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「これ、いつから書いてたの」と夫に聞かれた私→友人の前で、夫の顔を見ずに言ったわけ

  • 2026.11.8
ハウコレ

夫が「妥協したのは、俺のほうだよ」と言ったことを、私は1つも聞き返しませんでした。引き出しの中に、その答えをずっとしまっていたからです。

ケーキの箱を開けた友人が、部屋を見回して「いい家だね」と笑いました。学生時代から、友人は私の持ち物をよくほめてくれる人です。そのたびに少しだけ、比べられている気がしていました。

友人の前で

友人は昔から、恋人の話になると、相手の稼ぎや優しさを比べたがる人でした。
「優しい人と結婚できてよかったね」
そう言われたとき、続きが読めました。あんたは頼りっぱなしだね、と笑われる流れです。
本当に頼りっぱなしだと分かっているからこそ、それだけは言われたくありませんでした。
「結婚は私が妥協してあげた」
カップを両手で包んだまま、友人の顔だけを見て言いました。夫の方を見たら、言えなくなると分かっていたのです。
友人は眉を上げて「へえ」と言い、それ以上は聞いてきませんでした。

全部知っていたこと

夫が本社への異動を断ったことは、結婚前から知っていました。夫の部屋の机に、異動の案内が置いてあったのを見ていたのです。
学生時代から乗っていたバイクが、駐輪場から消えた日のことも覚えています。式の費用の振込が、急に余裕を持って済んだことも。
夫は何も言いませんでした。だから私も、聞けないままでした。
代わりに、寝室の引き出しに1冊のノートを入れていました。夫が手放したものと、いつか返したいことを書きためたノートです。

驚けなかった理由

友人を見送り、玄関の鍵を閉めた夫がこちらを振り返りました。
「妥協したのは、俺のほうだよ」
異動のこと、バイクのこと。夫は1つずつ並べていきました。どれもノートに書いてあることばかりで、驚くことはできません。
カップを2つ持ったまま、私は夫の顔を見ていました。言い返す言葉なら、いくらでも浮かびます。でもどれも、自分を守るための言い訳にしかなりませんでした。

そして...

「ちょっと待ってて」
カップを置いて寝室に行き、引き出しからノートを出して夫に渡しました。
最初のページには「異動の話、断ってくれた」、その下には「バイク。いつか買い戻す」と書いてあります。
ページをめくる夫に、私はやっと「ごめん」と言えました。「これ、いつから書いてたの」。ノートから目を上げずに夫が聞いたのは、それだけでした。
妥協してあげたと口にしたあの日も、私はこのノートで、自分が妥協されている側だと分かっていました。

(30代女性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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