていることは伝わりますが、どの会社でも取り組むべき当たり前のことしか書いていないように見えます。

江村出『仕事を上手に圧縮する方法 仕事時間を1/5にして圧倒的な成果を上げたITコンサル流 仕事の基本』(日経BP)
江村出『仕事を上手に圧縮する方法 仕事時間を1/5にして圧倒的な成果を上げたITコンサル流 仕事の基本』(日経BP)

この表現を「アジャイル型の組織に改革する」と変えてみてはいかがでしょうか? 「アジャイル」とはプログラム開発の取り組み方のひとつで、すべての機能を一気につくろうとするのではなく、小さな機能に分解して順番に現場で使えるようにする手法です。トータルではより多くの時間がかかる可能性はありますが、小さな成果を積み重ねていくことができ、業務ユーザとの認識のズレを防ぎやすくなるため、大きな手戻りを防ぐことができるというメリットがあります。

あえて組織づくりというテーマに対してプログラム開発の用語であるアジャイルという言葉を使うことで、活動に多くの意図を含んだ「深み」を出すことができるのではないでしょうか。

さらに工夫して独自の言い方で表現することができれば、取り組む人たちのモチベーションアップにもつながります。

このように一つひとつの表現にこだわって精錬に精錬を重ね、「魂を込める」ことで、刺さる一文ができるのです。

「カッコ書き」を使うワザ破壊力

リード文を作成する際、どうしても文が長くなってしまうときがあるかと思います。そんなときは「カッコ書き」をうまく使うワザが有効です。

例えば、「拠点ごとに声の大きな代表者を置き、業務改革への前向きなマインドを現場に浸透させる」というリード文を書くとします。何とか内容は理解できるものの、一文が少し長くてスッと頭に入りづらいのではないでしょうか。読み手のことを考えた工夫が必要です。この場合には、

「拠点ごとに代表者(声の大きな)を置き、新たなマインド(業務改革に前向きな)を現場に浸透させる」

としてみてください。たちまち文章が把握しやすくなるはずです。

コツは簡単で、修飾部分をカッコ書きにすることです。こうすれば文章における「誰がどうする」という軸がハッキリ見えるようになるのです。また、カッコ書きは意外と目立つので、ある意味そのワードを強調することもできます。

江村 出(えむら・いづる)
EYストラテジー・アンド・コンサルティング アソシエートパートナー
慶応大学卒業後、アビームコンサルティングを経て、デロイト トーマツ コンサルティングに入社。現在は、EYストラテジー・アンド・コンサルティングのアソシエートパートナーとして従事。ITコンサルタントとして業界を問わず数多くの大企業の改革をリード。2021年に国内大規模ITイベントに登壇し1200名に講演。2023年には新規ビジネスの提案力と推進力が評価され「BTPチャンピオン」を受賞。また、Udemy講師としてITとコンサルの育成講座を展開中。

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