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NHK『あんぱん』だけじゃない “作家・漫画家を支え続けたヒロイン”が主役の大ヒット歴代朝ドラ

  • 2025.4.17

現在放送中のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)『あんぱん』は、『アンパンマン』を生み出した漫画家・やなせたかしと、その妻・小松暢をモデルにしたドラマ。妻が主人公となり、朝田のぶという役名のヒロインを今田美桜が演じている。やなせたかしにあたる夫の役名は柳井嵩で、演じるのは北村匠海。

第2週までに描かれた子役編では、どちらかというと嵩の境遇にスポットが当たっており、SNSでは「子ども時代、ヒロインは嵩でヒーローがのぶだった」といったコメントも見受けられるなど、嵩を守ろうとするのぶの逞しさが印象的だった。

今田美桜と北村匠海が紡いでいく愛と勇気の物語

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『あんぱん』第3週(C)NHK

第2週のラストで、ヒロインが子役の永瀬ゆずなから今田にバトンタッチされた。これから戦争などを経て、長い人生を歩んでいく何者でもなかった2人の、生きる意味さえ失ってしまうような苦悩の日々や、それでも夢を忘れず、あらゆる荒波を乗り越えて“逆転しない正義”を体現する『アンパンマン』にたどり着くまでが綴られていく。『アンパンマン』のテーマである、生きる喜びが全身から湧いてくるような愛と勇気の物語を、今田と北村がどのように表現するのか期待したい。

今田が演じるのぶは、県大会で優勝するほど足が速いことと、持ち前の男勝りで勝気な性格から「ハチキンおのぶ」「韋駄天おのぶ」などと呼ばれている。一方、北村が演じる嵩は、ちょっと気が弱くて自信のないタイプ。そんな嵩を、どんな時も励まし、けん引し続けるのぶ。彼女の後押しがあるからこそ、嵩は漫画家として独立し、『アンパンマン』を通して日本中に愛と勇気を届けるようになるのだ。

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『あんぱん』第3週(C)NHK

のぶと嵩の夫婦の物語は、これから『あんぱん』で描かれていくことになるが、あくまでも中園ミホの脚本によるドラマオリジナルの部分も多くなるに違いない。実際のやなせ夫婦は、のぶと嵩のように幼なじみではなかったので、ドラマではどのような展開になるのか見守っていきたい。

有名な漫画家になるまで夫を支え続けた妻

歴代の朝ドラには、『あんぱん』ののぶのように、著名な漫画家や作家を家族に持つヒロインを描いた作品がある。『あんぱん』同様、もちろん脚色されたパートも多かったと思うが、著名な漫画家や作家とヒロインが、どのような関係性だったのか振り返ってみたい。

2010年度前期の『ゲゲゲの女房』は、『ゲゲゲの鬼太郎』などで知られる漫画家・水木しげるの妻・武良布枝による同名自伝エッセイを原案に作られ、彼女をモデルにした布美枝(松下奈緒)がヒロイン。布美枝は内気な性格で、長身であることを気にしていたが、それが原因で縁談がうまくいかなかったこともある。

そんな布美枝は、29歳の時に39歳の茂(向井理)と見合いをしてすぐに結婚。茂は戦争で左腕を負傷して切断したが、絵で生計を立てようと決意し、努力を重ねて漫画家への道を進む。新婚当時から、布美枝は窮乏生活を強いられるが、彼女も茂も、どちらかというと飄々とした感じの夫婦で、毎日穏やかに楽しくドラマを観ることができたという記憶がある。

布美枝は、『あんぱん』ののぶのようなパワフルなヒロインではないので、夫である茂を叱咤激励するといった妻ではないが、彼女の支えがあったからこそ、茂は漫画家として成功できたし、2人のような夫婦像は素敵だと心から思った。SNSには、「見合い結婚から始まる夫婦関係もいいなと思える」といったコメントが。『あんぱん』よりも15年も前の作品だが、著名な漫画家とヒロインの関係性の違いが興味深い。

芥川賞受賞作家を息子に持つ母

1997年度前期の『あぐり』は、芥川賞受賞作家・吉行淳之介の母であり、美容家として知られる吉行あぐりのエッセイ『梅桃が実るとき』をモチーフに作られたドラマ。彼女は、朝ドラ『つばさ』や『ごちそうさん』などに出演した女優の吉行和子の母でもある。

ヒロインのあぐり(田中美里)は、15歳でエイスケ(野村萬斎)に嫁ぎ、16歳で淳之介(生田斗真、大根田良樹、山田純大ら複数が演じた)を出産。あぐりは美容師への道を突き進みながら、淳之介をはじめ3人の子どもを育て上げた。夫を亡くした後も、働く女性の姿を子どもたちに見せ続けたあぐり。本作のヒロインは、著名な作家となっていく息子を持つ母親だが、その関係性よりも、1人の女性の生き方をメインとして描いていたのが印象的だ。

会社を立ち上げ漫画家の妹をサポートした姉

かなりさかのぼって、1979年度前期の『マー姉ちゃん』は、『サザエさん』の作者で漫画家の長谷川町子の自伝エッセイ漫画『サザエさんうちあけ話』が原作。ヒロインは、町子の姉・毬子をモデルにしたマリ子(熊谷真実)で、町子の役名はマチ子(田中裕子)となっている。

家族から「マー姉ちゃん」と呼ばれるマリ子は、漫画家になったマチ子が『サザエさん』の連載を開始すると、「姉妹出版」を立ち上げて単行本出版に邁進する。おっちょこちょいのところがあるが、頼もしいマリ子が、サザエさんのモデルになったと言われている。本作では、著名な漫画家とその姉との賑やかでほほ笑ましい関係性が描かれつつ、波乱万丈のヒロインの人生が綴られた。

次回の朝ドラも著名な作家と妻の物語

夫婦だけじゃなく、母と息子、姉妹など、著名な漫画家や作家とヒロインのさまざまな関係性を取り上げてきた朝ドラ。今回、振り返った作品と比較しながら『あんぱん』を観ると、また違った面白さも感じられるのではないだろうか。

2025年度後期の朝ドラ『ばけばけ』も、ジャーナリストであり作家でもあった小泉八雲の妻・小泉セツをモデルにしたヒロインを髙石あかりが演じるが、著名な小泉八雲と妻であるヒロインの関係性がどのように描かれるのか大いに気になるし、今から放送開始が楽しみだ。


NHK 連続テレビ小説『あんぱん』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP