1. トップ
  2. エピソード
  3. 引っ越しの荷物から出てきた元カノの傘→俺が本当に送りたかった言葉は別にありました

引っ越しの荷物から出てきた元カノの傘→俺が本当に送りたかった言葉は別にありました

  • 2026.10.30
ハウコレ

送った言葉に既読はついたのに、返事は届きませんでした。後から打った2通目も、伝えたかったこととは遠いまま。付き合っていた頃から、俺は同じことを繰り返していたのかもしれません。

クローゼットの奥から、紺色の折りたたみ傘が出てきました。転勤が決まり、引っ越しの段ボールを詰めていた途中のことです。半年前に別れるまで、この部屋によく来ていた元カノが置いていったものでした。

荷造りの途中で打っては消した言葉

新しい街に知り合いは1人もいません。誰かに話したいと思ったとき、先に浮かんだのは彼女の顔でした。

傘を床に置いたまま、スマホで彼女とのチャットを開きました。

「まだ好きだ」と打っては消し、「元気?」と打っては消す。どちらも、返事が来なかったときのことを考えると送れませんでした。

最後に送信したのは「まだ俺のこと好きだろ」です。先に聞いてしまえば、否定されても冗談で済ませられる。そんな計算がありました。

既読のあとに打った2通目

送ってしばらくすると、言葉の横に既読がつきました。けれど、返事はいつまでも来ません。今頃、彼女はあの文面を見て呆れているのだろうか。そう考えるうちに、自分の言葉がひどく偉そうに見えてきました。送信を取り消すこともできたのに、もう読まれた以上、消しても遅い。取り消した跡まで残るのは格好悪い気がして、そのままに。

段ボールを1箱詰め終えたころ、「ごめん、今のは違う」と送りました。謝ったつもりでした。けれど、何が違うのかはどこにも書いていません。

しばらくして、その言葉の横にも既読がつきました。返事は、やはり来ませんでした。

彼女に言わせてばかりいた頃

付き合っていた頃も同じでした。彼女の返信が遅いと、俺は「俺がいないと寂しいだろ」と送っていました。寂しかったのは、たいてい俺のほうでした。先に「会いたい」と書けば済む話でした。誕生日に彼女がメッセージを先に送ってくれた年も、返したのはお礼のスタンプだけです。

別れ際に届いた「ちゃんと言葉にしてくれる人がいい」にも、「わかった」としか返していません。引き留めて断られるのが怖かった。自分の気持ちは書かずに、相手の返事だけを待つ癖は、あの頃から少しも変わっていなかったのだと思います。

そして...

それから数日、次のメッセージは送れませんでした。「傘、どうしたらいい?」と打った画面も、送信しないまま閉じました。

傘は、ほかの荷物と一緒に新しい部屋へ運びました。チャットを開くたびに、既読のついた2通が並んだまま、その下には何も届いていません。その下に書き足せば、今度こそ俺から言葉にしたことになる。分かっていても、入力欄は空のままでした。

ほかの箱が少しずつ空になっていくなかで、傘の入った箱だけは、テープを剥がせないまま部屋の隅に残っていました。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