1. トップ
  2. エピソード
  3. 母が昔から気にかけていた同級生と付き合った俺が「うちの母には内緒で」と念を押したわけ

母が昔から気にかけていた同級生と付き合った俺が「うちの母には内緒で」と念を押したわけ

  • 2026.10.30
ハウコレ

彼女に「私のこと、お母さんに言えない理由があるの?」と聞かれても、肝心なところは言えないままでした。その数日後、母からかかってきた電話の声は、いつもより弾んでいました。

母は、俺が通っていた高校の近くのパン屋で働いています。彼女と付き合い始めてから厄介になったのは、高校時代に聞かされた母の口ぐせでした。

母の口ぐせだった同級生

高校1年のころ、食卓で母がこう聞いてきました。

「くるみパンの子、あんたと同じクラスでしょ」

母の話では、その子は登校前にいつもくるみパンを1つ買っていくそうです。毎回お礼を言い、袋はいらないとカバンにしまうのだとか。母は決まって、こう付け足しました。

「ああいう子と仲良くしなさいよ」

それから母は、何かにつけてその子の話をしました。うっとうしいと言い返しながら、教室でその子の席を目で追っていたのは俺のほうです。結局、卒業まで用事以外で話したことはありません。そのくるみパンの子が、今の彼女です。

念を押した本当の理由

去年の同窓会で隣の席になり、俺から連絡先を聞いて付き合い始めました。うれしい半面、浮かんだのは母の顔です。帰省するたびに「くるみパンの子、元気にしてるかね」と聞いてくる母が、付き合っていると知ったらどうなるか。店に来た彼女に「うちの子にずっと話してたのよ」くらいは言いかねません。気になり始めたきっかけが母の口ぐせだったなんて、彼女に知られるのは格好がつきませんでした。

先月、俺から「結婚のことも、ちゃんと考えてるから」と伝えたばかりだったのに、改札の前で念を押すように口にしたのはこれでした。

「うちの母には内緒で」

彼女は「わかった」とうなずきました。母の大きな声が漏れるのが嫌で、母からの着信も外で受けました。休日に2人で寄った地元のパン屋の前で「そこはやめとこう」と腕を引いたのも、その日は母が店に出ていると知っていたからです。彼女の目にどう映っていたかまでは、考えていませんでした。

ベンチで言えなかった続き

数日後、駅前の公園のベンチで、彼女に聞かれました。

「私のこと、お母さんに言えない理由があるの?」

俺はコーヒーの紙カップをベンチに置き、首を横に振りました。

「違う、そういうんじゃなくて。理由はちゃんとある。でも、恥ずかしいやつなんだ」

「結婚の話までしておいて、お母さんには言えないの?」

彼女にそう言われても、顔を見たら全部話してしまいそうで、つま先ばかり見ていました。駅で手を振っても、彼女は振り返しませんでした。彼女を、家族に会わせたくない相手のように扱っていたと気づいたのは、帰りの電車の中です。

そして...

それから数日後、母から電話がありました。

「今日、くるみパンの子が来たのよ。袋はいいですって、高校のときのまんま。この前、店の前を一緒に歩いてたでしょ」

母の声は弾んでいました。「別に」とだけ答えて電話を切り、その夜、彼女に送りました。

「次の休み、あのパン屋の話をさせて」

やがて「わかった」と返ってきました。改札の前と同じ返事です。

次の休みには、きっかけが母の口ぐせだったことまで全部話します。そのあとで、母にも伝えるつもりです。「ああいう子と仲良くしなさいよ」と言われ続けた俺が、とっくにそうしている、と。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