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「アートウィーク東京2026」の特別企画「AWT FOCUS」。10組のキュレーターが語る展覧会づくりの舞台裏

  • 2026.10.31
photo: YEZOI HWANG, COURTESY MISA SHIN GALLERY

Jaemin Shin
シン・ジェミン
: 韓国を拠点に活動するインディペンデントキュレーター。ソウルにあるクリエイティブスペース「the WilloW」を主宰。

「一番の喜びは、作品を通じてアーティストの世界と深くかかわることによって、私自身の境界が広がっていく感覚です。キュレーションの根本は他者との出会いであり、一方的に何かを教え込むような姿勢を避け、作品と観客の主体的な関係を橋渡しすることだと考えています。テキストや図像への関心がこうした空間づくりの基盤となっていて、意味を固定せず、関係性のなかで常に開かれた展覧会を構成しています」

Jaemin Shin Curates
「青柳菜摘:有り得べき言葉、有り得べき世界」▶気鋭のマルチメディアアーティストで詩人の青柳菜摘による個展。「関係性」のあり方を問う自身の短編小説をもとに構成されたビデオインスタレーション《関係名デモンストレーション》やサウンドアーティストの細井美裕との共同制作作品を展示予定。

(東京都港区南麻布 3-9-11 パインコーストハイツ 1F)

青柳菜摘《関係名デモンストレーション》(2025) Photo: Minji Yi


photo: COURTESY MISAKO & ROSEN

Julie Boukobza
ジュリー・ブクブザ
: パリ拠点のインディペンデントキュレーター、美術批評家。リュマ・アルルのレジデンス・プログラム責任者。

「アーティストとの、一生続く友情。アーティストからの贈り物。アーティストが語ってくれる人生相談──順に、恋愛、セックス、部屋づくり、本、音楽と映画のおすすめ、子育て、健康とスキンケアとジム通い、ファッション、料理のレシピ、ほかにもいろいろ。そして、アーティストがまた一緒に仕事をしようと言ってくれること。何度も、何度も」

Julie Boukobza Curates
「エリカ・ヴェルズッティ:彫刻の肖像」▶身近なモチーフと抽象表現を織り交ぜた創作を行う、ブラジル出身のエリカ・ヴェルズッティの個展。彫刻とドローイングの関係、制作過程におけるイメージの生成、そして彫刻が持つ肖像性を探る。

(東京都豊島区北大塚3-27-6 1F)

エリカ・ヴェルズッティ《Sculptures Last Night》(2025) Courtesy the artist and Fortes D’Aloia & Gabriel, São Paulo/Rio de Janeiro
photo: COURTESY SPACE UN

Ekow Eshun
エコウ・エシュン: イギリスを拠点に活動するインディペンデントキュレーター、執筆家。

「キュレーションとは、アーティストとアイデアと観客のあいだに、意味のある出会いをつくることだと思っています。私の場合、出発点になるのは作品のリストではなく、たいてい一つの問いや提案です。作品同士、歴史、文化のかたちを超えたつながりを探しながら、それでもアーティストそれぞれの視点は別々のものとして残るようにする。結局のところ、キュレーションは発見へ向かう道だと思っています。新しい見方、新しいあり方に触れるための、新しい世界へ続く道です」

Ekow Eshun Curates
「ジュリアンノックス:How Much Light Must I Consume?」▶シエラレオネ出身の気鋭のアーティスト、ジュリアンノックス(Julianknxx)による日本初個展。詩や写真、映像を組み合わせ、アフリカとディアスポラの歴史をたどる。

(東京都港区南青山2-4-9 KLO南青山ビル1F)

ジュリアンノックス《What Colours Can We Dream in This Night Filled with Salt?》(2025) © Levi Fanan, Courtesy Fundação Bienal de São Paulo
photo: ALLISON V. SMITH, COURTESY SHIBUNKAKU

Jeremy Strick
ジェレミー・ストリック: 美術館ディレクター。ロサンゼルス現代美術館(MOCA)や米国ダラスのナッシャー彫刻センターの館長を歴任。

「まずは作品に向き合い、アーティストたちの声を聞く。問いを立て、仮説を検証し、考えてはまた考え直す。これらが私の土台です。自分の役割は、アーティストたちの思考と手から生まれたものをギャラリーの壁面へと翻訳する仲介者になることだと思っています。その一方で、一番喜びを感じるのは、そんな私の仲介の痕跡をまったく感じさせないほどのダイレクトさと力強さをもって、作品が鑑賞者の目の前に現れる瞬間です」

