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東京QQQがベルリンで初の海外公演。8人の表現者が描く「生きざま」と「生きがい」

  • 2026.11.5
本記事すべての写真は、東京QQQ『IKIZAMA / IKIGAI』(「MaHalla」にて) Photo: 夢無子

東京を拠点に活動するパフォーマンス集団「東京QQQ(トーキョーサンキュウ)」が、ベルリンで初の海外公演を行った。東京QQQは、パフォーミングアーティストのアオイヤマダ、車椅子ダンサーのかんばらけんた、バーレスクアーティストのKily shakley(キリー・シャクリー)、ポールダンサーのKUMI、ダンサー・俳優の高村月、バーレスクダンサーのちびもえこ、ボディーワーカー・パフォーマーのMONDO、ドラァグクイーンの山田ホアニータの8人からなるパフォーマンス集団だ。

それぞれ異なる経歴や専門分野を持つメンバーが集まり、ダンス、演劇、詩、バーレスク、ポールダンス、車椅子を用いた身体表現などを組み合わせた独自の作品を発表している。これまでに、2024年の「百年後芸術祭」や東京ドームで行われた「apバンクフェス'25」をはじめ、さまざまなイベントに出演し、活動の幅を広げてきた。

今回のベルリン公演は、9月の「ベルリン・アート・ウィーク」期間中に「MaHalla(マハラ)」にて開催されたグループ・エキシビジョン「UNRUHE」のハイライトとして実現した。公演タイトルは『IKIZAMA / IKIGAI』。「生きざま」と「生きがい」という2つの日本語をテーマに、8人のメンバーがそれぞれの個性と身体を通して、多様な生き方を表現した。

Photo: 夢無子

会場となったMaHallaは、1990年代に閉鎖された発電所の跡地を活用した複合文化施設。約9000平方メートルにおよぶ広大な敷地には、メインホールをはじめ、ブラックホール、フォーラム、スタジオ、ウィンターガーデン、地下の展示スペースなどがあり、70以上の部屋を擁する。かつての産業施設の面影を色濃く残す建物は、アート、音楽、パフォーマンス、ファッションショー、映画上映など、多彩な文化活動の拠点として活用されている。

Photo: 夢無子

東京QQQのパフォーマンスが行われたのは、MaHallaのメインホール中央。鉄骨や配管がむき出しになったインダストリアルな空間に設けられた舞台には、中央に一本のポールが立ち、その両側にはLEDライトの光に照らされた円筒形のテントのような構造物が配置され、背後には鏡張りの壁が設置されていた。開演が近づくにつれ、舞台を取り囲むように多くの観客が集まり、会場は期待に満ちた熱気に包まれていった。観客のなかには、ベルリンを拠点に活動するダンサーやパフォーマー、演劇関係者の姿も多く見られ、現地のアーティストからも高い関心が寄せられていることがうかがえた。

Photo: 夢無子

ショーは、照明を最小限に抑えた薄暗い空間の中で幕を開けた。メンバーが身にまとっていたのは、白を基調とした衣装。それぞれの衣装には手書きの言葉が記され、身体の動きとともに、個々のメッセージを伝える要素となっていた。舞台上では、車椅子を用いたアクロバティックな空中パフォーマンスや、ポールの頂上で繰り広げられる迫真の演技など、身体の使い方も表現方法も異なる8人が、それぞれの個性を際立たせながら、一つの作品をつくり上げていく。同じ動きをそろえて踊るのではなく、異なる身体表現が交差し、ときに重なり合うことで、舞台全体に独自のリズムが生まれ、予測不可能な動きに緊張感が走る。

Photo: 夢無子

ショーの途中、メンバーは白い衣装から、それぞれの個性に合わせた鮮やかな色彩と大胆な造形が印象的な衣装へとチェンジ。彫刻作品を思わせる衣装をまとって再び舞台に姿を現すと、観客から大きな歓声が上がった。空を舞う鮮やかなオレンジやピンクの球体状のオブジェ、大きな翼を思わせる幻想的なブルーなど、激しい身体の動きに合わせてさまざまな表情を見せ、舞台の雰囲気を一変させた。

Photo: 夢無子

そしてフィナーレでは、東京QQQのオリジナルソングに合わせて盆踊りを披露。メンバーの呼びかけに応じて観客も次々と踊りに加わり、会場には大きな踊りの輪が広がった。日本語や盆踊りになじみのない観客も多いなか、言葉や文化の違いを超え、ともに踊ることで人々がつながる。そんな身体表現の持つ力を印象づけながら、会場全体が一体となってパフォーマンスは幕を閉じた。

