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「昇進した女は可愛くない」と言った俺→台所で振り向いた顔と、その言葉の続き

  • 2026.11.7
ハウコレ

あの言葉には、彼女が聞いていなかった続きがありました。台所で振り向いた俺の顔が、なぜあんなふうになったのかを話します。

ネットの記事の下に、女性の管理職についての書き込みがいくつも並んでいました。ソファでそれを眺めていた俺は、1つを声に出して読み上げました。ひどいよね、と彼女に言うつもりだったのです。

聞かれなかった続き

「昇進した女は可愛くない」
書き込みをそのまま読み上げてから、顔を上げました。
「って、こういうこと書くやつ、まだいるんだな」
そう続けたとき、リビングにはもう誰もいません。
ガラス戸の向こうで、彼女がタオルをたたんでいました。
洗濯物を取り込みに行っただけだと思い、それ以上は気にしなかったのです。
彼女が仕事の話をしなくなったことにも、俺はすぐには気づけませんでした。

母が仕事を辞めた理由

俺が小学生のころ、母は勤め先で昇進しました。
その知らせを聞いた父が、食卓で口にしたのがあの言葉です。
母はそれから1年もしないうちに、仕事を辞めてしまいました。
その話をするとき、母がいつも笑っていたのが、子ども心に余計につらかったのを覚えています。
父のようにはならないと、俺はずっと思って生きてきたつもりです。
だからあの書き込みを見たとき、声に出さずにはいられなかったのでした。

台所で振り向いたとき

数週間後、フライパンを振っていると、彼女が仕事から帰ってきました。
振り向かずに「おかえり」と言った俺に、彼女は続けて言いました。
「昇進したよ。可愛くない女になっちゃった」
その言葉で、彼女があの日の続きを聞いていなかったと分かったのです。
彼女は何週間も、あの言葉を俺の本音だと思って過ごしていました。
父と同じ言葉を、俺は彼女に聞かせてしまっていたことになります。
振り向いたとき、自分がどんな顔をしていたのかは覚えていません。
「ちょっと待って」とだけ言い、火を止めて寝室に入りました。
彼女の前で泣くのは違う気がして、何度も深く息を吐いて顔を上げたのです。

そして...

寝室を出て、テーブルの椅子を1つ引き、彼女のほうを見ました。
「座ってくれる?」
向かいに座った彼女に、最初に「昇進おめでとう」と言いました。
彼女は「遅い」と返して、少しだけ笑ったのです。
父が母に言えなかった言葉を、ようやく1つ言えた気がしました。
それから、書き込みのこと、聞かれなかった続きのこと、母のことを順番に話していきます。
彼女は途中で一度だけ、「なんで先に言わないの」と怒りました。
可愛くないどころか、昇進した日の彼女は、俺が知っている中で一番いい顔で怒っていました。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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