連載『お洒落さんのためのファッション用語辞典』では、トラッドファッションから最新のファッションまで、FUDGEでおなじみのファッション用語についてわかりやすく解説します。95回目は「ワラビー」のルーツを探ります。この連載を読んでファッション用語の背景や起源を知れば、毎日のお洒落がより楽しくなること間違いなし!
【用語解説】まずは「ワラビー」を知ろう。
「ワラビー」は、オーストラリアやニューギニアに住むカンガルーに似た小動物おことで、このワラビーのひづめの形にヒントを得て作られた、カジュアルなショートブーツのことです。袋縫いにしてふたつ鳩目のひも結びデザインにしたブーツで、全体にずんとりとした感じ、斜角のつま先、天然ゴムを用いた厚い靴底を特徴としています。
【歴史】昭和の終わりにはルーズソックスとの名コンビでした
オリジナルは、イギリスの名門靴メーカー《クラークス》が1966年に売り出したブーツとされています。《ワラビー》のランス・クラークがデンマーク発祥の靴をモチーフにして発案。《クラークス》の提携工場である、アイルランドのパドモア&バーンズ工場で製造したのだとか。
カナダ、アメリカで販売する際に、そのずんぐりむっくりとした見た目や足をやさしく包み込んでくれる履き心地を、有袋類の動物がお腹に大切な子どもを入れて育てることになぞらえ、「ワラビー」と命名したと言われています。日本では、1980年代のアメカジブームの際に、高校生や大学生がルーズソックスと合わせて履いて一大ブームとなり、それ以降も、定番靴として親しまれています。
【雑学】映画監督ウェス・アンダーソンは「ワラビー」愛好家
お洒落なことでも知られる、アメリカの監督で映画プロデューサーのウェス・アンダーソン。彼の足元の定番こそ「ワラビー」です。会見など公式な場であれば、コーデュロイのオーダースーツに身を包み、その足元にベージュやブラウンの「ワラビー」を履いて。撮影現場であれば、ジャケットを脱いで、上半身はチェック柄のシャツ&セーターに代え、やはり足元は「ワラビー」を。
締め付けがなく楽に履いていられるのに、どこか革靴を思わせるきちんと感があることがセレクトのポイントなのかもしれません。そんなウエス・アンダーソンの着こなしは、FUDGE GIRLの毎日服のお手本になりそう。春になり、日差しが暖かくなってきたら、さらにセーターを脱いで、シャツ一枚の着こなしにするだけ。あるいは、スカートやワンピースを纏い、素足にソックスを履いて「ワラビー」をオンしても。気負わないカジュアルが叶うので、おすすめですよ!
監修:朝日 真(あさひ しん)
文化服装学院専任教授、専門は西洋服飾史、ファッション文化論。早稲田大学文学部卒業後、文化服装学院服飾研究科にて学ぶ。『もっとも影響力を持つ50人ファッションデザイナー』共同監修。NHK『テレビでフランス語』テキスト「あなたの知らないファッション史」連載。文化出版局『SOEN』他ファッション誌へ寄稿多数。NHK「美の壺」他テレビ出演。
illustration_Sakai Maori
edit & text_Koba.A