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茅ヶ崎市美術館で開催中の瀧本幹也展で、天体から祈りまで未知の写真体験を

  • 2026.10.28
Courtesy of MIKIYA TAKIMOTO PHOTOGRAPH OFFICE Co., LTD.

写真家・瀧本幹也の大規模な展覧会が茅ヶ崎市美術館で開催されている(~11月8日)。はるか遠くの宇宙から、足元で風に揺れる花まで、見る人の意識が自由に飛翔するような視覚体験をもたらす展覧会だ。

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地表を撮った「LAND」の強さ

地表を捉えた「LAND」とスペースシャトルを撮影した「SPACE」の2つで構成されるシリーズ『LAND SPACE』も、その独創的な表現に目が奪われる作品群だ。例えば同シリーズの一点、南極大陸を撮った作品は、雪の白と地表の黒の鮮明なコントラストが大地の凹凸を際立たせ、ほかの南極の写真や映像では見たこのない姿に圧倒される。

<写真>『LAND SPACE』シリーズより、「LAND」のテーマの作品群。空を入れずに地表だけが撮影され、地球という星の造形が迫ってくる。

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今回の展覧会は、瀧本が22歳の頃に撮ったモンゴルの人々の肖像『MONGOLIAN TRIBE』(1997)、前述した『LAND SPACE』(2011)、海のシリーズ『GRAIN OF LIGHT』(2014)、女性の腹部のシリーズ『LUNAR TIDE』(2016)、草花のシリーズ『LUMIÈRE』(2024)、寺院のシリーズ『PRIÈRE』(2024)、最新作である茅ケ崎の海のシリーズ『LUNATION』(2026)を中心とし、これらの主要なシリーズに、いくつかのポイントとなる作品を織り交ぜて構成されている。

<写真>『LAND SPACE』のシリーズより、「SPACE」の作品群。左に見えているのはスペースシャトルの噴射口。ある時瀧本は「火山の火口」に似ていることに気付く。「文明の極致は、気づけば自然に似ていた。~(中略)~『LAND』と『SPACE』は、対極ではない」と瀧本は図録に書いている。

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ターナーが描く海と、瀧本が撮る海

広告や映画の撮影を数多く手掛け、同時に作家として地球や自然を題材としてきた瀧本。その写真は、視点、構図、光といくつものユニークな点があるが、今回の出品作を語る時には近しいものとして、10月24日に国立西洋美術館で展覧会が開幕した、イギリスの画家ターナー(1775〜1851)が描いた海に触れたくなる。

<写真>『human nature Dai Fujiwara | 人の中にしかない自然 藤原大』展で共同制作された《EBOSHI-IWA》(2020)。茅ヶ崎の烏帽子岩を上空から撮影した本作を機に、茅ケ崎市美術館での瀧本の個展の企画が立ち上がった。

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瀧本は2つのシリーズ、『GRAIN OF LIGHT』と『LUNATION』。茅ヶ崎の烏帽子岩を空撮した《EBOSHI-IWA》(2020)や、矢野顕子のアルバムのために撮った《CHIGASAKI-SEA》(2022)など、たびたび海をモチーフとしてきた。

ターナーによる、どのように絵筆を走らせたのか想像もつかないタッチで、波しぶきや、その場の大気をキャンヴァスの上に出現させた海景の作品群。瀧本の写真において、白波はドラマティックな油彩のようであり、凪の海面は途方もないストロークを重ねた鉛筆画のようであり、ターナーと同様、見ても見ても飽きることがない。瀧本の視点をあれこれ想像するのは、画家のタッチや思考を目で追うような、ワクワクする行為だ。

『GRAIN OF LIGHT』について瀧本は、「地球を包み込む海。その水面に刻まれ続けたきた悠久の時間を、一つの像として掬い取ろうとしたシリーズ」と説明している。このシリーズのうち、2作品は光が太陽から地球へ届くまでの時間である、約8分20秒を露光時間として設定して撮影された。

<写真>『GRAIN OF LIGHT』のシリーズ。

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<写真>《GRAIN OF LIGHT #02》(2014)

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月の光が地球に届くまでの1.3秒を露光時間にして海を撮る

新作『LUNATION』は、茅ケ崎の夜の海を月光が地球に届くまでの時間、約1.3秒を露光時間とし、撮影されている。漆黒の中、月の光が水面に残した軌跡は、星空のように見えるから不思議だ。海は常にその形態を変えながら、鏡のように月の光を映す。

会場には、瀧本が11歳の頃に撮った写真も展示されている。望遠鏡にカメラを取り付けて撮った天体写真だ。子どもの頃に芽生えた宇宙への好奇心は、「宇宙と自分とがひとつながりであるという感覚」を育んだという。

<写真>『LUNATION』のシリーズは、額装されたプリントのほか、筒の中の凸レンズを通してのぞき込んで鑑賞するものも会場に用意された。望遠鏡で夜空を見ているようだが、見ているのは夜の海だ。

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花と寺院、新たな2つの題材

この展覧会では「地球を俯瞰するような視点で撮り続けてきた」と自らを語る瀧本が、コロナ禍の2020年より、新たな題材と出合い制作された2つのシリーズにもボリュームが割かれている。草花を撮った『LUMIÈRE』について、「花や昆虫の視点で世界を見つめると、そこには光を求めて揺れ続ける無数の生命の営みがあった」と綴っている。

<写真>『LUMIÈRE』のシリーズ。

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同じ2020年の秋、京都の寺院に通い、座し、制作した『PRIÈRE』においては、自分の中に静かに満ちてくる何かを感じたと述べ、瀧本は、それを「祈り」と呼ぶのだろうか、と自問している。

<写真>『PRIÈRE』のシリーズ。

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天体から自身の内側まで、じっくりと見る――そして世界を照らす光を注意深く扱い、日常では気付くことのできない像を描き出していく。瀧本の写真が、見る人の中に起こす静かな波紋を、ぜひ会場で感じてほしい。

<写真>《SNOW MOUNTAIN #06 #07 #08》(2019)。厳寒の雪山を撮った本作は、2020年に京都の妙満寺 大書院にて襖絵に仕立てられ展示された。『PRIÈRE』の制作へと向かう、転機をもたらした作品でもある。これまでに見たことのない、精緻かつ繊細に表現された雪山の姿に吸い寄せられる。展覧会では、写真のほかに映像作品も出品されている。

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<写真>展示は、昼の月をとらえた《LAND MOON》(2015)から始まる。

瀧本幹也 LUNATION 朔望―海から天体を読む

会期/2026年9月2日(水)〜2026年11月8日(日)
会場/茅ヶ崎市美術館
住所/神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45


瀧本幹也
Mikiya Takimoto

1974年生まれ。愛知県出身。藤井保に師事し、1998年瀧本幹也写真事務所を設立。広告、エディトリアル、作品制作、コマーシャルフィルム、映画など幅広く撮影を手掛ける。是枝裕和監督作『そして父になる』『海街diary』『三度目の殺人』、Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』で撮影監督を務めるなど、映像作品でも活躍。作品はニューヨークのメトロポリタン美術館、フランス国立図書館BnF、東京都写真美術館などに収蔵されている。

Photos (Exhibition view) Courtesy of MIKIYA TAKIMOTO PHOTOGRAPH OFFICE Co., LTD.

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