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隣の女性が注文した中トロを横取りした俺→店長が向けたタブレットと「先輩、私の分は自分で払いますね」

  • 2026.11.8
ハウコレ

隣の席の女性が、札の付いた空のお皿をレーンから下ろしました。俺の口の中には、まだ中トロの脂が残っています。反対側に座る後輩は、さっきからこちらを見ようとしませんでした。

後輩の前で見せたかった顔

その日は、入社2年目の後輩を連れて回転寿司に来ていました。仕事を教えている手前、気前のいい先輩でいたかったのです。ただ、給料日前の財布に余裕はありません。俺はレーンのお皿を次々に取って、後輩の前に並べました。後輩が遠慮しても、気にするなと笑ってみせました。

「流れてきたら取ったもん勝ちだろ」

笑ってそう言うと、後輩は控えめに笑い返してくれました。そこへ、小さな札を立てた金色のお皿が流れてきました。中トロが2貫載っています。札を見れば、隣の女性の注文だとすぐに分かりました。お皿ごと取れば、俺の会計に1枚増えます。

俺は手を伸ばして2貫を自分の取り皿へ移し、お皿はそのまま流しました。

後輩が言いかけた言葉

頬張った直後、隣の席のモニターから到着を知らせる音が鳴りました。俺は口を動かしながら、湯のみに手を伸ばしました。

「先輩、それ……」

後輩の声に、俺は首を横に振りました。

「いいって」

隣の女性は店員を呼び、空のお皿を差し出しました。

「注文した中トロが、お皿だけ届きました」

店員は札を見てから、レーンの上流、つまり俺の席のほうへ目をやりました。

「レーンのカメラで確認いたしますので、少々お待ちください」

店のレーンにカメラがあることなど、考えたこともありませんでした。

湯のみのお茶を、俺は一気に飲み干しました。

タブレットに映っていたもの

俺は湯のみを置き、タッチパネルの会計画面を開き、会計ボタンを押しました。早く店を出たかったのです。隣の女性の前に新しいお皿が届き、店員の声が聞こえました。

「お待たせいたしました。作り直した中トロです」

女性が食べ終えて席を立ってすぐ、黒いエプロンの男性がタブレットを手にやってきました。店長だと名乗ったその人は、画面を俺のほうへ向けました。

「こちらの中トロ2貫分は、お客様のお会計に加えさせていただきます」

店長は最後まで、声を荒らげることはありませんでした。俺が口を開く前に、後輩が財布を取り出しました。

「先輩、私の分は自分で払いますね」

後輩は千円札を2枚カウンターに置き、先に店を出ていきました。

そして...

レジで受け取った明細には、金色のお皿1枚分の金額が加わっていました。後輩の置いていった千円札2枚は、財布にしまわないまま、明細と一緒に握っていました。

取ったもん勝ちだと笑っていたのは、ついさっきの俺です。自動ドアの外に、後輩の姿はもうありませんでした。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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