Jeremy Strick Curates
「メアリー・ウェザーフォード:Komorebi」▶メアリー・ウェザーフォードの日本初の個展。彼女の代名詞でもあるネオン管を用いた作品のほか、雁皮紙を用いて制作された近年の連作などを通じて、詩的な表現を紹介する。

(東京都中央区銀座5-3-12 壹番館ビルディング)

メアリー・ウェザーフォード《Summer Sounds》(2024) Photo: Frederik Nilsen, Courtesy Shibunkaku
photo: COURTESY MUJIN-TO PRODUCTION

Greg Dvorak & Kenji Ono
グレッグ・ドボルザーク
: 早稲田大学国際学術院教授。
小野賢
: インディペンデントキュレーター。

「何よりも大切にしているのは、アーティストとその奥にある意図です。並んだ作品同士につながりを持たせ、幾とおりにも読み解けるような繊細な物語を紡ぐことを目指しています。あらかじめ決めた枠に作品をはめ込むのではなく、アーティスト、観客、社会問題、場所のあいだの糸に気づき、複雑な対話を広げます。約束や矛盾、欠落を含む日本国憲法というテーマは、私たちが権力の歴史に批評的に向き合いつつ、新たな思考に開かれたままでいられる特異な枠組みを与えてくれました」

Greg Dvorak & Kenji Ono Curate
「日本国憲法展 2026」▶2023年から続く「日本国憲法展」の2026年版。今年は呉夏枝や高田冬彦、藤元敬二、MESなどさまざまな分野で活動するアーティストたちの作品と条文を組み合わせ、戦後民主主義の意味を今日の現実から問い直す。

(東京都墨田区江東橋5-10-5)

「日本国憲法展 2024」展示風景(2024) photo: COURTESY MUJIN-TO PRODUCTION
photo: COURTESY SCAI THE BATHHOUSE

Martin Clark
マーティン・クラーク: キュレーター、ライター。カムデン・アート・センター(ロンドン)のディレクター。

「キュレーターの役割は決して一つに定まりません。私が編集者やプロデューサー、共同制作者のようになることもあれば、作品が世に出る前、誰よりも先に批評的な観客としてそれを受け止めることもあります。私の指針は、作品を深く読み解く厳しさと、柔軟に受け入れる姿勢をあわせ持つ“批評的な好奇心”です。それはアーティストや作品に応じて常に変化します。要するに、作品と出合うための最良の条件をどう生み出すかということであり、毎回ゼロから考え直すべきものです」

Martin Clark Curates
「土屋信子:ハートのA」▶グラスファイバーや毛皮、金属、シリコン、廃材など異なる素材の特性を生かしながら、さまざまなスケールで繊細かつ挑戦的な立体作品を生み出す土屋信子。元銭湯というギャラリー空間を生かし、サイトスペシフィックな展示を展開する。

(東京都台東区谷中 6-1-23 柏湯跡)

土屋信子「Stay as a Wave」展示風景(2023) Photo: Nobutada Omote, Courtesy SCAI THE BATHHOUSE
photo: COURTESY XYZ COLLECTIVE

Olivier Mignon
オリヴィエ・ミニョン
: 日本を拠点とするベルギー人キュレーター。金沢のプロジェクトスペース「Keijiban」主宰。

「 私は自分のことを、キュレーターというよりはパブリッシャー(出版者)だと考えています。そのため、展覧会に対するアプローチも本に対するアプローチと同じです。アーティストの作品を、スタジオというプライベートな空間から──あるいは頭の中という、その人の内にある場所から──公共の場へ運び出し、できるかぎり明晰で、それでいて汲みつくせない形を与える。そういう仕事だと考えています」

Olivier Mignon Curates
「増塩太朗、ソフィー・ニス」▶クィアの身体性や視線の政治学をテーマに制作する写真家の増塩太朗と、言葉とモノの関係性を探求した彫刻を生み出すソフィー・ニスの二人展。身体・イメージ・言語のあいだに存在する関係性を考察する。

(東京都豊島区巣鴨 2-13-4-B02)

ソフィー・ニス《If Nature Didn’t, Warner’s Will》(2012) Courtesy Galerie Greta Meert, Brussels
photo: YASUHIDE KUGE, COURTESY WAITINGROOM

