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恋人を「練習台」と呼んだ俺→披露宴の帰り道、駅前の横断歩道で振り返って伝えた続き

  • 2026.11.7
ハウコレ

最後の段落を読み終えると、新郎が目元を押さえていました。拍手の中で彼女を探した俺は、まだ一番大事なことを彼女に伝えていなかったのです。

友人代表のスピーチを頼まれたのは、式の2か月前でした。人前で話すと言葉がつかえる俺が、練習相手に選んだのは彼女です。彼女の前でだけは、なぜか最後まで話せたからでした。

練習台という言い方

新郎は大学時代からの友人で、俺と彼女を引き合わせてくれた人です。原稿には、その日のことも書きました。俺にとっては、そこがスピーチの芯でした。
「私のところは削ったほうがいいよ。新郎の話を増やそう」
彼女がそう言ったのは、ちょうどその段落で何度もつかえていた最中でした。削られたら、一番言いたいことがなくなってしまう。焦った俺の口から出たのが、あの言葉です。
「お前は練習台なんだから、黙って聞いてて」
クッションを床に置く音が聞こえて、言い方を間違えたと分かりました。それでも謝るより先に、便箋に目を戻していたのです。

読まなかった最後の段落

最後の段落を練習で読まなかったのにも、わけがありました。学生時代、俺が一番落ち込んでいた時期に、新郎が毎日電話をくれた話です。彼女にもまだ話したことがなく、声に出せば泣いてしまう気がしていました。
「そこは?」と聞かれて「本番で読む」としか言えなかったのは、そのためです。
練習を重ねるうちに、気づいたこともありました。彼女の顔を見ながらだと、不思議と最後まで話せるのです。本番では、彼女の座るテーブルを目印にしようと決めていました。

マイクの前で

当日、マイクの前に立つと、会場の奥に彼女の姿が見えました。そこからは、2週間の練習を思い出しながら話すだけでした。
新郎の話も、彼女と出会った日の話も、つかえずに言えました。最後の段落を読み終えたとき、新郎が目元を押さえているのが見えたのです。
拍手の中で彼女を探すと、少し遅れて手を叩いていました。練習台と言ったあの日のまま、俺はまだ彼女に何も伝えていなかったのです。

そして...

駅までの帰り道、スピーチをほめてくれた彼女に「ありがとう」と返しました。そのあと、ずっと考えていた言葉を口にします。
「練習台は、今日で終わりな」
照れくさくて早足になり、駅前の横断歩道で足を止めました。振り返って、続きを伝えます。
「これからは、練習じゃなくて毎日聞いてほしい。一緒に住もう」
彼女がうなずくまでの数秒は、スピーチのどの場面よりも長く感じました。練習台と呼んだ彼女は、最初から俺の一番の聞き手でした。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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