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木彫り作家キボリノコンノ×累計1500万部の絵本編集者が贈る初の赤ちゃん絵本『まーるちゃん ふ~』誕生の秘密とは?

  • 2026.11.2
cocreco撮影/日下部真紀

SNSでのバズをきっかけに、本物そっくりの木彫り作品で多くの人を魅了している木彫りアーティストのキボリノコンノさん。

全国各地で開催中の展覧会の延べ動員数は30万人を超え、小学校の読み聞かせで大人気の絵本『どっち?』(講談社)は7刷2万部に到達するなど、その人気は勢いを増すばかり。

そんなコンノさんが、待望の新作絵本『まーるちゃん ふ~』を出版。

編集を手がけたのは、『だるまさんが』(かがくいひろし著)、『りんごかもしれない』(ヨシタケシンスケ著)などの大ヒットを生み出してきた、沖本敦子さん。

数々のヒット作を手がけた編集者が惚れ込んだ、キボリノコンノさんのものづくりの原点、そして「のんびり自由」に見えて、実は徹底した効率主義を貫いているという、驚きの素顔とマインドに迫ります。

「こういうマインドの人が、絵本の世界を盛り上げてくれるはず!」

まーるちゃんが「ふー」っと息をふきかけると、かくっとさんは「ゆらーん」。

まーるちゃんが、口をとがらせて「ぷるぷるぷる」と息をふきかけると、かくっとさんは「ぶるぶるぶる」。

ふたりのやりとりは、どんどんエスカレートしていって……。

吸って、吐いて、笑って。

楽しんで読むうちに、いつのまにかたっぷり深呼吸できて、コミュニケーションやスキンシップを存分に楽しめる一冊です。

──まずは、新作絵本『まーるちゃん ふ~』の着想や、制作のきっかけから教えてください。

キボリノコンノ(以下、コンノ):この本は、最初に編集者の沖本さんからお声がけいただいたのがきっかけでした。

沖本敦子さん(以下、沖本):私は、当時たまたま英語の勉強で読んでいた読売新聞のインタビュー記事、ジャパンニュースで、キボリノコンノさんを知ったんです。

「作品で人の驚きや喜びを引き出すことで、コミュニケーションが生まれることが嬉しい」といったことを話されていて、「あ、かがくいひろしさんと同じことを言っている!」と嬉しくなって。

累計1000万部を超える赤ちゃん絵本「だるまさんシリーズ」を作ったかがくいさんは、絵本をコミュニケーション発生装置のように捉えていた方。

そんなかがくいさんと、キボリノコンノさんの創造性がリンクするように思えて。「こういうマインドの人が、絵本の世界に来てくれたら、絶対にいいことがある!」と直感して、すぐにご連絡しました。

コンノ:初めてお会いしたときは、どんな絵本を作るのかも決まっていなくて。カフェで「これからどんなことをやっていきたいですか?」と聞かれ、「これまでは木彫りで食べ物をそっくりに作って驚かせてきたけれど、今度は透明に見えるものを作ったり、硬い木が柔らかくねじれたり溶けたりする変化を面白く表現してみたい」とお話ししたんです。

沖本:その話を聞いて、親子のスキンシップやコミュニケーションを生む「赤ちゃん絵本」をコンノさんの感性で作ってもらったら、よいものができそう!と思いました。

コンノさんは「ものを作るのが得意」「先回りして調べずに、自力で作り方を発見するのが面白い」と生き生きと話されていて、未知のことにも果敢に取り組める方なんだなと。

「赤ちゃん絵本」「キャラクター」という新しい挑戦も楽しんでくれそうだなと思いました。

手を動かしながら、オリジナルの「かわいい」を発見していく

──そこから、主人公のまーるちゃんは、どのように生まれたのですか?

