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嘘をついて妻の実家に行かなかった俺→妻の実家で、俺がずっと面倒だったこと

  • 2026.11.2
ハウコレ

玄関で画面を向けた妻の前で、俺は片方の靴を脱いだまま足元を見ていました。大学の友人には笑って話せたことを、妻にはまだ一度も話していませんでした。

その数時間前、氷の鳴るグラスの向こうで、友人が箸を置きました。妻の実家に行かずに済んだ話を、俺が笑い話にした直後のことです。その日、俺がいるはずだったのは、この居酒屋ではありませんでした。

妻の実家で、俺が面倒だったこと

結婚して3年。連休が来るたび、妻は俺の実家へ来て、母と並んで台所に立ってくれました。不満を聞いたことは一度もありません。

俺のほうは、妻の実家に行くのが面倒でした。

義父には敬語で話し、義母に仕事のことを聞かれれば、きちんと答えなければなりませんでした。親戚が来れば名前を覚え直し、笑顔であいさつを繰り返しました。

妻の家族が嫌いなわけではありません。自分の家なら寝転がれるのに、あの家では姿勢を正していなければならない。それがわずらわしかっただけです。

前回は相づちも省き、スマホを触って時間をやり過ごしました。帰りの電車では目を閉じて寝たふりをし、家に着くころにはぐったりしていました。

「仕事」と言ってしまった日

帰省が近づくと、義父と何を話すかを考えるだけで気が重くなりました。

前日、台所で皿を洗う妻の背中に言いました。

「ごめん、明日は仕事になった」

少し間があって、妻は答えました。

「……分かった。お母さんには言っとく」

休日出勤なら、責められない。そう計算していました。

当日、俺は大学の友人たちといつも集まる繁華街の居酒屋にいました。敬語もいらず、話したいことだけを話せる場所です。2杯目が空いたころ、「仕事」の中身を笑って話すと、友人の1人が箸を置いてこちらを見ました。

「奥さんには話したの?」

俺はグラスを置き、首を横に振りました。妻とGPSで位置を共有していることも、頭から抜けていました。

玄関で、片方の靴を脱いだまま

家に着くと、妻はもう帰っていました。靴を脱ぎかけたところで、妻がスマホの画面をこちらに向けました。

「ここにいたよね」

画面を見てから、俺はバッグを玄関の床に置きました。

「……大学の友達と飲んでた」

妻は画面を向けたまま聞きました。

「なんで仕事って嘘ついたの」

俺は足元のタイルを見たまま、言い訳を探しました。気を遣いたくなかったと言えば、妻の家族を悪く言うように聞こえる気がしたのです。

妻は続けました。

「私は毎回、あなたの実家に行ってるよね」

母と並んで台所に立つ妻の背中を思い出しました。タイルから目を離し、俺は答えました。

「……ごめん。ちゃんと話す」

そして...

ダイニングへ行くと、妻はタッパーを冷蔵庫にしまい終え、椅子に座ったところでした。俺も向かいの椅子を引き、口を開きかけました。

その前に、妻は冷蔵庫からタッパーを出してテーブルに置きました。蓋には義母の字で、俺の名前が書いてありました。

「お母さんには、自分で言って」

それだけ言って、妻は寝室へ入っていきました。

お義母さんに電話かけるか。そう思って番号を開いても、電話1本かけるのさえ面倒でした。その面倒を、妻は連休のたびに俺の実家で引き受けてきました。

発信ボタンを押し、仕事ではなかったことを義母に謝りました。電話を切ったら、妻にも本当のことを話すつもりです。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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