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【不登校】の選択肢 「横浜きりん学園」学校に行きづらさを感じていた子どもたちが自発的に行動! 子どもが変わる理由

  • 2026.10.29
cocreco夏休みの登校日、農園「トコミドリ」のヤギへのエサやりの様子。

不登校を経験した子どもたちが、自分のペースで学びや人との関わりを取り戻していく場として、全国に広がる「学びの多様化学校」。2026年度には全国で25校の「学びの多様化学校」が新たに設置され、総計で84校になりました。

2026年1月に開校した私立「横浜きりん学園」は、神奈川県で唯一の私立義務教育学校の「学びの多様化学校」です。

体験を通じた食育を柱に、子どもたちの学びや成長につなげるという取り組みについて、夏休みの登校日の子どもたちを現地取材。

自然と触れ合いながら学び、どんどん表情が変わっていく子どもたちの様子や、森美佐子校長先生から伺った教育の理念をお届けします。

「横浜きりん学園」の食育を教育の土台にする理由

──まずは、「食育」を教育の柱とする「きりん学園」を設立した経緯をお聞かせください。

森美佐子校長先生(以下、森先生):学校法人森学園は、もともと幼稚園を運営しており、設立者の森秀雄が「食と農を通じて心と身を育む」ことを大切にしていました。その考えのもと、自然豊かな環境と農地を残し、食育は法人全体の理念として根付いています。

小学校からの「学びの多様化学校」は、全国でも非常に少なく、神奈川県では本校のみとなっています。そういった子どもたちが学びを継続できる学校として、大切な役割があると感じ設立に至りました。

cocreco学校法人森学園の理事長兼横浜きりん学園校長・森美佐子先生。 写真提供:横浜きりん学園

森先生:本校は小中一貫教育を行い、4・3・2制を実践しています。小学校から中学校への移行期(特に小6~中1)に不登校が増加・深刻化する傾向があり、この時期をスムーズに支援できる学校が必要だと考えました。

また、食育教育というのは、小学校になると主要教科からはずれてしまいます。不登校になってしまった子たちに、もう1回学びの楽しさを体験してもらえるよう、学びの土台として食育を行っています。

子どもの「行きたい」を引き出す朝活とおにぎり作りの工夫

──朝9時から始まった「朝活」ではどのようなことを行うのですか?

森先生:今日は、おにぎり作りを行いました。梅おにぎりには、学校で収穫した南高梅で作った手作り梅干しを使っています。子どもたちが包丁で梅をたたき、鰹節とあえて握りました。

cocreco梅おかか、ゆかり、塩の3種類のおにぎりを作り、みんなで学校近くの農園「トコミドリ広場」で食べました。

森先生:他にも朝活では、プログラミングや映画鑑賞、ボードゲームなど、子どもたちの興味のあることを行っています。サークル活動のようなイメージですね。毎朝、学校生活への導入として取り入れています。好きなことからスタートし、子どもたちが「学校に行きたい」と思えるきっかけになればと考えています。

農園での体験学習で子どもの表情が劇的に変わる理由

cocreco8月の登校日に行われたスイカの収穫体験でのひとコマ。「ツルってフワフワだね」「こうやって実がなるんだ!」などたくさんの声が聞こえました。

──農園「トコミドリ」とはどのような場所ですか?

森先生:里山環境の保全のために、地域や事業者が里山体験広場「トコミドリ」を運営しています。春にスイカの苗を植えたので、今日はその収穫をしました。

スイカの収穫では、久しぶりの登校日で不安な表情をしていた子や、離れて様子を見ていた子も、スイカ割りをして、自分が作ったおにぎりとスイカを食べる体験を通じて、次第に明るい表情になりました。最後はみんなで農園にいるヤギにエサをやることができました。

cocreco4月に苗を植えたスイカの収穫体験の様子。「何個あるかな?」「小さい赤ちゃんスイカがある!」子どもたちの会話も弾みます。

森先生:教員は距離感を大切にし、話しかけすぎず、子どもが自分で選択・発信できるような雰囲気づくりを心がけています。今ここにいるだけでも、もしかしたら精一杯頑張っているかもしれないので。

大人がついつい支援・介入しすぎてしまうことで、子どもが自分で決めるタイミングを逃してしまわないように、「待って見守る姿勢」を常に意識しています。

誰かにやらされるのではなく、自分でやってみようと思えるきっかけになること、そしてひとりではなく、みんなで活動する楽しさを自然に体験できることが食育の大きな効果だと思います。

「食育」が子どもの知的好奇心を刺激し、教科横断型の学習に発展する

──食育は、実際の授業ではどのように実践されていますか?