コンノ:「硬いものが柔らかくなる表現をしてみたい」ということで、先に「かくっとさん」というキャラクターのアイディアが生まれました。

赤ちゃん向けのファーストブックだからこそ、見慣れた丸や四角の積み木のような木材がキャラクターになっていたら、分かりやすいかなと。

それを沖本さんがおっしゃっていた「深呼吸」や「スキンシップ」というキーワードと結びつけて、誰かが「ふー」と息を吹きかけると、「かくっとさん」が曲がったり震えたりする掛け合いになったら楽しいかな、アイディアをふくらませていくうちに、まーるちゃんが生まれてきました。

ただ、実は「じゃあやりましょう!」となっても、具体的なデザインやラフがしっかり決まって制作を始めたわけではないんです。

cocreco『まーるちゃん ふ〜』制作風景(写真:著者提供)

──少し不安になりそうですね。

コンノ: 僕は「やっていればなんとかなるだろう」という気持ちで挑むタイプなんです(笑)。

絵で描いてもしっくりこなかったので、粘土でサンプルを作ってみたのですが、最初は全然かわいくなくて。

「大丈夫かな……」と思いながらも、実際に木を彫り始めてみると、「ここをこうしたらかわいくなるかも……なった!」みたいな感じで、その場その場でかわいらしさを発見しながら進めました。

沖本:仕上がりを細かく確認して進めるよりは、コンノさんがのびのび作るほうがうまくいきそうだなと思いました。

ご自身が創作を心から楽しんでいて、コンノさんなら「かわいい」を自分で見つけてかたちにしてくれるだろうと、信頼して。

キャラクターたちのサンプル写真は見せていただいていましたが、いざ撮影現場でまーるちゃんの実物を前にしたときは、「えええ! ちっちゃ!」と、びっくりして思わず声がでました(笑)。

cocreco『まーるちゃん ふ〜』制作風景(写真:著者提供)

コンノ:大きめのほうが彫りやすいのですが、あえて小さくしたのは、まーるちゃんたちを展覧会で展示することを想定していたからなんです。

子どもたちや、お母さんお父さんが、みんなでぎゅっと集まって「こんなふうになってるんだね」と、驚きとともに覗き込めるサイズにしたかったんです。

沖本:そこまで見越して制作するとは、さすがコンノさん。まーるちゃんは、コンノさんが発見したオリジナルのかわいさにあふれていますね。

作っている対象を、心から「かわいい」と思っている人が作るものは、やっぱりかわいいな~と思いました。

日々の育児と「対等な関係」がそのままかたちに

──撮影現場には、コンノさんのお子さんもいらっしゃって、たくさん遊ばれていたそうですね。実際の育児が絵本にも反映されているのでしょうか。

沖本:撮影の合間もお子さんと全力で遊ばれていて、コンノさんが普段されていることが、そのまま絵本に乗っかっているのだなと感じました。

コンノ:娘は3歳なのですが、僕は生まれる前からずっと、「子どもとは対等でありたい」と思っていました。自分が両親からそんなふうに育ててもらったから、今の自分がある。

この絵本でも、最初はかくっとさんがまーるちゃんのやることに、言ってみれば「付き合ってあげている」わけですが、終盤では想定外のことにかくっとさんが驚かされる場面があります。これは、僕自身がふだんの育児の中で子どもから受ける驚きや発見そのもの。

テーマとして「対等」を意識していたわけではありませんが、見返してみると、自然とそんな自分の実感が宿っているなと感じます。

cocreco撮影/日下部真紀

──実体験が入っているのですね。ご自身のベースにはどんな子ども時代や絵本との関係があったのでしょうか。

コンノ:うちは3人兄弟で、ゲームよりも図鑑で遊んだり、リビングでずっとみんなでしゃべっているような家庭でした。

絵本もストーリーを読むというよりは、ページをめくって好きなモチーフをサッと見つけて「とりっこ」する遊びをしたりして、いつも「みんなで一緒に楽しむこと」を中心に考えていました。

