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【延長保育の現実】毎日『おのこり組』はかわいそう? 保護者のリアルな声とメリット・デメリット

  • 2026.11.5
cocreco出典:コクリコラボ

幼稚園は4時間、保育園は8~11時間。

これは国が定める「1日の教育・保育の標準時間」です。

共働きやシングル家庭の保護者が増えるなか、この標準時間より長く子どもたちを預かる幼稚園の「預かり保育」や保育園の「延長保育」のサービスが広がっています。

預かり保育を提供している幼稚園の割合は、1997年の29.2%から2023年の91.0%と、大幅に増えました。

また土曜日にも預かり保育を実施している幼稚園は全体の17.5%に上り、幼稚園でも、保育園のような預かりサービスを強化していることが分かります。(※1)

cocreco【共働きがスタンダードになった現在、延長保育・預かり保育は、働く親にとって無くてはならないインフラに。だけど、リアルな本音は…? アンケートから見えた切実な声と、保育時間への向き合い方を考えます】 写真:アフロ

全国の保育園で2025年に行われたアンケートでは、最も多い開園時間は7時台・閉園時間は19時台。なかには延長保育を行い、11時間以上開園している園もあります。(※2)

就学前の子どもたちをより長い時間預かる仕組みは、2015年の「子ども子育て支援新制度」で広がりました。

このとき保育園では、フルタイムで働く親向けに、預かり時間を全国統一で「最大11時間」と新たに設定。幼稚園でも、預かり保育の追加保育料の支払い方法が簡略化される、などの変化がありました。(※3)

長時間保育は「かわいそう」なのか

それから10年。延長保育・預かり保育は社会に定着して、働く親たちには無くてはならないインフラとなっています。

一方、上の世代からはまだ「長い間預けてはかわいそう」と言われたり、子どもから「延長保育には行きたくない」と泣かれて悩む、という話も。

働く保護者たちは今、延長保育・預かり保育を、どのように利用しているのでしょう。

そして日々、子どもたちを長めに預けることに対して、どんな思いを抱いているのでしょうか。

子育て世代のメディア「コクリコ」では、延長保育・預かり保育を利用した20代から50代のママたちにアンケート。

延長保育・預かり保育は「親にとってはありがたい」と感謝する一方、全肯定で使いこなすだけではない、複雑な思いが浮かび上がってきました。

6割の保護者が利用経験あり

cocreco出典:コクリコラボ

預かり保育・延長保育を利用したことがある保護者は、アンケート回答者の約6割。

このうちの3割は「ほぼ毎日」、約2割が「週に数回」、4割強のママたちは「緊急時のみ」と答えています。延長保育を定期的に使う人と、特別な必要があるときだけスポット的に使う人は、ほぼ半々でした。

【延長保育利用の理由・第1位は「仕事時間が長いため」】

cocreco出典:コクリコラボ

利用する・していた理由で一番多かったのは、仕事のため。長い業務時間のほか、通勤時間を理由に挙げる人もいました。

続いて多かったのが、「自身のリフレッシュのため」「ほかのきょうだいの面倒を見るため」「自身の通院のため」。

忙しい日々の中、自分を含めた家族をケアする時間を作るのに、延長保育が大いに助けになっていることが分かります。

一言で「リフレッシュ」と言っても内容はさまざまで、ヘアカットや仕事着のショッピングなど、身だしなみの用事が含まれることも。

ケアの時間は保育サービスを利用して「作るもの」……未就学児を育てる共働き生活の、「とにかく時間がない!」と叫びたくなるような暮らしぶりが、目に見えるようです。

心のハードルは「あり」「なし」で半々

延長保育は働く保護者には貴重なサービスですが、それを使うときの心持ちはどうでしょう?

cocreco出典:コクリコラボ

「延長保育の利用に対し、心理的なハードル(罪悪感など)は感じますか?」の質問には、半分を超える人が「とても感じる・時々感じる」と答えました。

その一方で「あまり感じない・まったく感じない」と答えた人は、約4割。

「どちらとも言えない」は1割にも満たず、延長保育を利用するときの心持ちは、ほぼ半々に分かれていることが見てとれます。

その心持ちとは、どんなもの? それは「延長保育のメリット・デメリット・課題だと感じること」を尋ねた回答に、よく表れています。

延長保育のメリットは親にも子にも

cocreco写真:maroke/イメージマート

まず「メリットだと感じること」。こちらの回答は、子ども側と保護者側の両方に見られました。

【子ども側に対して感じるメリット】

子ども側に関することで挙げられたメリットは、延長保育だから可能な過ごし方をポジティブに捉えるものです。

外部スタッフの多彩なアクティビティ(運動遊びや書き方)や、お友達や家族以外の大人との関わりが深まること。お迎えのときの子どもの笑顔から、保護者の方々が覚えている実感が浮き彫りになっています。

通い慣れた場所で、違う学年の子どもたちと遊べる楽しさを挙げる声もありました。なかにはズバリ「家でゲームやYouTubeを見ているより、友達と過ごせて良いと思う」という、令和の親たちにはブンブン頷いて共感する回答も。

【保護者側が感じるメリット】

保護者側で多かったのは、仕事関係です。

「仕事を続けられる」「仕事ができる」と、延長保育を利用する理由とそのまま重なる声が集まりました。あと1時間あれば会議に出られる、キリのいいところまで作業を終わらせられる……!

