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森香澄、映画初主演作で“人生に漠然とした迷いを抱える30歳”に共感しながらも「人生は予想通りに進んでもつまらない」

  • 2026.10.24

アナウンサーとして活動後、現在はタレントや俳優として注目を集める森香澄さん。Prime Videoにて独占配信中の映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』では、映画初主演を務める。

演じるのは、やりたいことや夢が見つからず、仕事や居場所を転々としながら、人生に迷う30歳のヤマダ。愛嬌を武器に人と関わりながら生きる役柄には、自身と重なる部分もあったという。森さんに初主演への思いや撮影の裏側、そして30代を迎えた今の人生観を聞いた。

映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』で映画初主演を務めた森香澄さん
映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』で映画初主演を務めた森香澄さん

「愛嬌」は人と関わるために身につけた処世術

――映画初主演が決まったときの第一印象を教えてください。

【森香澄】すごくありがたいなと思いました。まず脚本がおもしろかったですし、群像劇もやったことがなかったので、単純に挑戦してみたかったんです。ヤマダという役を私にやってほしいと思っていただけたこともうれしくて。いきなりの主演で不安はありましたが、その不安もヤマダの表現に変えられるんじゃないかなと思いました。

――その不安をヤマダという役柄のどんな部分に昇華されたのでしょうか?

【森香澄】ヤマダの不安は、仕事を失って路頭に迷うような大きなことではないんですよね。仕事もあるし恋人もいるけれど、「これって本当にやりたいことなのかな」「私の夢って何だろう」という漠然とした迷いだったと思うんです。

私自身もお仕事をさせてもらっているし、やりたいこともあります。でも、「これができます。やらせてください」と言い切れるほどの自信があるわけではないんですよね。そこが似ているなと思いました。ヤマダ自身も迷いながら生きているので、私もそのときに抱えていた不安を生かせるかもしれないなと考えて役に臨みました。

――愛嬌があるという部分も、ヤマダとの共通点かと思います。森さんにとって愛嬌とはどんなものでしょう?

【森香澄】私は愛嬌があるとか、あざといと言われることが多いんですけど、昔は人見知りで、人と会話するのがすごく苦手だったんです。でも、ニコニコしたり、「楽しい」と言葉にしたりすると、みんなが笑ってくれる。そうやって無意識に身につけた処世術だったんだと思います。

アナウンサー時代は特に、その能力が身についた期間かもしれません。人にお話を聞く仕事は、基本的に相手がどんなテンションでいらっしゃるかわからないからこそ、まずは感じよく受け答えをする。その礼儀が、私にとっての愛嬌になっていった気がするんです。

ヤマダも、強く「自分についてこい」と言うようなタイプではないけれど、人と関わって生きていきたい。みんなの中でうまくやっていくために、愛嬌を身につけたんじゃないかなと思います。

「伝わりやすすぎる」アナウンサーの癖を手放す役作り

――役作りで、監督から言われた印象的な言葉はありますか?

【森香澄】「伝わりやすすぎます。ヤマダの喋りはそんなに伝わらない」と言われたことが印象的です。自分では、そんなにハキハキしゃべっているつもりはなかったんですけど、アナウンサーの癖なのか言葉を全部伝えようとしてしまうんですよね。

私の中では楷書を草書にするくらいダラダラしゃべっているのに、スタッフさんは「全然聞こえるから」と。「これ以上喋り方を砕いてしまったら、言葉じゃないんですけど」という感覚でしたね。意外と苦労した部分でした。

――逆に、撮影で特に楽しかったシーンはありますか?

【森香澄】芋生悠さん演じる親友のフルヤとけんかをするシーンですね。コミカルではあるんですけど、「かっこいい女になれなんてあたしには無理なんよ」と、ヤマダが自分の思っていることを初めて言葉にする場面なので、丁寧に作りました。

特に、フルヤと「バーカ!」と言い合うところは楽しかったです。ヤマダはフルヤに腹を立てているから、一番高そうなお菓子を持って帰って、ちょっとでもフルヤに損をさせようとする。でも、結局むかついて投げちゃう。自転車で走り去るときも、ヤマダは近所迷惑になってフルヤが困ればいいと思いながら「バーカ!」って大声で言うよなと思って…(笑)。

監督には「森っち、自転車こぐのすごく速いよね」と言われて、それもおもしろかったですね。私はいつも通りだったんですけど、せっかちな性格なのとフルヤに対する怒りが爆発したのか、すごい速さでいなくなっていたらしいです(笑)。

――シバ役の若葉竜也さんとの共演はいかがでしたか?

