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小金井公園の客車が聖地に!『ゴジラ-0.0』制作者と地域協力のもと実現した撮影秘話を独占取材

  • 2026.11.5

核実験で誕生したゴジラが再び戦後復興期の日本を襲う、山崎貴監督の最新作『ゴジラ-0.0』(公開中)。山崎監督以下、第96回アカデミー賞視覚効果賞に輝いたVFXの白組ほか前作『ゴジラ-1.0』(23)の主要チームが再集結。主演の神木隆之介、ヒロインの浜辺美波はじめ吉岡秀隆、安藤サクラ、山田裕貴、佐々木蔵之介など前作のメンバーに加え、長澤まさみや田中泯など新メンバーも加わって、見応えあるスペクタクル&人間ドラマを繰り広げる。

【写真を見る】小金井公園にある、92年目の車両

本作の舞台は昭和24年。『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)や『永遠の0』(13)など在りし日の日本の風景を何度も再現してきた山崎監督は、本作でもセットやVFXを駆使して戦後の日本を忠実に再現している。そんななか、ロケ撮影が行われたのが敷島浩一(神木隆之介)と典子(浜辺美波)、明子(永谷咲笑)が一家3人で列車で移動するシーン。撮影に使われた客車は、劇中に出てくる路線で実際に使われていたものと同じ「スハフ32形客車」で、東京都立・小金井公園に展示されているものが使われた。そこで『ゴジラ-0.0』制作部の山田哲也、小金井公園長・若松正樹、そして映画やテレビドラマに撮影可能な東京都内のロケ地情報を提供し、案内、調整も行う「東京ロケーションボックス」の佐藤一輝に、ロケーション決定までの経緯から裏話まで撮影秘話を聞いた。

昭和24年に中央線で実際に使われていた客車が小金井公園に!

――まずはロケ地が小金井公園にある蒸気機関車展示センターに決定するまでの流れをお聞かせください。

山田「探したのは、昭和24年に東京から新潟に向かう中央線で使われていた客車ですね。まずは当時どんな車両が何が走っていたかを調べるわけです。該当する“スハフ32形客車”が小金井公園ともう一つ別の場所にあるとわかり、実際に見てこちらにお願いしました。もう一つのほうはJRさんが所有していて、特別列車として現役で使われていたんです。形式は同じでしたが、きれいに塗り直されてピカピカだったので使えませんでした」

――東京ロケーションボックスさんにはどのような形で依頼が来たのでしょうか?

左から東京ロケーションボックスの佐藤氏、小金井公園長の若松氏、『ゴジラ-0.0』制作の山田氏 撮影/杉映貴子
左から東京ロケーションボックスの佐藤氏、小金井公園長の若松氏、『ゴジラ-0.0』制作の山田氏 撮影/杉映貴子

佐藤「最初は山田さんから連絡があり、都立公園で展示している車両を使いたいということでした。通常の許可条件外での撮影になるので、まず公園長の若松さんに『G』という名がつく東宝が製作する映画の撮影で使わせていただけませんか、と相談したら『いいですよ、おもしろそうですね』と(笑)。最初からとても協力的で、ロケハン時から毎回現場に来ていただきました」

――かなり大きな公園ですが、撮影にはよく使われるのでしょうか?

若松「ミュージックビデオなど小規模な撮影で公園が使われることはありますが、客車のなかを使うのはおそらく初めてではないかと思います」

――客車と機関車の2両で展示されていますが、撮影に使ったのは客車だけだったのですか?

山田「客車のみです。引っ張っていた機関車はD51(デゴイチ)だったらしいんですが、ここにあるのはC57なので、別で撮ることになりました。JRの高崎線に臨時列車で走る車両もあったんですが、撮影が難しかったので京都鉄道博物館まで行きました。D51を車両基地内で動かしてもらって撮影し、CGにしたんです」

佐藤「逆に汽車は使わなかったんですね(笑)」

「山崎組はボロボロが好きですから(笑)」(山田)

――客車だけですと、セットという選択肢はなかったのでしょうか?

