1. トップ
  2. エピソード
  3. 「男なら奢って当然」と言った彼女→レジで店員が俺に差し出した1枚の領収書

「男なら奢って当然」と言った彼女→レジで店員が俺に差し出した1枚の領収書

  • 2026.11.3
ハウコレ

レジで財布を開きかけた俺に、店員さんは小さく首を振りました。差し出された1枚の紙を見て、後ろにいた彼女が手を伸ばしかけて…。

その日、店に着いて予約の名前を告げると、店員さんは窓際の席へ案内してくれました。付き合って3年の彼女が、珍しく自分で選んだ店です。メニューを開く前から、向かいの彼女はどこかそわそわして見えました。

メニューの前で返ってきた言葉

料理の値段を見て、思わず冗談が口をついて出たのです。
「今日は割り勘にしようかな」
付き合ってから、会計はずっと俺が持ってきました。彼女は毎回財布を出してくれますが、俺が首を振るのがいつもの流れです。
ところがその日の彼女は、メニューから顔を上げて、店員さんにも聞こえる声で言いました。
「男なら奢って当然」
近くにいた店員さんが、ちらりとこちらを見ました。3年間、彼女の口から一度も聞いたことのない言葉でした。
「冗談だって」
笑ってみせても、彼女は「ほんとに?」とだけ言って、またメニューに目を戻してしまいました。

いつもと違う彼女の様子

料理が運ばれてきても、彼女はあまり話しませんでした。ときどきレジのほうを見ているようで、彼女のグラスの水は、ほとんど減っていませんでした。
デザートの皿が下げられたころ、彼女が「お手洗い」と言って席を立ちました。戻ってくるまで、思ったより時間がかかっていたのです。
「そろそろ出ようか」
彼女が戻ってから声をかけて伝票を探しましたが、テーブルのどこにも見当たりません。店員さんに目で合図して、先にレジへ向かったのです。
財布を開きかけた俺を見て、レジの店員さんが小さく首を振りました。

レジで差し出された1枚の紙

「お会計は、いただいております」
店員さんはそう言って、1枚の領収書を俺に差し出しました。
受け取って見ると、宛名に書かれていたのは彼女の名前でした。日付は、3週間前でした。
「あ、それ」
後ろから来た彼女が、手を伸ばしかけて途中で止めました。
「男なら奢って当然」と言った彼女が、3週間も前にこの店の会計を済ませていた。頭の中で、どうしても話がつながりません。
彼女は俺の手の領収書を見たまま、店員さんに小さく頭を下げていました。

そして...

駅までの道、彼女はほとんど口を開きませんでした。改札の前で、ようやく彼女が言いました。
「家に着いたら、電話する」
改札を抜けていく彼女の背中は、一度もこちらを振り返りませんでした。
手の中の領収書は、折らずに財布のお札入れにはさんでおきました。
その夜、約束どおり彼女から電話がかかってきました。彼女は全部を話してくれて、聞き終えた俺の口から出たのは、この一言でした。
「言い方、ほかになかったの」
彼女はなぜ、あんな言葉を口にしたのか。そしてこの店の会計を、何のために先に済ませていたのでしょうか。

(20代男性・エンジニア)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