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30年前、日本中が笑って泣いた“異彩の友情ドラマ” 唯一無二な2人が見せた“人生の歩き方”を振り返る

  • 2025.4.30
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(C)SANKEI

1995年、日本のテレビに“友情と再生”をテーマにした異色のヒューマンドラマが誕生した。

「30年前の秋、どんなドラマに心を揺さぶられていたか覚えてる?」

バブル崩壊後の不況ムードが広がる中、人々は成功や恋愛よりも、もっと“リアルな人間のつながり”を求め始めていた。
そんな時代に、TBS金曜9時枠で放送されたのがこの作品だった。

『人生は上々だ』——1995年10月13日スタート。
主演は浜田雅功(ダウンタウン)と木村拓哉(SMAP)。脚本は遊川和彦。借金取りと借金まみれの青年、そんな水と油のふたりが織りなす、不器用で温かな人生劇だった。

逃げるでもない、追うでもない――ふたりの奇妙な旅

物語は、ギャンブルに溺れて多重債務を抱える元医大生・大上一馬(木村拓哉)と、彼を追う取立て人・内藤八郎(浜田雅功)との出会いから始まる。返すあてのない借金を抱えた一馬と、非情になりきれない取立て屋・八郎。二人は奇妙な縁でつながり、やがて逃避行ともつかぬ旅に出る。

火事で家族を失った過去を持つ八郎。かつては医大生だったものの、恋人の自殺により人生を踏み外した一馬。誰にも言えない傷を抱えたふたりが、衝突し、支え合いながら、やがて小さな希望を見つけていく姿を描いた。

派手な展開はない。それでも、彼らの“生き延びる姿勢”は、どこまでもリアルで、静かに胸を打った。

なぜ『人生は上々だ』は異彩を放ったのか?

当時のテレビドラマ界では、華やかなトレンディドラマやサスペンスものが全盛だった。そんな中、『人生は上々だ』は“社会の底辺で生きる普通の人々”に光を当てた点で異彩を放った。

脚本を手がけたのは、後に『GTO』で知られる遊川和彦。遊川らしい、絶望と再生を描くタッチが、このドラマにも色濃く反映されている。

浜田雅功は、持ち前のコミカルさを封印し、内藤八郎という“優しすぎる借金取り”を好演。木村拓哉は、この作品で“影を抱えた青年役”を演じ切り、以後の『ロングバケーション』『ビューティフルライフ』へと繋がる。

主題歌はSMAPの『俺たちに明日はある』。この楽曲のメッセージもまた、“明日へ向かうために今日を生きる”というドラマのテーマと絶妙にリンクしていた。

『人生は上々だ』が残したもの

このドラマは、大ヒット作とは言えなかったかもしれない。だが、平均視聴率20.1%という安定した数字を記録し、放送終了後も「心に残るドラマ」として評価され続けている。

助演女優賞(飯島直子)やベストドレッサー賞(木村拓哉)など、作品自体も第7回ザテレビジョンドラマアカデミー賞で高く評価された。

そして何より、成功や幸福だけではない、“傷だらけでも誰かと寄り添って生きる”という生き方を、そっと肯定してくれた。

30年経っても、“上々な人生”を信じたくなる

人生は思い通りにならない。過去の傷は消えないし、努力すれば必ず報われるわけでもない。それでも誰かと出会い、支え合えたなら――人生は上々だ。

30年が経った今、このドラマが静かに投げかけたメッセージは、より深く心に響く。

完璧じゃなくても、上々な人生。そんな生き方が、あの頃よりも、きっと今の時代にこそ必要だ。


※この記事は執筆時点の情報です。