マンガなどは読んだことがなく、キャラクターもほとんど知らなくて……。人と関わることや、コミュニケーションを通して遊んでいました。

──コミュニケーションを大切にする姿勢には、そんな背景もあるのですね。

沖本:コンノさんは著者ですが、「関わる人、みんなで一緒に作ろう」というスタンスで、まったく壁を作らないんですよ。

コンノ:「自分のアイディアなんて大したことない」と思っているので、いろいろな人に会って発想を分けてもらうのが好きなんです。

人と人をつないで、そこで化学変化が起きるのを見るのもたまらなく楽しくて。最近も、浜松のうなぎパイの春華堂さんとヨックモックさんをつないでみたり(笑)。

自分が何かしたいというより、そこで良いことが起きたら、それが一番幸せなんです。

沖本:だからコンノさんの周りにはいつも、楽しげな輪が広がっているんですね。

cocreco撮影/日下部真紀

──アーティストや作家は繊細で、内向的な方が多いイメージがあったので意外な感じです。

コンノ:実は、僕は「自分はアーティスト」という意識があまりないんです。

僕のなかには「キボリノコンノさん」という別の人間がいて、彼が作ってくれたものを僕が面白くプロデュースしたい、そんな感覚がある気がします。

だから、「作るモード」に入った瞬間だけパーッと集中して、それ以外のときはあまり悩まないのかもしれません。

ふだんは徹底した効率主義! その分、制作には全集中

cocreco撮影/日下部真紀

──コンノさんには締め切りに追われて焦ったり、スケジュールでピリピリするイメージがありません。その余裕はどこから来るのでしょうか。

コンノ:作るのが早いこともありますが、実は僕は日常生活で「いかに効率よくするか、課題を解決してスムーズに進めるか」をずっと考えているんです。

子どものころのものづくりも、「家の棚を少し加工したら、もっと使いやすくなるんじゃないか」というところからスタートしていました。体感で時間を把握するのも得意なので、焦りがないのかもしれません。

──意外にも「効率主義」な一面があるのですね。

コンノ:市役所で働いた経験も僕にとっては大きな糧になりました。人生で絶対にならないと思っていたのが公務員だったのですが(笑)。

市役所には年齢も性別も求めるものも違う、さまざまな人が来ます。

そんな方たちと向き合うときは、こちらも軸を持って落ち着いていないと、相手にうまく伝わらない。とにかくたくさんの方にさまざまなサービスを提供しなければいけないという環境で、僕のマインドも変わっていきました。

今、いろいろな局面で焦らずに済むのは、このときの経験と、どんな状況でも効率よく進める段取り力が身についたからだと思っています。

──日常生活のムダを省く分、制作にたっぷりエネルギーや時間を使えるのですね。

コンノ:そうですね。集中するときは一気に集中します。「人を喜ばせたい、驚かせたい」という僕自身の原動力を一番大切にしています。

沖本:今回の『まーるちゃん ふ~』は、「納得いくものを、妥協せずに作る」というスタンスで取り組みました。ラフがフィックスした後も、最終段階でコンノさんが思いついたアイディアを反映して。

コンノさんが面白いと思った部分は、どんどん入れていきましょう、という方針で作り上げた絵本です。

コンノ:『まーるちゃん ふ~』は、家や保育園で、読む人によっていろんな楽しみ方をしてほしい作品です。

「こう読んでほしい」という正解はなく、余白は空けておきたいと思っています。この絵本を通じて、親子の間にたくさんの笑顔とコミュニケーションが生まれたら嬉しいですね。

──コンノさんとともに、編集者・沖本さんの想いもぎゅっと詰まった一冊です。後編では、大人気絵本『どっち?』の編集者・酒井友里さんを加えた三名の鼎談で、コンノさんのクリエーションや仕事術についてお届けします!

撮影/日下部真紀 ヘアメイク/本多遥香(ROI) 取材・文/小川聖子

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