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ついに始まったNHK朝ドラ『あんぱん』 大物俳優のまさかの“退場”に視聴者から嘆きの声「もっと見たかった」「早すぎ」

  • 2025.4.4
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『あんぱん』第1週(C)NHK

連続テレビ小説『あんぱん』第一週で描かれたのは、のぶ(今田美桜/幼少期・永瀬ゆずな)と嵩(北村匠海/木村優来)の幼少期。これから二人がどのように時代と向き合い、人生を築いていくのか、その出発点ともいえる週となった。なかでも印象的だったのが、「“らしさ”の呪い」と「正義」というふたつのテーマの提示である。

“らしさ”から自由になるために

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『あんぱん』第1週(C)NHK

NHK連続テレビ小説『あんぱん』第一週目がスタート。『アンパンマン』シリーズで知られる漫画家・やなせたかしと、その妻である小松暢をモデルにしつつも、脚本家・中園ミホによるオリジナルストーリーとして新たに紡がれる物語だ。主人公・朝田のぶを演じるのは今田美桜。のぶの夫となる柳井嵩を北村匠海が演じる。

朝田のぶは、男の子たちにも臆せず立ち向かう気の強い女の子だった。喧嘩っぱやくて無鉄砲、周囲からは「ハチキンおのぶ」と呼ばれている。昭和の時代、女性は「女の子らしく」することが求められるなか、のぶのように自分の意思を貫こうとする存在は、さぞ周囲から浮きやすかったことだろう。のぶの祖母である朝田くら(浅田美代子)が言っていたセリフ「黙っていれば可愛いのに」が象徴するように、女性にとって、外見の愛らしさと“おとなしく従順”であることが結びつけられていたのだ。

一方、柳井嵩は絵を描くのが得意な少年。のぶに助けられる場面では「男なのに情けない」と言われ、守られることに「惨めになる」とこぼす。男は強くあるべき、守る側であるべきだ……そんな無言の圧力が彼の心を縛っていた。父・柳井清(二宮和也)や伯父の寛(竹野内豊)に「絵が上手い」と認められた瞬間は、嵩にとって、自分を肯定された初めての体験だったのかもしれない。

男女それぞれにかけられる“らしさ”の呪い。第一週では、その息苦しさが、のぶと嵩という二人の子どもを通して丁寧に描かれていた。この「らしさ」をはねのけるような生き方こそが、のちの人生にどのような道を拓くのか。のぶが自身の言葉で世界と対峙していく姿を見たい、そう思わせる週だった。

黒も白に、白も黒に

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『あんぱん』第1週(C)NHK

『あんぱん』の根底には、やなせたかしが語っていた「正義」に対するまなざしがある。

『アンパンマン』の原点には、「絶対的な正義なんてない」「正義はある日逆転することがある」「本当の正義は、お腹をすかせている人に食べ物を分けること」という信念があったという。第一週ではその正義の種のようなものが、のぶや嵩を通して描かれていた。

社会的な正しさや評価は、ときに簡単にひっくり返る。今は善とされていることが、来年には悪とされているかもしれない。とくにインターネットやSNSが浸透している現代では、そのスピードがより速く、残酷だ。

誰かの正義が、誰かに対する加害になり得る。そんな時代だからこそ、外から与えられる価値観ではなく、自分のなかに“背骨”を持つ必要がある。自分なりの判断軸を持つこと。それが『あんぱん』という物語が投げかける「正義」に対する一つの答えになるのではないだろうか。

そんななかで印象的だったのが、のぶの父・結太郎を演じる加瀬亮の存在だ。久々の映像出演となった加瀬亮が早々に退場してしまったことには、SNS上でも「もっと見たかった」「退場早すぎ」など惜しむ声が多く上がった。けれど、結太郎がのぶに残した言葉や背中は、彼女の「正義」の原点として物語に深く残っていくのだろう。

『あんぱん』の第一週で提示された「らしさ」と「正義」というテーマは、いまを生きる視聴者への静かな問いかけだった。男の子らしく、女の子らしく、という枠に縛られることなく、自分らしく在ること。他人に評価される正義ではなく、自分のなかにある優しさや思いやりに従うこと。それが、のぶと嵩がこれから辿る人生において、どのように形づくられていくのだろうか。

NHK 連続テレビ小説『あんぱん』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_