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行の頭に「ずっとまえ」と並べた俺→社内の勉強会の休憩中、隣の席から聞こえていた一言のこと

  • 2026.11.7
ハウコレ

「気づくの早い」。そう返したとき、本当は少しだけほっとしていました。まっすぐ言えない言葉を、彼女なら拾ってくれると思えたからです。続きの2通は、もう頭の中にできあがっていました。
5行のメッセージを打ち終え、行の頭を上から順に確かめました。ず、っ、と、ま、え。何度数えても、ちゃんと並んでいます。付き合って3週間の彼女に送信するまで、ずいぶん時間がかかりました。

言えなかった一言

彼女と知り合ったのは、1年前の社内の勉強会でした。隣の席で、彼女は資料の誤字にこっそり線を引いていました。休憩中には、駅の裏にずっと気になっているカフェがある、と話していたのです。
その日から、気づけば彼女を目で追うようになっていました。けれど部署も違い、話しかける勇気も出ないまま時間だけが過ぎました。
3週間前、食事に誘ってくれたのは彼女のほうです。その帰り道に付き合うことになり、俺はうなずくのが精一杯でした。
勇気を出したのは、彼女のほうだけでした。でも、先に好きになったのは俺のほうだと、彼女には知っておいてほしかったのです。

縦に並べた理由

面と向かって言うのも、メッセージでまっすぐ打つのも、俺には照れくさすぎました。
そこで思いついたのが、学生のころによく遊んでいた縦読みです。3通に分けて、行の頭に言葉を並べる。「ずっとまえ」「から」「すきでした」。
1通目の題材には、彼女が勉強会で話していたあのカフェを選びました。1年越しに、一人で行ってきたのです。「っていうか」で始まる行や「えらんだ」が苦しいことは、自分でも分かっていました。

早すぎた返事

「なんか今日の文章、変じゃない?」
送ってすぐ、彼女からその一通が届きました。俺は思わずスマホを伏せました。
「そう?」
とぼけてはみたものの、しばらくしてまた彼女から届きました。
「縦に読んだら、ずっとまえ、って読めるんだけど」
こんなに早く気づかれるとは思っていませんでした。うれしいのか恥ずかしいのか分からないまま、部屋の中を意味もなく歩き回りました。
「気づくの早い」
「続きは明日」
それ以上は、くまのスタンプでごまかしました。

そして...

翌日、2行のメッセージを送ったあと、最後の5行を組み立てていると、彼女から電話がかかってきました。
「ねえ、最後まで縦読みでいくつもり?」
笑いながらそう言われて、結局口では言えずに、3通目を送りました。電話越しに、彼女が「すきでした」と行の頭を読み上げる声が聞こえました。
1通目の「前に話したとこ」は、1年前の勉強会で、彼女自身が行きたいと話していた店のことだったのです。
(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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