Multiple Spirits
マルスピ: キュレーターの丸山美佳とアーティストで俳優の遠藤麻衣が設立したクィアフェミニストコレクティブ。

「私たちのキュレーションは、クィアやアナーカ・フェミニズム的な編集作業を土台とし、多様な声や営みを編み合わせるものです。普段は交わることのない文脈や歴史を結びつけ、その絡み合いを可視化して権力構造を解体していくことに、私たちは大きなエネルギーを感じています。自分たちはこれを、蔓(つる)のようなアーカイブと呼んでいます。さまざまな活動が交差し、影響を与え合い、枝分かれしながら変化し続ける集合体なのです」

Multiple Spirits Curates
「逆立つ翼のパッチワーク」▶クィアフェミニストコレクティブ「Multiple Spirits(マルスピ)」が手がけるグループ展。現代のZINEや出版文化、近代制度以前から存在してきた多様なコミュニケーションのなかに、知の生成と共有の系譜をたどる。

(東京都文京区水道2-14-2 長島ビル1F)

Multiple Spirits《ダンジョンは生ける光の陰影へ》(2025)。2025~26年、森美術館で開催された「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去るわたしたちは永遠」の展示風景から。 Photo: Takashi Fujikawa
photo: SCHWARTZMAN&, COURTESY YUTAKA KIKUTAKE GALLERY

Augusto Arbizo
アウグスト・アルビゾ
: ニューヨークを拠点とするシュワルツマン&のキュレーター兼アドバイザー。

「この仕事をするなかでもっともやりがいを感じるのは、世代を超えた対話を生み出すことです。異なる時代や背景を持ちながら、似たアイデアや感覚を探求するアーティストたちを引き合わせる。その思いがけないつながりを探すことこそが私のキュレーションの指針であり、見つかった瞬間はいつも胸が躍ります。多くの意味で、それは旅のように感じられます。時間と地理的な境界を飛び越え、新しい視点を発見する旅なのです」

Augusto Arbizo Curates
「THE QUIET」▶国内外のアーティストの作品を通じて、絵画における余白、沈黙、抑制された表現の可能性を考察するグループ展。絶えずイメージが流通する現代において、立ち止まり、注意深く見ることの価値を問いかける。

(東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 3F)

グレゴリー・オリンピオ《Le Plancher des Vaches》(2025) © Gregory Olympio, Courtesy the artist and blank projects, Cape Town


photo: cOURTESY TAKE NINAGAWA

Maria Brewińska
マリア・ブレヴィンスカ
: キュレーター、美術史家。ポーランドのザヘンタ国立美術館の元学芸員。

「一番満たされるのは、誠実さと信頼に基づく本物の関係を築けたとき。優れた人々やアイデアがあふれるアート界にも、野心や競争、権力濫用が渦巻いています。だからこそ芸術を理由に他者への責任は免れないと痛感します。私の役割は、アーティストが力を出し切り、その作品が思いがけない形で観客に届く環境を整えること。展覧会の価値は話題性ではなく、一人にでも消えない何かを残せたかで決まります。新しい価値を直観で探り当てますが、最近は心から満たされる瞬間は稀です」

Maria Brewińska Curates
「鴨治晃次:Everyday Life」▶1959年にポーランドへ移住し、戦後アヴァンギャルド芸術を語るうえで欠かせない存在となった鴨治晃次。90歳を超えてもなお活躍する彼の静謐な作品世界を通じて、日常、歴史、個人的記憶が交差する場を提示する。

(東京都港区東麻布2-14-8)

鴨治晃次《静物 / Still Life No. 10》(2022) Photo: Kei Okano, © Koji Kamoji, Courtesy Take Ninagawa

▶11/4~11/8、東京の現代アートの創造性と多様性を国内外に発信する現代アートの祭典。都内56の美術館やギャラリーがそれぞれに開催する展覧会のほか、映像プログラムやトークセッション、子ども向けのワークショップ、ポップアップバーなどAWT独自のプログラムも。移動には、各会場をつなぐ乗り降り自由の無料シャトルバス「AWT BUS」を利用したい。特別展「AWT FOCUS」では、都内10カ所のギャラリーとアートスペースがそれぞれ国内外で活躍するキュレーターを迎え、独自の展覧会を開催する。

From Harper's BAZAAR art no.6

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