1. トップ
  2. エピソード
  3. 「お前を振ったのは俺だ」と3年言い続けた俺→別れて数日後、ふすまの向こうで聞いた陰口

「お前を振ったのは俺だ」と3年言い続けた俺→別れて数日後、ふすまの向こうで聞いた陰口

  • 2026.11.7
ハウコレ

仲間の笑い声が止まった座敷で、俺は元カノの顔を見られませんでした。3年間言い張ってきたあの言葉を、ここで引っ込めていいのか分からなかったのです。

駅前のカフェの窓に、雨粒が流れ続けていました。向かいに座った元カノが、別れたいと切り出したのはそのときです。仕事を辞めたばかりの俺には、引き止める言葉が見つかりませんでした。

雨の日のあとで

元カノの言い分は、もっともでした。
辞めた理由をきちんと話さず、ふさぎこんでいたのは俺のほうです。
別れて数日後、元カノの来ていないサークルの集まりに顔を出しました。
トイレから戻る途中、ふすまの向こうから幹事の友人の声が聞こえてきます。
「仕事辞めた途端に振るとか、冷たくない?」
何人かがうなずいている気配でした。
このままでは、元カノはこの集まりに来られなくなると思ったのです。
次の集まりで元カノが顔を出したとき、俺はみんなに聞こえるように言いました。
「お、来た来た。お前を振ったのは俺だからな」

引っ込められなくなった言葉

仲間たちは笑い、元カノを悪く言う声はそれきり聞かなくなりました。
一度言い出した以上、もうやめるわけにはいきません。
やめれば、また元カノが冷たい人にされてしまう気がしたのです。
だから集まりのたびに、元カノが席に着く前に言うようにしていました。
今回も、同じつもりでした。
幹事の友人に「そういえば2人、なんで別れたんだっけ」と聞かれ、いつもどおりに答えます。
「お前を振ったのは俺だ」
笑い声のあと、元カノがまっすぐこちらを見ました。
「振ったのは私でしょ」

あの日は雨だった

座敷の笑い声が止まり、幹事の友人の顔がこわばるのが見えました。
3年前にふすまの向こうで言ったことを、幹事の友人も思い出したのだと思います。
元カノは、俺の言い張る話をずっと屈辱だと受け取っていたのかもしれません。
そう気づくと、続ける理由が見つからなくなりました。
グラスを置いて窓の外に目を向けると、言葉は自然に出てきました。
「そうだったな。あの日、雨だったよな」
それだけ言うと、俺は上着をつかんで座敷を出たのです。

そして...

店の外にいると、幹事の友人からメッセージが届きました。
「あのときの話、俺から彼女に謝る」
返したのは「頼む」の一言だけです。
元カノが残った座敷でどんな話がされたのかは、分かりません。
戻る気にはなれず、そのまま駅へ歩きました。
お前を振ったのは俺だ、と言い続けたのは、元カノがあの集まりで笑っていられるように、俺がつき通した1つだけの嘘でした。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