【写真を見る】小金井公園にある、92年目の車両 撮影/杉映貴子
【写真を見る】小金井公園にある、92年目の車両 撮影/杉映貴子

山田「ロケ前提でしたね。というのもシーンが短いことと、探せばあるだろうという理由からです。これまで山崎組では昭和の戦前・戦後の映画を撮ってきたので、『あそこに行けばある』とスタッフもある程度わかってはいたので。でも、小金井公園を使うのは山崎組でも初めてだと思います」

佐藤「前作『ゴジラ-1.0』もほとんど東京で撮っていませんからね。東京ロケーションボックスも関わることができなかったので、都立公園が候補なら絶対逃せないなと。断られたらどうしよう…と思っていたのですが、小金井公園さんにはすばらしい対応をしていただきました」

――都の施設の場合、使用許可の手続きはどのような形になるのでしょうか?

若松「私ども指定管理者は東京都から公園管理を受託している団体なので、まず東京都に話を持っていきました。普段は商業撮影といってもスチールで1~2時間程度ですが、何日間も確保し続けるのは初めてでした。でも企画書も詳細に作られていたので問題なく申請が通りました」

――許諾はすぐ下りるものなのですか?

若松「2025年6月に山崎監督はじめ皆さんがロケハンに来られ、こうやって撮影したいという話を細かく詰められました。7月に撮影方法を説明するため一緒に東京都に行き、了承いただきました」

――撮影にあたって、車両に手は加えたのでしょうか?

佐藤「撮影するまでに何回も調査をして、この窓を開くようにしてほしいなどいろいろお願いはしましたね」

若松「この車両はJRさんの持ち物なんです。東京都との契約で貸与されて、今年で52年目になります。ですからJRのグループ会社から専門家が来て、撮影クルーの希望に合わせて『これはこうしたほうがいい』と修繕を考えてくれました」

 『ゴジラ-0.0』劇中に登場する座席 撮影/杉映貴子
『ゴジラ-0.0』劇中に登場する座席 撮影/杉映貴子

山田「劇中でトンネルに入り窓を閉める描写があります。ロケハンの時に、どこに座ってどの窓を開けるかなど決めていたので、2か所の窓を開け閉めできるようにしたいと。あとは、車外からガラス越しに撮るところでガラスの一部曇っていたので、ほかのガラスと入れ替えていただくなど、対応してもらいました」

佐藤「ここは外すと戻せなくなるので、ほかの窓にしようとか。たしか長野や京都から専門の職人さんが来られました」

若松「この蒸気機関車は木製で経年の傷みが激しいので、なにかやるとボロボロボロって崩れてしまうんです。整備は東京都が行うんですが、直近で整備したのは20年くらい前。その時はもっとピカピカだったはずなんですが、これだけ経つと傷んでしまいますね」

山田「でも山崎組はボロボロが好きですから(笑)。当時は新しかったかもしれないけど、ちょっとくたびれていたほうが監督もセットデザイナー(上條安里)も喜ぶんです。塗装も部分的なレタッチが多かったですね。塗装が剥げた部分を塗ってもらうことも多かったと思います」

佐藤「こちらからお願いしたのは、より自然な形での修繕でした。建て付けも塗り直したり付け加えるのではなく、当時を再現する形ですね。塗料も職人さんに作ってもらったんです」

山田「そうですね。昔の国鉄カラーは色を作るのがすごく難しいと言ってました」

「撮影で使われた車両をいつでも見に行けるのもうれしいですね」(佐藤)

――修繕以外に、装飾として加えたものもあったのでしょうか?

車窓外にはグリーンバックを設置 [c] 2026 TOHO
車窓外にはグリーンバックを設置 [c] 2026 TOHO

山田「飾りでやったのは、いまあるスピーカーを変えました。いまのものに、スピーカーの側を被せただけですが。あとは路面路線図や広告を貼ったりしました。灰皿は交換しましたね」

若松「この車両は1974年までは走っていたので、灰皿はそのころのものなんです」

山田「灰皿には戦後すぐのものとは違う、新しい国鉄マークが入っていたので、それを変えたいということです」

――実際の撮影方法をお聞かせください。

客車全体を黒い布で覆い、外の光が入らないようにセットを制作 [c] 2026 TOHO
客車全体を黒い布で覆い、外の光が入らないようにセットを制作 [c] 2026 TOHO