森先生:体験を単にイベントとして終わらせるのではなく、その時に感じたことや気づいたことを振り返りシートに記録したり、他教科の学習内容に関連づけて関心を深めるように工夫しています。

例えば「大根」をテーマとした場合、切り干し大根やたくあん作り、生食、保存食、さらに国語の教科書に登場するストーリーと結びつけ、季節に合わせた時期(冬)に授業を実施します。

cocreco先生たちが制作した1年間の食育カレンダー。理科の学習につながる内容や、地域の自然、工作遊びに至るまでさまざまな内容が盛り込まれています。

森先生:食育は理科・国語・社会など多教科と横断的につながっており、生態系・自然環境・食文化など幅広い学びを内包しています。

最終的には、学んだことを地域の人たちや家族に対して発信するとか、何かの役に立つところまで成長できたらいいなと思っています。

「学校に行けなかった」子どもたちが自発的にプレゼン

──開校してから、印象的だったエピソードはありますか?

森先生:1学期の終業式前日、7年生の生徒たちが自ら「亀を飼いたい」というプレゼン資料を作成し、校長室にやってきました。

与えられた課題をこなすのではなく、「自分たちでやりたいことを決めて責任を持ってやります」、何が必要かちゃんと考えて準備をして、「責任持って世話をします」っていうことを、自分たちから発信ができるってすごいことだな、と思って。

入学からわずか数ヵ月で、かつて学校に行けなかった子どもたちが、自発的に企画・準備・責任を持って取り組む姿を見せてくれました。とても嬉しかったですね。

cocreco亀を飼うために、子どもたちが作ったプレゼン資料。亀を飼うメリットや、飼育の仕方まで細かく調べられています。

遅刻や下校時間の概念を撤廃

──食育のほかにも、教育課程で工夫されているところはありますか?

森先生:総合学習の時間を多くとっています。例えば、蚕を育てて繭から糸を作るという学習を行い、その糸で作品を作ります。一時期、職員室の前にたくさんの蚕がいました。この体験を通じて、命の尊さ、昔の人の暮らしや、歴史を学ぶことなど教科横断的に学びを深めていくことができます。

cocreco蚕を飼育し、繭から糸をとって作った子どもたちの作品。とても貴重な体験です。

森先生:登校できない日が続くお子さんは、オンラインなどで話をして、先生や学校に短い時間から慣れていきます。一日中頑張らないで、数時間だけ来て帰るなど、その子に応じた登校時間を組むようにしています。毎日ではなくても、週に何回来る、と決めながら個別のペースに合わせています。

無理に学校に居なくて大丈夫。遅刻や下校時間の概念をなくし、子どもが無理なく参加できる環境を整えています。カフェテリアでは、一緒に登校した保護者が仕事をしながら待つこともできます。

cocreco校舎1階にあるコミュニティカフェ。地域の人たちがランチをしたり、保護者が待機する場所としても使われています。

森先生:「集団の中での経験を通じて社会に適応する力」を育てる場として、本校が必要な子どもや保護者の方へ、これからも発信し続けていきたいと思っています。

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きりん学園の「食育で学びの土台を作る」という考え方から、「学ぶことの楽しさ」は現代のすべての子どもたちにとって大切な学びのひとつだと改めて感じました。

撮影・取材・文/尾関久美子

cocreco写真提供:横浜きりん学園

横浜きりん学園

住所:神奈川県横浜市栄区庄戸3‐1‐1

電話:045‐410‐7757(横浜きりん学園 事務校務課)

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