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伝説のB級ホラーがまさかのリメイク!『トキシック・アベンジャー』メイコン・ブレア監督が語る、「手作り感」に宿したオリジナル版のDNA

  • 2026.11.7

低予算ならではの創意工夫と、チープながらも味がある特殊効果で世界中のB級映画ファンを熱狂させた『悪魔の毒々モンスター』(84)が、「ダークナイト」シリーズやハリウッド版「ゴジラ」シリーズで知られるレジェンダリー・ピクチャーズによってリメイクされた。『オッペンハイマー』(23)などで、俳優としても活躍するメイコン・ブレアがメガホンをとり、彼が子どもの頃から愛してきた作品を、愛すべきB級感はそのままに2020年代版として作り上げた『トキシック・アベンジャー』は、11月13日(金)より劇場公開される。

【写真を見る】一部でカルト的人気を誇る『悪魔の毒々モンスター』をピーター・ディンクレイジ主演でハリウッドリメイク

ピーター・ディンクレイジが主演を務め、ケヴィン・ベーコンとイライジャ・ウッドが最狂のヴィランを演じた本作。ブレア監督は、多くのカルトファンが愛するこの作品にどう向き合ったのだろうか?MOVIE WALKER PRESSでは、ブレア監督にインタビューを敢行。撮影の裏側をたっぷりと語ってもらった。

「『裏庭で、あまりお金もかけずに作った映画』のように感じられるものにしたいと思っていた」

リメイク版製作の発端は、スタジオによる企画募集だった。「レジェンダリーがトロマ(・エンターテインメント。 ※1970年代に、オリジナル版の監督を務めたロイド・カウフマンとマイケル・ハーツが立ち上げた、低予算インディペンデント映画専門の製作会社)と契約を結び、過去作の新しいバージョンを作ることになりました。何人かの脚本家に企画案を募ったのですが、私が手掛けた別の作品を観てくれていて、私にも声がかかりました。企画案をプレゼンした際、具体的なストーリー案はありませんでしたが、子どもの頃にオリジナル版を観て、大きな衝撃を受けたことを正直に伝えました。『12歳の少年があの映画を観たときの感覚を、そのまま残したい』と。あとで知ったのですが、レジェンダリーの担当役員もオリジナル版のファンで、そこに反応してくれたんだそうです。そうして脚本だけの約束が、やがて監督も引き受けることになりました」。

【写真を見る】一部でカルト的人気を誇る『悪魔の毒々モンスター』をピーター・ディンクレイジ主演でハリウッドリメイク TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.
【写真を見る】一部でカルト的人気を誇る『悪魔の毒々モンスター』をピーター・ディンクレイジ主演でハリウッドリメイク TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.

トロマの創設者であるカウフマンには、仕事が決まってすぐに連絡したという。「“トキシー”というキャラクターは、ロイドとマイケルの出発点ですし、今日まで熱心に推し続けるファンもたくさんいます。この企画にとても興奮していましたが、ひとつだけ気がかりなことがありました。ロイドとマイケル、そしてファンの皆さんに、自分たちにとって大切なものを、オリジナル版とは似ても似つかないものに作り変えられてしまったと感じてほしくはなかったんです。だから、オリジナル版の雰囲気を守るつもりだと伝えて安心してもらいたかったし、リメイクを許可し、応援してもらいたかった。ロイドはとても親切に、『好きなようにやってほしい。自分は力になるけれど、邪魔はしたくない』と言ってくれました。実際、その通りでした。撮影現場にも来てもらって進行状況を共有していましたが、彼は終始温かく支えてくれて、宣伝にも大きな力を注いでくれました。本当にありがたかったです」。

有毒廃棄物のプールに投げ捨てられた清掃員のウィンストンが、“トキシック・アベンジャー”として復活!大混戦に身を投じていく TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.
有毒廃棄物のプールに投げ捨てられた清掃員のウィンストンが、“トキシック・アベンジャー”として復活!大混戦に身を投じていく TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.

インディペンデントの小規模作品で腕を磨いてきた監督にとって、本作はキャリア最大規模の撮影現場となった。それでも、目指す方向に迷いはなかった。「(大規模な撮影で)必要とされる要素を理解し、組み立てるのに、多少の学習期間が必要でした。それでも、美術や撮影、衣装、見た目や手触りを考えていくときには、『裏庭で、あまりお金もかけずに作った映画』のように感じられるものにしたいと思っていました。派手で、スケールが大きく、洗練されすぎた映画にはしたくなかったんです。この映画が愛されている理由は手作り感だと思うからです。なので、創作上の判断はいつもその視点で考えました。1984年に作られた作品のように見せるのではなく、手作りに見えるようにする、ということです」。

「オリジナル版のなかから自分が笑えたものを選んで取り入れ、笑えなかったものは持ち込まなかった」

オリジナル版の『悪魔の毒々モンスター』は1984年に製作された TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.
オリジナル版の『悪魔の毒々モンスター』は1984年に製作された TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.