山田「この客車を足場で囲いまして、黒い布で覆って外の光が入らないようにしました。完全にセットですね。劇中のライトは全部照明部が作り、窓外の抜けは合成用のグリーンを置きました。大人だけだったら夜間に撮ったかもしれませんが、子役(明子役の永谷咲笑)もいたので日中だけで撮影できるようにするためです。問題は車両の横に木が多く生えていて、枝が邪魔になったという」

若松「ちょうど切らなきゃいけないと思ってたので、枝は落としました(笑)」

佐藤「外にある施設なんですが、黒い布で囲ってなかをオープンセットみたいな形にして撮影しました。ただとにかく暑かったですね。特に去年はめちゃくちゃ気温が高かったので、巨大な室外機を用意しました」

――準備から撮影までどのくらいの期間だったのでしょうか?

佐藤「9月12日から19日の間に準備、設営から撤収までを行いました」

山田「だいたい8日間で、うち本番が1日です。芝居を撮る時は、カットによって座る場所を変えています。確か窓の開け閉めの問題で、外から車内を撮る時だけ逆側の座席で撮影しました」

「小金井公園は都民の貴重な財産です」(若松)

――映画の撮影をご覧になっていかがでしたか?

東京ロケーションボックスや小金井公園と連携し、東京都の承認を得て、スムーズに進行・撮影できたという 撮影/杉映貴子
東京ロケーションボックスや小金井公園と連携し、東京都の承認を得て、スムーズに進行・撮影できたという 撮影/杉映貴子

若松「撮影日は神木隆之介さんたちがお見えになられて、小金井公園にある客車がこんな大作映画で使われていることにとても感動いたしました。客車をずっと黒い布で覆っていたので、いろんな人に『あれは何をやっているんだ』と何度も聞かれ、口ごもってしまいましたが…(笑)」

佐藤「ロケとはいっても、ほとんどセットだったので問題もなかったですね。通常の公園であれば、一般の方のお邪魔にならないように気を配るんですが、幸いなことに車両が柵で囲われていたのも助かりました。普段、平日は入れないようになっていたので、スケジュールも調整しながらで、一般の方々にご迷惑をおかけすることなく進めることができたと思います」

山田「皆さんにご協力いただいたおかげで、非常に充実したロケでした。柵に囲われてるのが大きかったですね」

佐藤「セットだったら撮影したあとバラしてしまいますが、ずっと展示されているものなので。撮影で使われた車両が見たかったらいつでも行けるのもうれしいですね!普段は車両のなかには入れませんが、イベント時は車内にも入れるそうで、それもすごいと思います」

グリーンバック前後の照明で明るさを調節する [c] 2026 TOHO
グリーンバック前後の照明で明るさを調節する [c] 2026 TOHO

山田「実際の営業電車を借りると、おそらく何もいじれないので物を隠す程度になるんです。窓ガラスの入れ替えなんて絶対できないですよね」

佐藤「そういった要望が出てきた時に若松さんが全部ご対応して繋いでくださったので、本当に助かりました。車両に手を加えたのもプロの方たちなので、制作会社が勝手にいじって壊してしまったということもなく安心してお願いできました」

若松「小金井公園は都民の貴重な財産です。ルールはありますが、私たちとしても公園のポテンシャルを最大限に活かし、映画などを通して小金井公園の魅力を伝えられたらと思います。映画を観るのがいまから楽しみです(笑)」

佐藤「小金井公園以外にも多くの都立公園で撮影をさせていただいていますが、利用者が多い場所や、道が狭いエリア、住宅街が近くにある公園など、場所に合わせて様々な工夫や対策を立てたうえで、撮影をするように映像制作会社と協力し、公園の管理者と協議し、撮影の準備を進めています。

映画やドラマなどの映像作品に都立公園が露出することで、その公園の魅力をより多くの方に知っていただける機会になればと考えております。通い慣れている公園でも、映像作品を通して見る公園は、自分の目で直接見ている公園とは違う、新たな魅力に気づくきっかけにもなると私は思っております。

そして、撮影というものをより身近に感じていただき、『このまえ見たドラマであの公園出てたよね?』みたいな世間話のひとつとして公園についての話題が出てくれたらうれしいなと思います」

『ゴジラ-0.0』は公開中! [c] 2026 TOHO
『ゴジラ-0.0』は公開中! [c] 2026 TOHO

取材・文/神武団四郎

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