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【伊藤蘭さん】子育てや困難を乗り越えて…「大抵のことは大丈夫と思えていますね」と語る理由

  • 2024.12.15

2015年11月号にご登場いただいてから9年。その間、41年ぶりにソロとしての歌手活動を再開。昨年、キャンディーズでの活動期間を超えた伊藤蘭さん。「自分以上の自分にはなれない。潔く今の『私』でやれることに身も心も尽くそう」とますます歌に芝居に意欲を燃やし、よりいっそう輝きを増していました。

落ち込んだときは無理に逆らおうとせず、どん底までとことん落ちる。あとはもう上がるしかないから

お話を伺ったのは…伊藤 蘭さん

子育てを通して女の子の楽しい道を2度経験

34歳で結婚し、翌年35歳で趣里を出産しました。生後5カ月から徐々に仕事復帰したので、40代は子育てと仕事に多忙な時期でした。仕事のときは母が家に来て趣里を見てくれ、母に預けていれば安心で、子育ても仕事も両方楽しくやっていました。とはいえ、100%一緒にいられないことに後ろめたさもありましたが、できるだけそう思わないようにして、母親が外に働きに行く姿を見ることで何かを感じてくれると思っていました。大人になってから、「寂しかった?」と聞いたとき、「そんなことないよ。むしろママがやっている仕事は何だろうと興味を持った」と言ってくれたときは嬉しかったですね。

趣里は4歳からバレエを始め、更に究めたいと15歳でイギリスにバレエ留学しました。ところがケガでバレリーナの道を断念。恐らく私に伝える以上に本人は辛かっただろうと後になってから思うのですが、当時は高卒認定の試験を受けて大学受験をしたり、暗い印象はまったくなくて。それより、趣里の踊る姿が私は大好きで、それが見られなくなるのは少し寂しかったかな。その後、役者の道を歩み始めましたが、その仕事ぶりも楽しませてもらっています。どんな道でも、自分の選択した道をそのまままっすぐに進んでほしいです。

特別な子育て論はありませんが、娘が喜んでいるときは同じように嬉しいし、気落ちしているときは一緒に落ち込む、いつも同じように一喜一憂していましたね。だから私としては、女の子の楽しい道を2度味わった気分。1度目は自分が過ごしてきた青春の道、2度目は趣里の輝きを浴びながら、楽しさをいっぱい共有させてもらった。だから子育ては楽しかった印象しかないですね。

成人した今も一緒にいると楽しいですよ。友達感覚で娘も接してきますから。別々に住んでいますが、うちで一緒にご飯を食べたり、外へ食事に行くことも。特に今はきのこ鍋のお店がわが家のブーム。ひとり一鍋で、いろんな種類のきのこと野菜、お肉を入れて食べるのですが、スープがとにかくおいしい。10日に一度は行ってますし、趣里もリクエストしてきます。家でもよくお鍋をすると喜びますね。

病は絶対によくなると信じる心が一番大事

今年、結婚35周年を迎えました。これまで豊さん(俳優の水谷豊さん)とは一度も喧嘩をしたことがありません。お互い仕事をしているので、離れている時間が長いことでバランスが取れているのかな。

人生で一番辛かったのは、結婚直前に豊さんに初期の膀胱がんが見つかったときでした。その頃、豊さんが親しかった松田優作さんが膀胱がんで入院することになって、当時豊さんも症状があり、優作さんに促されて同じ病院で検査を受けて病気が判明しました。当時は「がん=死んじゃう」と思って本当にショックで、今までにないほど落ち込みました。それでも結婚する気持ちは揺るがなかったし、家族に話したら反対されるだろうから誰にも言えませんでした。

でも決して絶望的なケースばかりではないと思い直し、絶対一緒に治そうと信じたときから前を向くことができました。公表せずに手術をし、その後寛解。今は完治して元気に活躍してくれています。昨年、豊さんが自伝を出版したとき、病気を初めて公表しました。言いたくなかったら書かないと思いますが、病気って特別なことではないし、誰にでも起こりうること。あのときの自分のことも記しておきたかったのでしょう。元気になって本当によかったですし、ありがたいです。

その経験から、暴飲暴食をしない、ストレスをためず、根を詰めないことを長年心がけてきましたが、大事なのは絶対によくなると信じる心だと思います。そもそも本人は陽気な性格で、機嫌が悪いことがほぼないんです。その性格にずいぶん私は支えられました。

もともとなんでも自分でできる人。結婚直後に豊さんが仕事で旅に出るのでパッキングをしようとしたら、「しなくて大丈夫。自分でできるから」と言われて以来、荷作りはもちろん、家事も洗濯から掃除、ゴミ出しも気づくとやってくれます。流しにたまった食器だけは、なぜか手を出しませんけどね(笑)。外食やウーバーもよく利用しますが、料理はほぼ私が作っています。

辛い時間を短くやり過ごし人生を穏やかに

振り返った今、穏やかな人生だなあと思います。もちろん、悲しいことも辛いこともちょこちょこあるんです。でも、辛いと思う時期を短く済ませてきたのだと思います。落ち込んだら、足搔いて無理に逆らおうとせず、どん底まで落ちて落ちて落ちる。そうすると上がるしかないので。その後はまた穏やかな時間がくる。それを繰り返してきたのかな。だから、振り返ってみたとき、その穏やかな時間のほうが長く感じて、幸せだなと心から思えるんです。そもそも根が暗くないのです。いろいろな経験をして、大抵のことは大丈夫と思えていますね。

自分らしい空気を纏いながら、他者を思い、謙虚さを忘れずに佇んでいられるような生き方をしたいです。
思えば人に恵まれている人生ですね。キャンディーズもずっと仲の良い3人組でした。ミキさんとは今もよく会います。願いが叶うとしたら、スーさんにもう一度会いたいなって心から思います。

40代のころの私

〈左〉バレエを究めていく娘をサポートするかたわら、多くのドラマや映画の撮影をした40代。そのときのひとコマです。〈右〉今は亡き野際陽子さん司会の旅番組に姪と出演し、鳴門海峡や淡路島を旅したときのスナップ。海と空と見事な菜の花畑をバックに。

伊藤さんが40代に伝えたいこと

50代以降をどう過ごせるかは40代にどういう選択をして積み重ねていくかで決まります。慎重になりすぎてもつまらないから、大胆にも進んでほしい。だから選択は繊細に大胆に。自分と丁寧に向き合ってほしいですね。

《衣装クレジット》
カーディガン¥148,500 シャツ¥108,900 スカート¥184,800(すべてペセリコ/ウールン商会)ピアス(右)¥143,000 (左)¥38,500 チャーム¥88,000 リング¥308,000(すべてメレリオ)

2024年『美ST』12月号掲載
撮影/須藤敬一 ヘア・メイク/黒田啓蔵 スタイリスト/野田 晶 取材・文/安田真里 再構成/Bravoworks,Inc.

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