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彼女の車のハンドルに、俺が触れなかった事情→ルームミラーのお守りと、実家の玄関先で頼まれたこと

  • 2026.11.5
ハウコレ

「あの子の車で初めて遠くへ行く日は」。挨拶の帰りに彼女のお父さんから頼まれたことを、俺は運転席に座るまで忘れていました。

彼女のアパートの駐車場で、俺は手のひらを差し出していました。白い軽自動車は、彼女が貯金で買った初めての車です。いつもの調子でキーを受け取ったとき、大事な約束が頭から抜け落ちていました。

口癖になっていた言葉

付き合って2年、出かけるときの運転はずっと俺の役目でした。彼女は免許を取ってまだ1年で、助手席にいてくれたほうが安心だと思い込んでいたのです。
この日も、気づけば口が先に動いていました。
「俺が運転するから」
「今日は私が運転したい」と言う彼女に、「慣れてないだろ」と笑ってキーを受け取りました。彼女の顔が少し曇ったことには、気づいていたのです。

玄関先で頼まれたこと

運転席に座ってシートを下げたところで、ルームミラーのお守りが目に入りました。納車の日に、彼女のお父さんが渡したものだと聞いていました。
2か月前、初めて彼女の実家に挨拶に行った帰りのことです。玄関先で、お父さんに呼び止められました。
「あの子に運転を教えたのは俺なんだ。あの子の車で初めて遠くへ行く日は、隣に乗ってやってくれないか」
自分が教えた娘の運転を、代わりに見届けてほしい。そういう頼みだと受け取って、俺はうなずいていました。それなのに当日、真っ先にキーを取り上げたのは俺自身だったのです。

助手席で見ていたもの

「やっぱり今日はそっちが運転して」
そう言って車を降り、助手席に回りました。理由を話せば、お父さんとの約束を彼女に背負わせる気がして、言わずにおきました。
走り出してからは、彼女の手元ばかり見ていました。ウインカーを出すのが少し早いところも、合流の前に深く息をつくところも、お父さんに教わったのだろうと思えました。
「何か言いたいことがあるなら言って」と言われても、「別に」としか返せませんでした。上手だと伝えたら、運転しない理由まで話してしまいそうだったのです。

そして...

海沿いの駐車場で、俺は「いい車だな」とだけ言いました。本当は、いい運転だなと言いたかったのです。帰り道も、運転席を代わろうとは一度も思いませんでした。
アパートに戻ってから、車の横でお父さんにメッセージを送りました。のぞき込まれそうになって画面を伏せ、「また今度、ちゃんと話す」とごまかしたのは、我ながら下手なやり方でした。
送った文面はこうです。「今日、ハンドルには一度も触っていません。娘さんの運転で、海まで行ってきました」

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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