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【不登校に悩むパパママへ】全員を「えこひいき」ならいい 横浜の私立中学の答え

  • 2026.10.30
cocrecoキャンプ実習では、縦割りグループで課題に取り組み、3年生がリーダーを務める場面も。初めてかかわる仲間とも協力しながら、達成感を味わう大切な体験の場となっている。 写真提供:星槎中学校

「学校がつらい」と感じる子どもたちの学びの場として、全国に広がる「学びの多様化学校」。2026年4月時点で全国84校となり、そのうち私立学校は25校にのぼります。

今回紹介する神奈川県横浜市の星槎中学校は、2005年に私立校として最も早く「不登校特例校」の指定を受け、現在は「学びの多様化学校」(2023年より)として子どもたちを支えています。

創設者の「一人ひとりにえこひいき」という理念のもと、子どもたちの小さなサインを見逃さない温かい関わりの現場を、副校長の佐藤由加子先生のお話とともにお届けします。

「全員をえこひいきする」とは?

──星槎中学校は、不登校特例校として私立校で最も早く、2005年に指定を受けていますが、まずそのあたりからお聞かせください。

佐藤由加子副校長(以下、佐藤先生):もともと星槎グループは、既存の学校になじめなかった2人の生徒に向き合う学びの場から始まりました。私は、星槎中学校の前身である民間のフリースクール時代からかかわっており、もう30年近くになります。その後、2005年に不登校特例校として星槎中学校が開校し、2023年に「学びの多様化学校」へと名称が変わりました。

星槎グループ全体では、「人を認める」「人を排除しない」「仲間を作る」という3つの約束を掲げており、その精神をさらに体現した言葉が、創設者・宮澤保夫名誉会長の「一人ひとりにえこひいき」です。

cocreco星槎中学校の副校長の佐藤由加子先生。前身のフリースクール時代から約30年、子どもたちに寄り添い続けている。 写真提供:星槎中学校

佐藤先生:えこひいきというと、あまり良い意味には聞こえませんよね。私もそうでした。しかし、誰かを特別扱いするのではなく、全員に目をかけて、一人ひとりを大切にすればいいのだと教えてもらい、「なるほど、そうした向き合い方があるのか」と知ったのです。

まずは、「この子はどんな子なのか」を知ること。なかには悩みや困りごとがあっても「大丈夫です」と言ってしまう子もいます。それでも、実際には何かあるんじゃないか、と。小さなサインも見逃したくない。それは、一人ひとりに寄り添っていなければできないことだと思っています。

1対1の関わりが25通りあるホームルームの工夫

──それを実践するには、子どもたちを丁寧に見る体制が必要ですね。

佐藤先生:そうですね。星槎中学校のホームルームは1クラス25名前後です。クラスには担任と副担任がいて、担任が前で話しているときには、教室の後ろに必ず副担任がいます。後ろから子どもたちの様子を見て、必要に応じて声をかけられるようにしています。

基本的には毎日登校している生徒が多いですが、毎日来ることがすべてだとは思っていません。週1回で精いっぱいの子、午後からなら来られる子、オンラインで授業を受ける子もいます。

cocrecoホームルームの様子。担任・副担任が連携しながら生徒一人ひとりを見守っている。 写真提供:星槎中学校

佐藤先生:学校に足が向かわない理由も一人ひとり違います。たとえば、前日に友だちとけんかをして、翌日顔を合わせるのがつらいという子もいます。

そういうとき、1日休んで調整をしたほうがいい子もいれば、1日休むと行きづらくなってしまう子もいる。だから、「午後からおいでよ」「放課後だけでもおいでよ」と声をかけることもあります。

保護者の方から「今日は17時からなら行けそうです」と連絡があれば、その情報を教員同士で共有し、担任やその子が会えそうな先生が対応します。時間があればワークシートを一緒に解くこともあります。「学校に来て、先生と話せた」。これだけでもその子にとっては、大きな一歩ですから。

学習サポートと人とつながる練習

──学習面では、どのようなサポートがありますか。

佐藤先生:ホームルームとは別に、教科ごとの習熟度別のクラスがあります。たとえば国語では、得意な子もいれば、読み書きが苦手な子もいるため、理解度に合わせて5つのクラスに分かれています。

数学も同じで、得意な子は中学2年生でも高校の内容に少し触れることがあります。一方で、数の理解が難しい子は、小学校低学年の内容からやり直すこともあります。

多くの生徒は、3年間で自信をつけて星槎高等学校に進みますが、中には外部の高校を目指す子もいます。その場合は、学校だけでなく家庭教師や塾などの力も借りながら、次のステップに向けて進んでいきます。

cocreco答案返却の時間。模範解答を見ながら、自分の目標への取り組みを振り返る生徒たち。 写真提供:星槎中学校

「先生にインタビュー」で練習! 学校生活の中で人とつながる楽しさを学ぶ

──星槎中学校には「個別指導計画」がありますが、これはどのようなものなのでしょうか。

佐藤先生:個別指導計画は、心理検査の結果や保護者の方の意見も反映しながら、対人面、生活面、学習面について、一人ひとりの目標を設定するものです。

星槎中学校では、人とのかかわり方を目標にすることも多くあります。例えば、「友だちになりたいけれど、どう話しかけていいかわからない」など。

そういうときは、教員がファシリテーターとして入り、少人数で話す場を設定します。「今日は体育祭について話してみよう」とテーマを決めて、「何の種目に出るの?」「僕はこれに出るよ」など、実際に会話をしていくのです。

