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暗記にぴったりの「思い出す勉強法」とは? 「何度読んでも覚えられない」を解決

  • 2026.10.30
cocreco写真:beauty_box/イメージマート

中学受験の勉強法で、「教科書を何度も読んでいるのに、テストになると解けない……」。お子さんがそんな悩みを抱えていませんか?

「わかったつもり」を放置すると、受験本番で実力を発揮できません。

「世界で最も影響力のある研究者トップ2%」に選出された大阪公立大学教授・波場直之先生は、記憶の定着には「思い出す」プロセスが大切だと言います。

今回は、今日から家庭でできる「リトリーバル(想起)」の実践法を波場先生に解説してもらいました。

波場 直之(はば・なおゆき)

大阪公立大学大学院理学研究科教授。大阪大学理学部卒業、名古屋大学大学院理学研究科博士課程修了。専門は素粒子物理学、素粒子論的宇宙論。スタンフォード大学の研究チームが引用データに基づいて発表する「世界で最も影響力のある研究者トップ2%」2025年版・2026年版に2年連続選出。

【勉強法】「読むだけ」より「思い出す」ほうが記憶に定着する理由

受験勉強では、教科書や参考書を何度も読み返したり、大事なところにマーカーを引いたりする人が多いと思います。

もちろん、それ自体が無意味なわけではありません。ただ、長期的に記憶を残すという点では、「もう一度読む」より「何も見ずに思い出す」ほうが効果的だと示す研究があります。

心理学者のヘンリー・ローディガーとジェフリー・カーピキーは、学生に文章を読ませた後、「もう一度読み直す」条件と、「何も見ずに内容を思い出す」条件を比べました。

学習直後のテストでは、読み直した側の成績がよい場合があります。ところが2日後や1週間後にテストすると結果が逆転し、思い出す練習をした側のほうが内容をよく覚えていました。

その背景の一つとして考えられるのが、「わかったつもり」です。

何度も読むと、文章に見覚えが出て、すらすら読めるようになります。すると「わかった」「覚えた」と感じやすくなります。でも、すらすら読めることと、自力で答えを取り出せることは別です。

入試本番で必要なのは、教科書を見て「ああ、これ知っている」と思う力ではありません。何も見ずに、必要な知識を引き出す力です。だからこそ、普段から「思い出す」練習、心理学でいう「リトリーバル(想起)」をしておくことが大切です。

cocreco写真:graphica/イメージマート

わかったつもりを防ぐ! 脳に負荷をかける「思い出す勉強」の効果

教科書を眺めているだけなら、情報は目の前をすらすら通っていきます。負荷が少ないので、勉強した気にもなりやすい。一方で、本を閉じて「何が書いてあった?」と思い出そうとすると、頭に負荷がかかります。

この「思い出そうとして悩む時間」には意味があります。思い出すのに苦労したうえで正しく思い出せたときのほうが、あとまで記憶に残りやすいことが、心理学の研究で報告されています。

cocreco写真:beauty_box/イメージマート

記憶に残すには、ただ情報をインプットするだけでなく、自分の頭から取り出すアウトプットも効果的です。

「思い出せない」という感覚も失敗ではありません。むしろ、どこを覚えていないのかがわかるので、次に復習すべき場所がはっきりします。

【実践編】家庭で今日からできる「思い出す勉強」3つのコツ

特別な教材は必要ありません。今日から家庭で簡単にできます。

一つ目は、参考書を読んだら閉じて、白紙に「何が書いてあったか」を書き出すことです。書けなかった部分だけをもう一度確認すれば、復習する場所も絞れます。

二つ目は、「先生になって説明する」ことです。「今日習ったことを3分で教えて」と家族が聞くだけでもかまいません。説明しようとすると、自分が本当に理解しているところと、あいまいなところが見えてきます。

三つ目は、小さなクイズです。「さっき出てきた歴史上の人物、誰だった?」「この漢字、どう読む?」と、食事中や移動中に軽く聞いてみます。「えーっと……」と思い出そうとする、その数秒も立派な想起の練習です。

ただし、親が次々と問題を出して“抜き打ちテスト”のようにしてしまうと、子どもが嫌になってしまうこともあります。あくまでゲーム感覚で、短く楽しむくらいがよいでしょう。

波場先生も実践! 寝る前にできる「思い出す練習」

私自身も、日常的に「思い出す練習」をしています。

夜、布団に入ったら、その日に勉強した新しい理論の内容を、何も見ずに自分の言葉で思い出し、頭の中で誰かに説明してみます。途中で説明できなくなったところは「ここは理解が足りていない」とわかるので、翌朝もう一度確認します。

以前、中学生の息子と「世界の砂漠の名前」で記憶競争をしたことがあります。初めの頃は負けてばかりでした。そこで、夜、布団の中で「オーストラリアのあの砂漠の名前、なんだったかなあ。グレート……ビクトリア砂漠だったかなあ」と思い出しながら寝ることにしました。

翌朝確かめて、間違っていたら覚え直し、また夜に同じように思い出します。私の場合、どんなことでも、これを3回くらい繰り返すと覚えてしまいます。研究の難しい勉強でも、まったく同じやり方をしています。

もちろん、これは私一人の体験で、効果の証拠ではありません。ただ、何も見ずに思い出してから答えを確かめるこのやり方は、最初に紹介した研究でいう「思い出す練習」にあたります。

勉強というと、机に向かって新しい知識を「インプット」することばかり考えがちです。でも、覚えたことを長く使える知識にするには、「アウトプット」の練習も大切です。

参考書を閉じて1分だけ思い出す。今日覚えたことを家族に説明してみる。寝る前に、自分の言葉で思い出してみる。まずは、そんな小さな「思い出す時間」から始めてみてはいかがでしょうか。

───◆─────◆───覚えるために、あえて「思い出す」。いつもの勉強に、自分の頭から「取り出す」練習をぜひ取り入れてみてください。

次回2回目は、受験期につい陥りがちな「他人との比較」について、科学や物理学の視点から考えます。

文/波場直之

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