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完成度が高すぎる… 話題沸騰のドラマ、視聴者を引き込んだ“うますぎる演出”

  • 2025.4.4

8年ぶりの俳優復帰となった成宮寛貴が主演するABEMAオリジナルドラマ『死ぬほど愛して』第1話。穏やかで優しい夫・真人の裏に潜む狂気を成宮が巧みに演じ分ける。一見、不安定な妻・澪や周囲の人物に危険な気配を漂わせつつも、実は真人こそが最も不穏な存在であるという心理的な仕掛けが絶妙。表面的な静けさとその奥にある暴力的な本性が交錯し、今後の波乱を予感させる展開となった。

成宮寛貴、復帰作で演じ分ける表と裏

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(C)AbemaTV,Inc.

『死ぬほど愛して』の主人公・神城真人(成宮寛貴)は、一見すると非常に穏やかで優しい夫だ。妻の澪(瀧本美織)に対する彼の態度は紳士的で、言葉遣いも物腰も柔らかく、理想の夫ともいえる雰囲気を醸し出している。結婚記念日に二人で向かう旅行先を相談するシーンなんて、憧れる恋人同士や夫婦も多いかもしれない。

しかし、ドラマが進むにつれ、視聴者は彼の笑顔の奥に何かが潜んでいることを敏感に察することとなる。

成宮は、こうした真人の二面性を極めて巧みに表現している。とくに、目の奥に秘めた狂気の微妙なニュアンスや、ほんの些細な瞬間に垣間見せる不穏な表情には、8年のブランクを感じさせない圧巻の演技力があった。たとえば1話の中盤において、真人が通りすがりの配達員を突発的に蹴り倒すシーンは、その暴力性が衝撃的であると同時に、普段の穏やかな振る舞いとのギャップにゾッとさせられた。

さらに成宮の演技が秀逸なのは、その暴力性が「発作的」に現れるところである。

常に冷静でコントロールされた姿を見せている真人が一瞬にして豹変する様子は、彼の本性がまだ視聴者にも明かされていないことを暗示しているようだ。後半、澪と鉢合わせしたとき、真人が腕の火傷について冷静に説明し、その後自宅に戻ってから「もう隠し事はなし」と穏やかに語るシーンは、むしろこの先にあるであろう暴力的な本性をさらに予感させる効果を持っていた。

成宮がこれほど繊細に真人を演じ分けられるのは、彼自身の過去の経験や、演技への深い洞察力があればこそだろう。8年の空白期間を経て、より一層深みを増したその演技には、視聴者が一瞬たりとも目を離せないほどの引力があった。SNS上でも「復帰嬉しすぎる」「やっぱり演技上手い」との声が絶えない。

不穏さの巧妙な演出……本当の危険人物は誰か?

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(C)AbemaTV,Inc.

第1話を通して視聴者が抱いた大きな疑問の一つは「真の危険人物は誰なのか」ということだろう。

物語の序盤から中盤にかけては、むしろ妻・澪の精神的な不安定さが目立って描かれる。彼女は過去に夫の浮気を疑い精神を病んだ経験があり、それはカウンセリングに通うほどの深刻さを伴うものだった。また、彼女が勤めるパティスリーのシェフ、小山田丈治(片桐仁)もまた、どこか怪しい影をまとった人物として視聴者の目に映る。

このように、一見すると真人の周囲にいる人物たちが問題を抱えているように見えるのだが、そのなかで少しずつ浮かび上がってくるのは、真人こそがもっとも危険であるという事実だ。

とくに第1話の後半に登場する過去の回想シーン。真人が震災時に父を瓦礫で打ち殺すシーンは、真人自身が語る「子どもの力では助けられなかった」という説明と明らかに矛盾する。ここには、真人がいかに嘘や偽りに満ちた人物であるかという恐ろしい真実が示されている。

また、終盤の澪と真人の会話で「もう隠し事はなし」という言葉が交わされるが、これはかえって二人の間の緊張感を高める結果となったのではないか。表面的な穏やかさが次第に崩れつつあることを視聴者に予感させる、巧妙な演出である。

『死ぬほど愛して』第1話はまさに「嵐の前の静けさ」を描いた回だった。成宮寛貴の鮮烈な復帰作として、彼の演技の成熟ぶりと、巧妙に構築された心理サスペンスとしての作品の完成度が際立った。

とくに真人の二面性とその背後に隠された真実が、視聴者を強烈に引き込んだことは間違いない。今後の展開で、真人の真実やその狂気がどのように明かされていくのか、視聴者は期待と不安を抱きつつ、第2話以降を待ち望むことになるだろう。

ABEMAオリジナルドラマ『死ぬほど愛して』
[放送日時]3月27日(木)夜11時より ABEMAで配信開始
[出演者]成宮寛貴、瀧本美織ほか
[番組トップページ]https://abema.tv/video/title/90-2024



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_