そのあとで、「今日は○○さんと話せた」「恥ずかしくて話せなかった」「次はもう少し頑張りたい」と振り返ります。会話を始めること、続けること、相手の反応を受け取ること。そうした人とのかかわり方を、学校生活の中で少しずつ練習できるのが、星槎中学校の特徴だと思います。

cocreco星槎高校グラウンドにて実施された体育祭の様子。学年やクラスを超えて協力し合う時間も大切な学びの一つ。 写真提供:星槎中学校

──先生へのインタビューの取り組みもあると伺いました。

佐藤先生:はい、あまり話したことのない先生に、自分で質問を考えてインタビューをする取り組みです。

最初は「好きな食べ物は何ですか?」「お寿司です」「では次の質問です」と、矢継ぎ早に進んでしまう子も多いのですが、「ちょっと待って。お寿司ならネタがあるでしょう、そこを聞いて」と伝えると、「好きなネタを3つ教えてください」と聞けるようになっていきます。

すると「好きなネタはマグロかな」「うちのお父さんもマグロが好きです!」と、会話が思わぬ方向に広がっていく。そういう経験を通して、「人とかかわるって楽しいんだな」「話をしても大丈夫なんだ」と感じてほしいと思っています。

cocrecoSEISA Africa・Asia Bridge(星槎グループの学校の生徒・学生や世界中の人が参加する国際交流学習イベント)での生徒会発表。人とかかわる経験を重ねることが、人前で自分の考えを伝える挑戦や自信につながっていく。 写真提供:星槎中学校

小さな頑張りも先生みんなで共有! 「ほめチャット」が起こす笑顔の循環

──一人ひとりを見るためには、先生同士の情報共有も大切になりそうです。どのような工夫をされているのでしょうか。

佐藤先生:星槎中学校には「ほめチャット」というものがあります。生徒が何かいいことをしたときに、教員のグループチャットで「○○さんがこんなことをしていました」「率先して掃除をしていました」と共有するんです。

そして、私自身もできるだけその生徒を探しに行って、「聞いたよ」「助かったよ、ありがとう」と本人に返すようにしています。「なんで副校長先生が知っているの?」と驚く子もいますが、見えないところでの頑張りを誰かが見てくれていたとわかることは、子どもにとって大きいと思います。

cocreco大掃除に取り組む生徒たち。日常の小さな頑張りも、先生たちで共有している。 写真提供:星槎中学校

親が元気になれば子どもも元気に、笑顔の循環

──子どもたちの変化は、保護者にも影響がありそうですね。

佐藤先生:そうですね。最初の保護者会で、これまでの思いを涙ながらに話される方もいます。

家では、どうしても困っているところや課題が目につきやすいと思います。でも学校では、「こんなことを頑張っていましたよ」「こんないいところがありましたよ」と伝えられることがあります。そうしたお子さんのエピソードは、できるだけ保護者の方にもお伝えしています。

月に1回、保護者会をしているのですが、この日を楽しみにされている方が多いのも、そうした理由からかもしれません。保護者の方が元気になると、お子さんも元気になる。お子さんが元気になると、保護者の方も元気になる。笑顔の循環を、もっと増やしていけたらいいですね。

cocrecoキャンプ実習での水鉄砲を使った川遊びの様子。教室を離れた体験活動は、子どもたちが一歩成長するきっかけになる。 写真提供:星槎中学校

──現在、学校に行きづらいお子さんを持つ保護者の方へ、伝えたいことはありますか。

佐藤先生:子どもたちだけでなく、保護者の方にも元気になってほしい。この思いは、30年経った今も変わりません。星槎中学校でのかかわりや、いろいろな先生からの声かけが、その親子にとって少しでも前に進むきっかけになればと思っています。

───◆───◆───星槎中学校では、子どもたち一人ひとりの課題だけでなく、その子の良さや小さな成長を見つけ、本人や保護者に伝えることが大切にされていました。

「全員をえこひいきする」──。その言葉どおり、一人ひとりへの温かい眼差しが、学校全体に前向きな空気を生み出しているのだと、取材を通して伝わってきました。

取材・文/山田優子

cocreco写真提供:星槎中学校

星槎中学校

住所:神奈川県横浜市緑区霧が丘6丁目13番地

電話:045-442-8687

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