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長時間保育がベストではない? 文京区区長が考える子育て支援においての問題点が長時間労働である理由【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.12】

  • 2025.3.21

全国の首長で初めて育休を取った文京区の成澤区長。当時、ゼロだった文京区役所の男性職員の取得率も、今や77.8%%にまでに上昇。しかし、成澤区長は長時間労働の是正こそが、最大の子育て支援といいます。そんな成澤区長の考える、文京区の子育て支援策とは?

お話を聞いたのは…

文京区 成澤廣修区長

文京区本郷出身。暁星学園幼小中高、駒澤大学法学部卒業、明治大学公共政策大学院修了、修士(公共政策学)。当時全国最年少の25歳で文京区議会議員に初当選、第37代・第40代文京区議会議長、2007年、文京区長に就任。

>>文京区 区長の部屋HP

―文京区の子育て支援策の基本的な考え方はどのようなものですか。

成澤区長:「子ども起点」であるということですね。長時間労働と長時間保育のバランスをどう取るのか、という問題があります。文京区の共働き世帯の場合、子どもが小学生ですと、公的な学童、さらに民間の学童が迎えに来て、そこでお弁当を食べて、夜9時とか10時に帰って、また朝は学校があるので8時くらいには家を出てしまうというケースがあるんですね。そういう働き方しかできないのはどうなのだろうか、と思っているんです。子どもを大切にする子育てのために、親がどう働き方を変えるのかを考える。こういう考えが、社会で共有されないといけないと思っています。もちろん国や都の補助制度を使って他に選択肢がないギリギリの子育てをしている人への支援は検討しますが、これ以上の長時間保育がベストとは思わない。

―手厚い学童の提供は、起きている時間のほとんどを家で過ごせないことになってしまいます。それは子どもにとってはとても大変なことだと、私も思ってきました。

成澤区長:週休二日制にするときもでしたが、さまざまな働き方の改革は公務員の世界から始まっているので、そういう意味でも、文京区役所が率先してやっていくという姿勢でいます。いくつかの自治体でも行うようですが、この4月から職員を対象に、現在、子どもが小学校3年生まで認めている育児時短勤務を、6年生までと拡大します。フルスペックで働くより、給料は少し下がるかもしれないけれど、パパとママで交代で取るなどして、少しでも子どもと向き合う時間を作っていくことは、この拡大でできるようになると思っています。

―長時間労働の是正につながりますよね。

成澤区長:そうですね。あと勤務間インターバル制度ですが、時差勤務制度の活用や年次有給休暇の取得などにより、終業後翌日の始業までに12時間のインターバルを取ることを原則とすることが、今年の2月から義務化されています。

―時短勤務は少子化対策のためというのもあると思いますが、私は子育て世帯の男性の時短勤務を進めないと、結局女性の家事負担が減らなくて、女性のキャリアパスにも影響が出てきてしまうと思っているんです。男女共同参画っていっても、公平ではない。ただその時に、2つ問題があるという話になります。一つは、男女共ですが、短い時間の勤務ではキャリアとして経験が積めない、例えば、責任ある仕事を任せられないということですね。もう一つは、早く帰ることに対しての周囲への遠慮。この2つがあって、時短勤務はなかなか取りづらいといわれています。

成澤区長:時短勤務といっても、午前中丸々休んだりするわけではないので、キャリアロスにつながるということは、私はないと思っています。勤務時間インターバルも義務化するということは、それが一般的になるので、問題ないと思っています。ただ、役所の仕事はどうしても繁忙期があるので、そういうときはテレワークに振り替えるということもできます。それが決してキャリアロスにならないというメッセージを、雇用する側がしっかり出していくことが大切だとも思っています。

―文京区民の方は、職住接近の方が多いのではないかと思いますが、子育て支援策に何か影響はありますか。

成澤区長:制度としてあまり影響ないと思いますが、長時間保育へセーブをかける理由にはなると思います。子どもが熱を出したなど、何かあっても、職場から1時間もあれば戻れる距離ということだと思いますので。

―子育て支援策の検討は、どのような体制でなさっているのですか。

成澤区長:区の条例で定める「子ども・子育て会議」で、毎年ニーズ量の策定結果を示して、ニーズ量にどうやって事業を当てはめていくかという作業を、毎年更新しています。ただ、子育て支援のメニューというのは、もう出尽くした感があるんです。

―もうかなりやっている、と?

成澤区長:というよりは、「子ども支援」と「子育て支援」は違うんですね。子育て支援というのは、えてして親支援なんですね。保育園を作ることも、親の両立支援です。心理的負担感の軽減という意味では相談機能の強化としての、「地域の子育て支援拠点」づくりとか。あとは金銭的負担の軽減、最近でいうと給食費の無償化とか。

―給食費や修学旅行の無償化は、ある意味、トレンドですよね。

成澤区長:どれも財政との関係もあるので、この先の少子化の状況次第では税収も減るので、今より支援ができなくなることもあるかもしれませんが、今は、その支援も必要だということでやっています。その中で、子どもそのものに対する支援って、何があるんだろうというと、実はあまりないのです。今後「子ども支援」をどう作っていくのかということは考えています。

―それこそが、先ほど区長がいわれたような、「親子が一緒にいる時間」ではないかと思います。子どもは学校や学童も、もちろん楽しんでいるとは思いますが、子どもなりに「外の顔」で過ごしていると思うんですよね。家でリラックスできる時間を作ってあげるという意味でも、親が早くに家に帰るということは大事だと思います。

成澤区長:そうですね。支援は、負担とのバランスでもあるので、「子ども起点」の視点を大事にして、これからも施策を考えていきたいと思います。

取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生

政治ジャーナリスト 細川珠生

聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。

(細川珠生)

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