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謝る一言を何度も消した俺が、3000円と「ケーキでも買って」に逃げた理由

  • 2026.10.26
ハウコレ

現場の休憩所で送金アプリを開き、3000円と入力しました。宛先は、ゆうべ口をきかないまま別の部屋で眠った妻です。メッセージ欄には一度「昨日はごめん」と打ちました。

送信ボタンは押せませんでした。

俺だけが悪いことになる気がしていた

結婚して3年、俺は妻に謝るのが苦手でした。今回も、妻が実家へ行く日を母親との電話で先に決めていたことには腹が立っていました。

俺だって予定がある。

そう思っていたところへ、同僚からゴルフに誘われ、その日を入れました。妻から、「いつも私の予定は後回しだよね」と言われ、「そっちだって勝手に決めてただろ」と返しました。ゴルフを先に入れたことと、あの言い方は俺が悪かった。それは分かっていました。

でも「ごめん」と言えば、妻が先に予定を決めたことまで俺が受け入れたことになる気がしたのです。自分が悪かったところを謝ってから、自分が嫌だったことを言えばいい。今ならそれだけの話だと分かります。そのときの俺には、それができませんでした。

タルトの話だけは覚えていた

言い合いになる少し前、妻は食卓で言っていました。「駅前のケーキ屋さんの栗のタルト、今週までなんだって」俺はゴルフの連絡を見ながら、「へえ」としか返しませんでした。でも聞いていました。去年も同じタルトを買い逃して、妻が残念がっていたことも覚えていました。

翌日の休憩中、俺が帰るころには店が閉まっていることを思い出し、送金アプリに3000円を入れました。「昨日はごめん。タルト、今週までって言ってたよね」そこまで打って、全部消しました。謝るついでにケーキで機嫌を取るように見える気がしたからです。代わりに送ったのが、「ケーキでも買って」でした。今考えれば、謝罪だけ消してお金を送ったほうが、よほど機嫌取りに見えます。妻から、「お金じゃなくて、ごめんが聞きたかった」と返ってきて、初めてそれに気づきました。

それでも押せなかった送信ボタン

入力欄に、「昨日はごめん」と打ちました。でも、また消しました。妻が先に実家の日を決めたことには、まだ腹が立っていました。その気持ちを持ったまま謝る方法が、俺には分からなかったのです。結局、現場の片づけ前に送ったのは、「駅前の店、閉まるの早いから」でした。自分でも、何をしているんだと思いました。それでも「ごめん」より、その一言のほうが送れました。

帰りの電車で、妻から写真が届きました。冷蔵庫に並んだ栗のタルトが2つ。文面はありませんでした。1つは俺の分なのだろうか。そう考えながら帰りました。

そして...

家に着くと、妻が先に口を開きました。「実家に行く日、先に決めたのはごめん」俺がずっと待っていた言葉でした。なのに、言われてみると勝ったような気持ちにはなりませんでした。

妻は続けました。「でも、それで昨日のことまでなかったことにはしたくない。私は、お金じゃなくて言葉で話してほしかった」もう逃げるところがありませんでした。「ゴルフ入れたのはごめん。昨日の言い方も悪かった」口にしてから、続けました。「でも、実家の日を決めてから言われたのは嫌だった」「うん。それは私が悪かった」謝っても、自分の言いたかったことは消えませんでした。「こうやって言えばよかったんだな」「最初からそう言ってよ」妻が冷蔵庫からタルトを2つ出しました。「栗のやつ、残ってたんだ」「覚えてたの?」「去年も買えなかっただろ」妻は箱を開けながら言いました。「じゃあ、半分ずつね」俺が皿を2枚出しました。

タルトを食べ終わるころ、週末は午前中に妻の実家へ行き、ゴルフは別の日に変えることで話がまとまりました。

(30代男性・設備点検)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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