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「ウクライナの戦争を想って書いた」あさのあつこが語る『NO.6再会#3』の真実 ついに暴かれるネズミの過去と、予測不能な紫苑の未来

  • 2026.11.4

「ウクライナの戦争を想っていました。私たちが繰り返してきた残酷さを、忘れてはいけません」そう語るのは、14年ぶりに「NO.6[ナンバーシックス]再会」シリーズを書いている作家のあさのあつこさんです。

2025年5月に発売した『NO.6[ナンバーシックス]再会#1』は、告知とともにSNSでトレンド1位に! AmazonでもSF・ホラー・ファンタジーのカテゴリで1位(2025年6月6日調べ)を獲得するなど、注目を集めています。

2026年5月28日に最新作『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』を刊行した、あさのあつこさんを直撃。物語の制作秘話や作品に込めた祈りについて、たっぷりとお話を伺いました。

▼▼以下のインタビューは『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』のネタバレを含みます。ネタバレを避けたい方は、『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』をお読みになってからご覧ください。▼▼

ウクライナの戦争を想って歌詞を書きました

──『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』では、ついにネズミの過去2年間が暴かれました。まず驚いたのは、ネズミが出会う新しい一団との繫がりです。

あさの ネズミが荒野を彷徨っていると考えたときに、ひとりでは無理だと思ったんですよ。

やはり連れがいる、しかも旅に長けた人たちだろうと考えたところから旅芸人の一団が生まれました。意図して生み出した登場人物ではなく、いつのまにか現れていたと言ったほうが正しいかもしれません。

──一団とのシーンで特に印象的だったのは、碧石(へきせき)という男の子が、ネズミの歌を聞いて感情を爆発させるシーンでした。

あさの この場面もまったく予期していませんでした。ただネズミの歌には特別な想いがあります。音楽の成績が1とか2をとるくらい、私自身が歌がとても苦手なんです。だから歌の「魔力」をネズミを通して書きたい気持ちは強くありました。

碧石は西ブロックの「人狩り」で親を亡くし、心を閉ざした男の子です。彼の心を解放しなきゃと考えたとき、ネズミの歌しかありませんでした。彼の歌の力は素晴らしかったですね。このシーンであらためて、ネズミが「歌う者」だということを思い知らされました。

──『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』には2つの歌が登場しますが、歌詞はどのように生まれたのですか。また、あさのさんにはネズミの歌が聞こえているのでしょうか。

あさの まず碧石が涙を流した、兵士を待つ恋人の歌。この歌詞を書くときは、ウクライナの戦争を想っていました。戦地に向かったまま帰ってこない人を待ち続ける人々の気持ちを想像したとき、自然と歌詞が浮かんできました。

紫苑にとっては父親より目の前のネズミが大事

あさの もう1曲、ネズミが碧石に「最後の歌」として教えた歌は、伝承歌をイメージしたんです。ネズミが歌う曲はきっと凝った言い回しの歌ではなく、伝承歌として歌い継がれてきた、人の想いがこもった歌だと思いました。

私にはネズミの歌のメロディーはわかりません。だからネズミ役の細谷佳正さんや古田一紀さんがアニメやミュージカルでネズミの歌を披露してくださったときは感動しましたし、嬉しく思いました。

──ネズミと繫がりが生まれた一団ですが、その後、悲惨な状況に陥ることになります。

あさの ネズミも作中で「狩る者と狩られる者」の話をしていますが、世の中には92パーセントの大多数と、そこからこぼれ落ちてしまう8パーセントの人がいます。その8パーセントの人に私たち人間が繰り返してきた「残酷さ」を、私たちは忘れてはいけません。

「NO.6[ナンバーシックス]再会」シリーズを書き始めたとき、この惨劇を過去の話ではなく生々しい現実としてあることを書きたいと思っていました。

切り捨てられた人たちがどう足搔いていくのか、そして92パーセントの人たちが彼らを人間として認められるかどうかは、『#3』に関わらずこのシリーズの大きな根幹を成しています。

──今後の展開も楽しみです。『NO.6[ナンバーシックス]再会#3』の後半には、紫苑の父、来懼(らいく)が登場しました。どのような思いで書かれましたか。

あさの 『NO.6 beyond[ナンバーシックス・ビヨンド]』の「ネズミの日々」で紫苑の父親について触れてからずっと消化不良のまま残っていたので、いつか絶対出てくるだろうとは思っていたんですけど。意外に紫苑はさっぱりしていましたね(笑)。

──本当に! 紫苑のリアクションの薄さには少し驚きました。

あさの 自分の人生に一切関わってこなかった人間だから、どうでもいいのかもしれません。それよりもこれから関わっていきたい、一番大切な人であるネズミが目の前にいるのですから。

来懼という人物が紫苑の戦うべき相手なのか、どこかでまた反転するかわかりませんけれど……、彼が登場することで、紫苑もネズミも「これから大変だな」と思いながら書いていました。

──「NO.6」ファンとしては、紫苑、ネズミ、イヌカシ、力河が久しぶりに顔を合わせるシーンも胸熱でした。最後に今後の展開について、ヒントを教えてください。

あさの 4人が集まるとやっぱり面白いですね。4人の関係を武器に、紫苑がどう戦っていくのかしらと思うけれど、紫苑は反転するかもしれない。これから先のいろんなシーンが浮かんだり、セリフが聞こえたりするんです。まだ繫がりは見えないけど、それらを拾い集めると「この子、わからないな」と改めて思います。

私の中でネズミは、意外と軸があってブレないんです。心が揺れているけれど、生き方の指針はあまり変わらない。私にとっては紫苑のほうが、得体の知れない存在。だけど「死んでおしまい」にはしたくないという気持ちはすごくあります。紫苑とネズミにはちゃんと生き延びてほしいと願っている。あとは、紫苑さん次第です(笑)。

あさのあつこ

岡山県生まれ、在住。大学在学中より児童文学を書き始め、小学校講師ののち、1991年『ほたる館物語』で作家デビュー。97年『バッテリー』で第35回野間児童文芸賞、2005年『バッテリーⅠ~Ⅵ』で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。『NO.6』シリーズは、コミカライズ、アニメ化された。児童文学から時代小説までさまざまなジャンルの作品を執筆し、幅広い世代に親しまれている。

シリーズ累計230万部超え、2人の少年の友情を超えたディストピア小説の傑作

撮影/柏原力(講談社写真映像部)

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