衣装は、コスチューム・アーティストのひびのこづえが担当し、ヴィジュアルディレクターでアーティストの河野未彩が舞台美術などのディレクションを担当している。そのほかにも各分野で活躍するクリエイターが制作に携わっており、身体、衣装、音楽、言葉、視覚表現、空間を組み合わせて、一つの作品をつくり上げている。

Photo: 夢無子

NIOAA Galleryでも展覧会を開催。街中へと広がるパフォーマンス

MaHallaでの公演に加え、ベルリン・ミッテ地区に位置する「NIOAA Gallery」では、展覧会『IKIZAMA / IKIGAI | 東京QQQ』が開催された。NIOAAは、東京とベルリンに拠点を置き、両都市をつなぐクリエイティブプラットフォームとして、新たなカルチャーの発信地となっている。会場には、フォトグラファーの磯部昭子が撮影したキーヴィジュアル写真をはじめ、実際のパフォーマンスにも使用されるオブジェなどが展示され、舞台とは異なる形で東京QQQの世界観が紹介された。

展覧会初日のオープニングイベントでは、MaHallaでの本公演に向けたプロモーションも兼ねて、即興パフォーマンスが披露された。東京QQQのメンバーがギャラリーから飛び出し、通りを挟んだ向かい側の広場にまで展開したゲリラパフォーマンスは、偶然その場に居合わせた人々や通行人の足を止め、次第に観衆の輪が広がっていった。

Photo: 夢無子

東京QQQが掲げるのは3つの「Q」。「普通とは何か」「正しさとは何か」、そして「生きるとは何か」。社会の中で当たり前とされている価値観や固定観念に問いを投げかけながら、多様な存在や生き方を肯定する表現を追求している。

自らを「生き様パフォーマンス集団」と称する東京QQQにとって、表現の源泉となるのは、8人それぞれの身体や経験、歩んできた人生そのものだ。一般的なダンスグループのように同じ振付をそろえて踊るのではなく、一人ひとりが異なる身体の使い方や表現方法を持ち寄り、互いの個性を生かしながら全員が主役であり、それぞれのソロパートを担っている。そこには、身体や生き方の違いを制約として捉えるのではなく、表現の可能性として受け入れる姿勢がある。

総合プロデュースを務めるOOAA代表の大木秀晃は、今回の公演について以下のステートメントを残している。

「問い(Q)」には強さがあります。特に自分に対する問いというものは、答えの無いものが多く、誰かが教えてくれるものでもありません。しかし、問い続けることで、いつしか自分の中に生きがいが見つかり、その姿は生きざまとして他人の目に映る。この生きがい、生きざまという概念は、人が生きる上での本質的な「答え(A)」になるのかもしれません。もちろんその中身は人それぞれの中にあるもので、そうした生きざまや生きがいを問い続ける行為は簡単なことではありません。

このパフォーマンスで我々が表現したかったことは、この自分に対する「問い」を重く考えすぎず、時に自分以外の誰かに頼り、そしてまた自分と向き合うを繰り返していけばいい。誰もが、大丈夫ではないと思う時はある。それでもきっと大丈夫。生まれてきたことにも、生かされていることにも、そして、自分にも、Thank you!! そのさきに「答え」はきっといつか見つかる。というポジティブなメッセージです。


OOAAは東京を拠点とするクリエイティブカンパニー。企業や商業施設のブランディング、空間デザイン、コミュニティ形成、メディア制作など、ジャンルを横断した企画・プロデュースを手掛ける。カルチャーを軸に、人と人、人と場所の新たな関係性を生み出す活動を展開している。

世界各地からアーティストやクリエイターが集まるベルリンは、実験的な芸術活動が盛んで、LGBTQを含む多様なアイデンティティーや自由な表現を尊重する文化が根づく都市として知られている。一方で、さまざまな国籍や文化的背景を持つ人々が共存する中でも、差別や偏見はなくならない。日本人もまた、この街ではマイノリティの一つだ。

そうしたベルリンの文化的・社会的背景の中で、東京QQQは日本ならではの文化的要素を取り入れながらも、言葉による説明を必要とせず、全身全霊で表現するパフォーマンスと情熱によって観客を引き込んでいった。終演後には、歓喜に満ちて涙する人もいたほどだ。

初の海外公演となったベルリンでの活動は、東京QQQが追求する多様な身体表現の可能性を示すとともに、日本から生まれた独自のパフォーマンスが、国や文化の境界を越えて人々に届くことを印象づけるものとなった。



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