40年前の過激な笑いを再現する際に、現代の厳しいコンプライアンスの影響は考慮したのだろうか。その問いへの答えも明快だった。「私はオリジナル版のなかから自分が笑えたもの、楽しいと思えたものを選んで取り入れ、笑えなかったものは持ち込みませんでした。だから、コンプライアンス的に許されるかどうかという観点で考える必要はありませんでした。許されないからとか、誰かが怒るからといったプレッシャーも感じませんでした。それが現在、どう受け止められるかは、正直あまり気にしません。物事の受け止められ方は昔といまでも変わっているし、これからも変わり続けるものだからです。『もう1984年じゃないんだから、これはやってはいけない』などと自粛するために時間を使うことはしませんでした。時間を使ったのは、自分にとってなにがおもしろいのか、オリジナル版のどの要素がいまでもおもしろいと思えるのか、ということだけです」。レジェンダリーから意見されることも、一度もなかったという。

「余計な口出しはしない、ノーランの演出法には監督としてとても刺激を受けた」

物語も、基本的にオリジナル版を踏襲している。邪悪な巨大製薬会社に牛耳られ、暴力と環境汚染に蝕まれた街、セント・ロマ。気弱な清掃員ウィンストン(ピーター・ディンクレイジ)は、企業が雇ったギャングに襲われ、有毒廃棄物のプールに投げ込まれる。だが彼は、超人的なパワーを秘めたミュータント“トキシック・アベンジャー”として復活し、街のならず者たちを一掃しながら、諸悪の根源である製薬会社CEO、ボブ(ケヴィン・ベーコン)とその弟フリッツ(イライジャ・ウッド)ら一味との大乱戦に身を投じていく。

主人公ウィンストンを演じるのは、「ゲーム・オブ・スローンズ」で注目を集めたピーター・ディンクレイジ TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.
主人公ウィンストンを演じるのは、「ゲーム・オブ・スローンズ」で注目を集めたピーター・ディンクレイジ TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.

ブレア監督はキャスティングについて、こう語る。「ピーターとは数年前に映画祭で出会い、その後も連絡を取り合っていました。正直なところ、最初は彼を悪役にしたいと考えていたんです。きっと最高におもしろいだろうと。ところが、資金を集めて映画にゴーサインを出してもらうには、主演に有名な俳優が必要だということになり、どうしたものかと考えていたとき、突然ひらめいたんです。『待てよ、ピーターがいるじゃないか。彼を主演にしたらどうだろう?』と。第一の理由は彼の声、そして、彼は観客を一気に味方につけてしまうでしょう。『ゲーム・オブ・スローンズ』でも、いちばん好きなキャラクターはティリオンだと答える人が多いと思います。ドラマチックにも、コメディにも、身体を使った演技もできる。ピーターに脚本を送ったら、彼はニュージャージー州出身で、オリジナル版のファンだったことがわかり、すぐに『やる』と返事をくれたんです。ピーターのような人が中心にいてくれると、映画に正当性が生まれ、ほかのキャストたちも参加したいと思ってくれるようになりました」。

諸悪の根源である巨大製薬企業“BTH”のCEO、ボブ役にケヴィン・ベーコン TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.
諸悪の根源である巨大製薬企業“BTH”のCEO、ボブ役にケヴィン・ベーコン TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.

そして、ヴィランを演じる2人の名優については、こう明かす。「イライジャの役は、以前一緒に仕事をして大好きになった彼のために当て書きしました。ケヴィン・ベーコンとは一緒に仕事をしたことがありませんでしたが、アメリカ映画の古典的なスターが堕落した悪役を演じるというアイデアがきっとおもしろいだろうと、思い切って脚本を送ったんです。彼もこの映画のノリをおもしろがってくれて、一緒に仕事ができてすばらしい経験でした」。

ブレア監督の俳優としてのキャリアは、演出にも生きている。「『人はみなそれぞれ違う』という理解が大切でした」と、彼の演出哲学を語ってくれた。「撮影現場に入る前に、できる限りその俳優のことを理解しようと心がけます。立ち位置を決めたら、あとは小さな調整だけにしてそっとしておいてほしいタイプの俳優なのか、それとも、自分はどんなことを感じているのか、撮影状況はどうなっているのかなどについて、たくさん話をしたいタイプなのか。どちらのタイプもすばらしいですが、スタイルが違うので」。

ボブの弟フリッツを演じたイライジャ・ウッドは、特殊メイクをして撮影に臨んだ TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.
ボブの弟フリッツを演じたイライジャ・ウッドは、特殊メイクをして撮影に臨んだ TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.