それを叶えてくれる延長保育への感謝が、親たちの短いコメントから滲み出ています。

また、延長保育が親の心理的な支えになった例もありました。

「延長保育はほぼ必要なかったが、小規模ののんびりした幼稚園で、先生が『〇〇くんと遊びたいので、たまに延長保育に預けてください』と言ってくれた。愛情深く接してくれていて、園側にも余裕があって、私自身も心の拠り所になった」(アンケート回答より)

家族以外の関わりが増えるありがたみは、子どもだけではなく、親も同じ。

延長保育が日中の通常保育とはまた別の「もう一つのつながり」になって、親子の生活の拠点を増やしている。親子が孤立しないために大切な「頼れる先を広げる」支援を、延長保育も担っていると分かります。

デメリットは子の疲れと自宅時間の圧迫

親子の双方にメリットが感じられている一方で、「デメリット」はどうでしょう。言い回しやエピソードは違いますが、共通して、切なさや苦しさを語るコメントが集まりました。

【延長保育の利用が少ない施設で感じるデメリット】

複数あったのは、延長保育の利用が少ない施設のケース。

「担当の先生が少ないと、子どもが一部屋にぎゅうぎゅうになっている感がある」「子どもの人数が少ないので、テレビを見ることが増える」など、標準時間の保育とは違う点が指摘されました。

延長保育の利用が我が子ひとりだけの場合は、園舎はほぼ真っ暗になっていた……という体験談も。利用者の少なさから、保護者が施設に責められた事例もありました。

「園の先生から同じ業種の他の保護者と比較され、なぜこんなに延長が多いのか、子どもがかわいそうだと責められました」(アンケート回答より)

【子どものネガティブな反応で感じるデメリット】

延長保育に対する子どものネガティブな反応に、胸を痛める声も複数ありました。

「(登園前の)朝から嫌だな~と言われる」「たまに子どもに寂しいと言われる」「『おかえりの子』『おのこりの子』と分けられるので、帰れる子を羨ましがる」……働く親としては、想像するだけで胸がキュッとなるような場面です。

「子どもが『今日行きたくない』という日もあり、そんなときは無理して行かせている罪悪感があります」(アンケート回答より)

また預け時間が長くなる分、帰宅後の家事・育児の時間が圧迫されることを、「デメリット」と考える保護者も。

「家族の団欒の時間がなくなる」「バタバタしがち」「帰ってきても遊んであげられないし、夜寝る時間も遅くなる」のほか、「子どもの身体的・精神的疲労度。自分の心の余裕のなさ」と短い文で日々の切なさを表したコメントは、多くの保護者に思い当たるところがあるのではないでしょうか。

「仕事をやり切って帰ることができるが、延長したらした分だけ帰宅してから時間が減るので、家事で手一杯で子どもと接する時間が減ってしまう」(アンケート回答より)

デメリットの自覚から来る罪悪感

cocreco写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

そしてこれらのデメリットの語りには、「うしろめたさ」「罪悪感」「申し訳ない」「すごく切ない」など、保護者としての思いが添えられています。

「親にはありがたいシステム、子どもにとってありがたいかは分からない。忙しい親にとっては良いが、子どもにとっては親との時間が減って寂しさを感じる気がする」(アンケート回答より)

またその申し訳なさを、負担が増えているであろう保育士さんに感じているコメントもありました。

たとえば8時間保育から11時間保育になると、保育園の稼働時間は、単純計算で3時間増えます。保護者自身も時間に追われて働いているからこそ、その意味が、身に迫って感じられるのでしょう。

延長保育・預かり保育はとても助かり、子どもにいい面もあると実感している。けれど同時にデメリットも感じていて、それをごまかすことなく見つめている……。

令和の親たちの思いは、良い・悪いと単純に決められない、複雑さをはらんでいます。

延長保育しなくて済むには?

