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「俺に感謝しろ」と言った彼→祖母の家の座敷で「毎月、ありがとうね」と言われた私

  • 2026.11.1
ハウコレ

座敷で向かい合った祖母は、私の両手を包むように握りました。何度もお礼を言ってくれたのに、私にはその心当たりがまったくなくて…。

組み立て終わった棚の前で、同棲中の彼がドライバーを置きました。腕を組んで棚を眺めてから、得意げにこちらを振り向きました。そのあとに続いたのは、すっかり聞き慣れた彼の口ぐせでした。

棚の前で聞いた口ぐせ

「俺に感謝しろ」
彼は胸を張って、そう言いました。
ゴミ出しをしてくれた日も、電球を替えてくれた日も、最後には同じ言葉がついてきます。料理も洗濯もほとんど私がしているのに、と言いたいのをのみこむのが常でした。
少し前、玄関で彼が何かの伝票を書いていたことがあります。近づくと、彼はそれを2つ折りにしてポケットに入れました。
「仕事のやつ」とだけ言って、彼は部屋に戻っていったのです。
その週末、彼が改まった顔で言いました。
「ばあちゃんの家に、一緒に行ってほしい」
彼の祖母は、電車とバスを乗り継いで2時間ほどの町で、1人暮らしをしています。私が会うのは、そのときが初めてでした。

座敷で握られた両手

バス停から歩いて着いたのは、古い平屋の家でした。玄関の戸を開けた祖母は、彼より先に私の顔を見て、目を細めました。
「よく来てくれたねえ」
通された座敷には、お茶とお菓子がもう用意されていました。彼が手土産を渡す間も、祖母はずっと私のほうを見ていたのです。
お茶をひと口飲んだところで、祖母が座布団ごと私のそばへ寄ってきました。そして、私の両手を包むように握ったのです。
「毎月、ありがとうね」

心当たりのないお礼

何のことか分からず、私は彼のほうを見ました。彼は窓の外の庭に目を向けたまま、こちらを見ようとしません。
「この前の梨も、甘くてねえ。あなたが選んでくれたんでしょう」
祖母はうれしそうに続けました。梨を送った覚えなど、私にはありません。
「いえ、あの」
言いかけた私の手を、祖母はもう一度しっかりと握り直しました。
「あの子をよろしくね。本当に、あなたのおかげ」
彼は庭を見たまま、湯のみを口に運んでいるところでした。

そして...

帰りのバスで、彼は窓際の席に座り、しばらく外を眺めていました。私の膝の上には、祖母が持たせてくれた漬物の袋がのっています。
バスがしばらく走ったころ、彼はようやく口を開きました。私の知らなかったことを、1つずつ打ち明けていきます。全部を聞き終えて、私の口から出たのはこの一言でした。
「勝手に私の名前を使わないで」
「俺に感謝しろ」と言う彼の隣で、祖母に感謝されたのは私でした。彼はなぜ、私に黙って、私の名前を使っていたのでしょうか。

(20代女性・アパレル販売)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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