【森香澄】すごく雰囲気のある方というイメージだったんですけど、自然体でフランクに話してくださいました。話し方が変わるわけでも、スイッチを入れる感じでもないのに、スクリーンを通すと違って見える。偏光レンズみたいな、不思議な俳優さんだなと思いました。

お芝居では、会話が始まると自然にヤマダとして話せる空気を作ってくださって。シバとヤマダが出会ったときと、物語の終盤では会話のテンポが少し違うんです。細かく決めていたわけではないのに、自然とリズムが合ったり、合わなかったりする。そのあたりは、若葉さんに引っ張っていただきました。

(C)2026日活
(C)2026日活

――今回の作品を通して、改めて感じたお芝居のおもしろさはありますか?

【森香澄】アナウンサーやタレントとしてカメラの前に立つときは、ずっと笑っていたんです。でも、お芝居では怒りや悲しみを出すことも多くて。私は、森香澄として負の感情を表に出すのが苦手なんですよね。冗談交じりには言えても、基本的にポジティブな性格なこともあって、本当に怒っていることは言えなかったりする。でも、役を通せば、自分の中にある感情を表現として出せる。それがすごくおもしろいなと思いました。

「こうすれば演技がうまく見える」といったことも、今回の撮影では一切考えず、振り返ればとにかく一生懸命でした。バラエティでは見せ方をすごく考えるので、逆にそちらの方が演じているのかもしれません。もちろん話しているのは私自身のことですが、「こういうキャラクターを求められているんだろうな」と、少しキャラをかぶっている部分はあると思います。

今回はそういう鎧をかぶる感じではなく、ヤマダの生活の中で「ヤマダだったらこう言うだろうな」と、自由にやらせていただきました。改めて、演技のおもしろさを感じました。

「誰かと生きていきたい」と言えるヤマダの強さに共感

――ヤマダを演じて、恋愛観や結婚観に刺激を受けた部分はありますか?

【森香澄】ヤマダがシバに「私は誰かと生きていきたい」と、ぽろっと言えるところがすごくいいなと思いました。一人で何でもできることや自立していることを、いいと言われる世の中じゃないですか。それももちろんかっこいいけれど、「私は一人は嫌だ。誰かと生きていきたい」と素直に言えるヤマダもすてきですよね。

お付き合いしている人がいれば「この人と生きていきたい」と言いやすいけれど、そういう相手がいない状態で言うと、誰かに頼っているように見られがちだと思います。でも、ヤマダはそういうわけではないんです。一人で生きられるけれど、やっぱり人間の根源として、寂しいから誰かと生きたい。寂しさは悪いことだと思わないところに、ヤマダの強さを感じましたし、とても共感しました。

――ヤマダと同じく30代を迎えた森さんですが、20代のころに思い描いていた姿と違いますか?

【森香澄】全然違いますね。大学生のころは「28歳くらいまでに結婚して、30歳までに子どもを産んで」と言っていたと思います。でも、本当にそうしたかったというより、みんなと同じことを言っていただけだったんじゃないかな。

実際にこの年齢になると、30代になったからこその楽しいことがいっぱいあるんだなと感じます。もちろん結婚や出産という選択肢もありますけど、年齢にとらわれる必要はないなと思っています。

(C)2026日活
(C)2026日活

――最後に、今後、具体的に思い描いていることがあれば教えてください。

【森香澄】私は未来が予想通りに進んでも、つまらないと思うんです。予想外だからおもしろいので、あまり予想もしないかもしれません。5年後なんてまったく想像がつかないですし、1年後も、決まっているお仕事があるなというくらいですね。

目の前のことを一つずつ選んで、そこから派生して次のお仕事のお話をいただいて…。今は、そうやって決まっていくものに身を委ねている感じです。

撮影=TOYO

取材・文=イワイユウ

ヘアメイク=高橋莉乃

スタイリスト=大山諒子

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