親たちがメリットだけでなく、デメリットも感じている延長保育。

「これがあったら延長保育に頼りすぎないで済むと感じること」を尋ねる項目では、「働き方」と「父親の育児参加」の意見が集まりました。

標準の保育時間では足りないのは働き方が理由で、母親以外にお迎えに行ける人がいないから延長保育を利用せざるを得ない、そんな実態が浮かび上がります。

「我が家では夫が仕事・私が家事育児の完全分業制だと割り切っていました。夫の定時退社とリモートワークが可能であれば、私も働けたし、延長保育に頼らずに済んだのにな、と思います」

「なかなか現実的に厳しいですが、定時退社が当たり前文化、柔軟なリモートワーク、男性育児参画へ理解、保育士さん増員と待遇改善など、すべてが一律で実現することを切に願います!」(アンケート回答より)

平日のお迎えはいつもママ?

拡充されている父親育休制度や働き方改革によって、父親の育児参加は進んでいます。けれど平日のお迎えは時間を延長していても、母親が担っているケースが多いのです。

また延長保育・預かり保育は、「保護者の仕事と子育ての両立支援」のために整備されてきました。

ですがこれによって残業の削減や業務効率化、人員の補充なしに業務が回ってしまい、子育てや介護中の人が無理なく働ける「柔軟な働き方」への移行が、結果的に進まなくなっている可能性もあります。

仕事と子育ての両立には、保育先の確保が欠かせません。

その一方で、大人の労働時間を優先して子どもの預け時間を長くする方針は、社会全体の働き方を厳しいままに維持して、親子が一緒に過ごす時間をさらに奪ってしまっているのかもしれません。

延長保育の経験者からのメッセージ

複雑な思いを抱えつつ、目の前の仕事と生活を続けるためには、延長保育・預かり保育は必要なもの。

ママたちの多くは、悩ましい中でも仕事と子どもに向き合って、延長保育・預かり保育を活用しています。アンケートに寄せられた言葉はリアルで、同時代の子育て仲間として励まされるものばかり。

(以下、「」内はアンケートの回答から)

「子どもを迎えるとき『ごめん』でなく『ありがとう』と伝えるようにしています」

「罪悪感はなくてもよい。子どもはけっこう楽しんでいたりするから。何時になっても絶対迎えに行くということが伝わっていれば、それでいいんじゃないかと。親御さんの時間も大事!」

「延長保育を利用することに、負い目を感じる必要はないです。利用できる環境に感謝して、子どもと一緒にいる時間に目一杯愛情を注いであげれば良いと思っています」

「子どもがかわいそう……と悩むこともあるかもしれません。私自身も、そう感じることがありました。でも、親が仕事を頑張る姿を子どもに見せることも、大切な経験だと思います。そしてたとえ短い時間でも、毎日子どもと笑い合える時間があれば、それで十分だと信じて働いてきました。家庭も仕事もどちらも完璧にできず『中途半端かも……』と罪悪感を感じることもありました。でも、どちらも中途半端でOK、ぼちぼちでOK。そんなマインドを持つことも、とても大切だと思います」

「自分に無理な状況を口に出していい!! 抱え込まないで、ベテラン保育士さんとか保健センターで相談とかドンドン巻き込んで、自分の体調を整えて、特に睡眠時間確保!! いろんな話も聞こえてきちゃうけど図太く過ごしてほしいです。笑顔でいられますように」

なかには、冷静に注意を促すコメントもありました。

「誰かが悪いわけでありませんし、責めるわけでもありませんが、事実として、負担は子どもに蓄積されます。後悔しないように、家族でよく話し合ってください」

利用経験者のママたちの声から、延長保育・預かり保育について考えてみた今回の記事。

令和の日本社会に定着したサービスだけれど、保護者たちの多くは、思うところがありながら利用している……そんな様子がひしひしと伝わってきました。

この「思うところ」を整理して、親子が心穏やかに過ごす方法はあるでしょうか?

保育時間が長い子どもだからこそ、家庭での生活で、親が気をつけるとよいポイントとは?

続く後編では、NHKの番組「すくすく子育て」でおなじみの大豆生田啓友(おおまめうだ・ひろとも)先生(玉川大学教育学部教授)に尋ねます。

長時間保育だからこそ取り入れたい「家での過ごし方」や「子どもへの声かけの仕方」のヒントを、たっぷり伺いました。

取材・文/髙崎順子

【出典・参考】

※1 文部科学省 令和5年度「幼児教育実態調査」 PDFのP38 「6.幼稚園における預かり保育実施状況」

※2 有限責任監査法人トーマツ 令和7年「延長保育及び夜間保育を含めた保育利用時間等の実態及び早朝・夜間・休日等を含めた保育ニーズの把握に関する調査研究報告書」(令和7年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業) PDFのP23「図表2-21: 【平日】開所、閉所時刻(数値回答)」

※3 こども家庭庁 よくわかる「子ども・子育て支援新制度」

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