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「あの人、元気ですか」元彼の恋人が教育係だと知った日、私が先輩の目を見てそう聞いた理由

  • 2026.10.26
ハウコレ

用意していたのは、当たり障りのない一言でした。けれど先輩の目を見たとき、口から出たのは別の言葉でした。その質問には、元彼に一度も伝えられなかった思いが残っていました。

課長に連れられて歩くフロアの奥で、見覚えのある顔がこちらを振り向きました。課長が足を止めたのは、その人の机の前でした。名刺を差し出しながら、最初に何を言うべきか、まだ決めかねていました。

二次会の端から見ていた2人

元彼とは、大学の3年間付き合いました。就職活動がうまくいかなかった時期、優しくされるほど自分が情けなくなり、「一緒にいると疲れる」と言って別れを切り出したのは私でした。理由を何度も聞いてくれた彼への返信をやめ、連絡先も消しました。

1年前、共通の友人の結婚式の二次会に、彼が来ていました。隣には、彼のグラスが空くたびに店員さんを呼んでいる女性がいました。話しかける勇気はなく、会場の端から2人が笑うのを見ていただけでした。

その女性が、転職先で私の教育係になっていました。

用意していた一言とは違う質問

課長が「あとはよろしく」と会議室へ向かったあと、言うなら今しかないと思いました。同じ職場で働けば、共通の友人を通して、いつか先輩の耳に入るかもしれません。知らないところで知られるより、自分の口から伝えるほうがいいと考えていました。

用意していたのは「大学のときの知り合いなんです」という、当たり障りのない一言でした。ところが先輩の目を見たとたん、口から出たのは別の言葉でした。

「あの人、元気ですか」

「あの人って?」と聞き返されて、ようやく自分が何を聞いたのかに気づきました。

「今お付き合いされている方です。大学のとき、私が付き合っていた人なんです」

「急にすみません。よろしくお願いします」

頭を下げると、先輩は「こちらこそ」と返して、共有フォルダを開きました。その日は、教わった手順をノートに書き写すことだけに集中しました。

言いそびれたことと、返ってきた答え

別れてから、彼に謝ったことは一度もありません。連絡先を消した私から連絡する資格はないと思っていましたし、恋人のいる人に今さら連絡するつもりもありませんでした。それでも、ひどい言い方で終わらせた相手がその後どうしているのかは、ずっと気になっていました。先輩の顔を見て出てきた質問は、その答えを知りたい気持ちがそのまま出たものでした。

先輩はそれからも、丁寧に仕事を教えてくれました。ただ、私に声をかける前に、少しだけ間があることにも気づいていました。

1週間が過ぎた退勤時、エレベーターの前で先輩と2人きりになりました。階数表示を見上げたまま、初日に言いそびれたことを口にしました。

「先に言っておきたかったんです。あとから知られるのは嫌だったので」

少しして、先輩が言いました。

「元気だよ。ちゃんと」

先輩のほうを向いて「よかったです」と返すと、思っていたより軽い声が出ました。到着音が鳴り、先に乗り込んで開くボタンを押しました。

そして...

翌週、ノートの手順の横に付箋を足しながら、先輩に教わった言い回しを覚え直しました。先輩があの日の答えを彼に伝えたのかどうかは、聞いていません。彼に謝る機会も、この先たぶんありません。

それでも、先輩の机に向かう前に、頭の中で言葉を用意し直すことはなくなりました。

(20代女性・事務職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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