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親友に「やっぱり今度でいい」と言った私→上の空だった2カ月間の事情

  • 2026.11.1
ハウコレ

改札の前で「あのさ、」と言いかけたまま、私はその日も続きを飲み込みました。

その少し前、カフェでスマホを裏返す直前に見えた通知は、不動産会社からの内見の案内でした。向かいの席では、親友が首をかしげていました。

言い出せないまま過ぎた2カ月

親友とは高校からの付き合いで、駅前のいつものカフェで月に2回ほど会ってきました。

2カ月前、九州の支社への異動の内示を受けたのです。迷った末に引き受け、来月には向こうへ移ることになっていました。

いちばん先に伝えたかった親友にこそ、会うたびに言い出せないままでした。口に出した瞬間、それが本当に決まったことになる気がしたのです。

会っている間も、どう切り出すかばかり考え、不動産会社からの連絡が気になってスマホを何度も確認していました。「ごめん、もう1回言って」と聞き返す回数が増えていることにも、自分で気づいていたのです。

大事な報告まで聞き逃して

その日、親友が話していたのは、半年かけて準備した企画のこと。

「それでね、結局その企画、通ったんだ」

「そうなんだ、残念だったね」

そう返したのは、引っ越しの日程を考えている途中でした。親友がすぐに言い直します。

「通ったんだってば」

「あ、ごめん。よかったね」

慌てて笑いながら、結果すら聞けていなかったと気づきました。少しして、親友が聞いてきます。

「ねえ、最近私の話、つまんない?」

「そんなことないよ」

本当にそう思っていたから、迷いのない返事だったはずです。直後にスマホが光り、返信は後回しにして画面を裏返しました。

親友がそれ以上聞いてこないことに、ほっとしていました。

改札で言いかけた続き

店を出て改札まで歩く間、次に会う日の話はどちらからも出ませんでした。来月になれば、ここで会う約束はもうできなくなる。それが頭から離れませんでした。

改札の手前で足を止めて、今度こそ言おうと思いました。

「あのさ、」

けれど、こちらを見ている親友の顔を見たら、さっき聞かれたことを思い出しました。今ここで異動の話をしたら、最近上の空だった理由まで一度に突きつけるような気がしました。

「やっぱり今度でいい」

振り返ったら引き返せなくなりそうで、そのままホームへ向かいました。

帰りの電車で、事情を全部書いたメッセージを打っては消しました。数日後にようやく送ったのは、肝心なことを何も書いていない1通です。

「次会うとき、ちょっと話したいことがある」

「わかった」とだけ返ってきました。

そして...

次に会った日、いつものカフェで、内示のことから順番に話しました。来月には九州へ移ること、ずっと言い出せなかったこと。

親友はアイスコーヒーのストローを長い間回してから、口を開きました。

「九州かあ。遠いね」

「うん」

私がうなずくと、親友は窓に目を向けました。

「ここで月に2回会うの、当たり前だと思ってた。寂しくなるな」

親友は少し間をあけて続けました。

「ずっと、私の話がつまんないのかと思ってた」

親友がずっとそう考えていたとは、思っていませんでした。謝ると、少し笑った親友からこんな返事。

「じゃあ、引っ越すまでにあの企画の話、最初から聞いてね」

上の空だった2カ月分を取り戻すように、その日はスマホをバッグにしまったまま、企画の話を最初から聞きました。

(20代女性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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