その姿勢には、『オッペンハイマー』で、キリアン・マーフィが演じたオッペンハイマーの弁護士ロイド・ギャリソンを演じた際に、クリストファー・ノーラン監督の現場で学んだことも影響していると言う。「私の出番はかなり少なかったのですが、撮影現場にできるだけ残って、ノーランの仕事ぶりを見て学ぼうと努めました。いちばん感銘を受けたのは、彼が俳優をいかに信頼しているかということです。ノーランは、裁判の参照源から法律用語まで、シーンのすべての細部を把握していて、すらすらと口から出てくる。それなのに、俳優の演技にはほとんど口出しをしません。『立ち位置まで、もう少し早く』、『もう少しゆっくり』と配置を整える程度で、役の解釈は俳優にすっかり任せてくれる。まるで、交響楽を指揮するようなやり方でした。駒を動かして必要なかたちに整えるけれど、余計な口出しはしない、ノーランの演出法には、監督としてとても刺激を受けました」。

「資源があるかないかはではなく、映画作りからなにを得たいのかを見つけ出すことが大事」

トロマからはジェームズ・ガンも巣立ち、いまやハリウッドの大作を手掛けている。「ロイドのグループからは『サウスパーク』の2人も出てきましたよね。ジェームズ・キャメロンやジャック・ニコルソンが出てきたロジャー・コーマンのグループを思い出します。手作りで、自力でやる環境から出発することには意味があると思うんです。資源があるかないかは実は重要ではなくて、自分にとってなにが大切か、映画作りからなにを得たいのか、自分の映画をどんな感触にしたいのかを見つけ出すことが大事。それが見つかれば、予算の大小はほとんど副次的なものになります。そういった時間を過ごしてきたからこそ、チャンスが巡ってきたときに、より完成された状態で臨めるんです。トロマやコーマンの世界からスタートした人が、やがて『スーパーマン』や『アバター』シリーズのような映画を作るようになる。そうした軌跡を見るのが大好きです」。

『悪魔の毒々モンスター』の長年のファンであるブレア監督は、オリジナル版のDNAをがっちり継承しながら製作に向き合った TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.
『悪魔の毒々モンスター』の長年のファンであるブレア監督は、オリジナル版のDNAをがっちり継承しながら製作に向き合った TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.

「人間の物語への欲求のなかには、実際の代償を払うことなく死と向き合う体験をしたい、というなにかがある」

近年、アメリカではホラー映画の好調が続いている。ブレア監督はその背景をこう分析する。「現在のアメリカには大きな不安が広がっていて、それが反映されているのかもしれません。劇場に足を運んで、緊張や不安を集団で体験する。でもその恐怖は、劇場という安全な場所でみんなと共有し、現実世界には持ち越されず、その場で手放すことができる。そこにカタルシスがあるのだと思います。ただ、外の世界がこれほど不安に満ちていなくても、ホラー映画は人気だったでしょう。人間の物語への欲求のなかには、アドレナリンを高め、実際の代償を払うことなく死と向き合う体験をしたい、というなにかがあります。無声映画の時代でさえ、『フランケンシュタイン』や『ジキルとハイド』が作られていましたから。大作のイベント映画やコメディには、はやり廃りがありますが、ホラー映画は決して時代遅れになりません」。

ウィンストンの息子ウェイド役にジェイコブ・トレンブレイ TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.
ウィンストンの息子ウェイド役にジェイコブ・トレンブレイ TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.

本編には、オリジナル版のファンに向けたイースターエッグ(仕掛け)も散りばめられている。「オリジナル版のファンに向けて手を振るような、小さなウィンクのつもりで入れました。たとえば、何度か登場するニュースキャスターの背景はトロマの街並みです。劇中の架空の街にある店の看板『Belgoody』は、オリジナル版に登場する市長への言及です。背景に見える『Pat’s』という店は、ロイドの奧様のパット・カウフマンさんのお名前を借りました。彼女はニューヨーク州の映画コミッショナーを務めた、とてもすてきな方なんです」。「本編とほぼ同じくらい長い」と冗談を飛ばすポストクレジットシーンについては、「普通は『お楽しみに』と盛り上げるものですが、私たちは逆に『史上最も退屈で、延々と続くポストクレジットシーンを作ろう』と考えたんです」と告白する。ブレア監督の弟ブルックが担当した音楽でも、オリジナルへのオマージュが活きている。オリジナル版で誰もが覚えている、ムソルグスキーの「はげ山の一夜」を再解釈した楽曲が流れることにも耳を傾けてほしい。

ブレア監督のオリジナル版への愛が詰まった『トキシック・アベンジャー』は、11月13日(金)より公開 TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.
ブレア監督のオリジナル版への愛が詰まった『トキシック・アベンジャー』は、11月13日(金)より公開 TM & [c]2025 Legendary. All Rights Reserved.

カルト的に愛されるB級映画を、ずっと愛してきた監督やキャストによって作られた2020年代版『トキシック・アベンジャー』は、新たな愛すべきB級ホラー作品として、新旧ファンから熱烈な愛情を受けることだろう。

取材・文/平井伊都子

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