1. トップ
  2. エピソード
  3. 格好つけと思われても、俺がお釣りを募金箱に入れ続けた事情。高校時代のコンビニで女性に言われた一言

格好つけと思われても、俺がお釣りを募金箱に入れ続けた事情。高校時代のコンビニで女性に言われた一言

  • 2026.11.1
ハウコレ

お釣りの小銭を指でつまむと、手が自然にレジ横の箱へ向かいます。もう10年近く、ほとんど欠かさず続けてきた動きです。あの箱に入れているのは、ある人への返事です。その理由を、付き合って1年になる彼女には長い間話せずにいました。

足りなかった28円

高校2年の頃、部活の帰りにコンビニでスポーツドリンクとパンを買おうとしたことがありました。財布を開けると、28円足りません。レジの前で小銭を数え直していると、うしろに並んでいた年配の女性が、トレーに硬貨を置いてくれました。

「いいよ、今度困ってる人がいたら、その人にしてあげて」

慌てて返そうとしましたが、女性は笑って自分の会計を済ませ、店を出ていきました。名前も聞けないままです。

それから、困っている人に出会えたらと思って過ごしてみても、そんな場面はなかなか来ません。ある日、レジ横の募金箱がふと目に入り、受け取ったお釣りを入れてみたのが最初でした。会ったこともない誰かに回せる気がして、それ以来やめられなくなったのです。

「なんとなく」としか言えなかった

付き合い始めてしばらくした頃、財布をしまいながら、彼女に「それ、毎回入れてるよね」と聞かれました。本当は話してもよかったのだと思います。でも口に出したら、28円の話で恩返しを気取っているように聞こえる気がして、こう答えました。

「うん、なんとなく」

彼女はそれ以上、何も聞いてきませんでした。店員さんに会釈していたのも、お礼を言われたから返していただけ。それが彼女の目にどう映っていたかまでは、考えたこともありませんでした。

映画の帰りに言われた一言

映画の帰りに寄ったコンビニを出たところで、彼女が言いました。

「またいい人やってる」

格好つけだと思われていたのだと、そこで初めて気づきました。足を止めて振り返り、「そういうのじゃないよ」とだけ返しました。

「じゃあ何なの?」

彼女に聞き返されてコンビニの明かりに目をやると、28円を出してもらった日の店の様子が浮かんできました。話そうと口を開いたものの、ここで28円の話をしても、言い訳にしか聞こえない気がしました。

「今度ちゃんと話すから」

そう言って先に歩き出した俺が、少し情けなく思えました。

そして...

次のデートの帰りも、いつものようにお釣りを箱に入れました。レジの横で待つ彼女の顔を、まともに見られないまま。

話したのは、それから数週間後です。駅までの道で、28円の話を最後までしました。彼女は「最初からそう言ってくれたらよかったのに」とだけ言って、少し笑っていました。

今も、小銭は箱に入れています。あの一言を彼女から聞くことは、なくなりました。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