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彼女の手料理を同期の前で下げた俺が、写真フォルダの弁当を見て思い出したこと

  • 2026.10.25
ハウコレ

写真フォルダを開くと、会社で見せびらかしてきた弁当が何枚も出てきました。あの食卓で口をついて出た言葉は、誰の真似だったのか。思い当たる人がいました。

皿を洗い終えてソファに座ると、スマホが短く鳴りました。送り主は、さっき玄関で見送ったばかりの同期です。文面を読み終えて、俺はシャワーの音がする浴室のほうへ目を向けました。

同期の前で出た口癖

彼女と暮らし始めて1年。会社の同期を家に呼んだ休日、食卓には肉じゃがと唐揚げ、甘めの卵焼きが並びました。同期がいちばんに手を伸ばしたのは卵焼き。すぐに2切れ目を口に運ぶのを見て、先に口が動いていました。

「こいつ料理下手でさ」

笑いながら「卵焼きもいつも崩れてるし」と付け足すと、同期は「え、普通にうまいけど」と返しました。照れくさくて、俺はもう一度笑ってビールを飲み干すだけ。彼女は「ごめんね、下手で」と口元だけで笑い、台所へ立っていきました。

届いたメッセージ

帰り際、同期が玄関で「あ、充電器忘れた」と言うので、「取ってくる」と返してソファのほうへ向かいました。クッションの下から見つけて玄関へ戻ると、同期は「ごちそうさまでした」と頭を下げて帰っていきました。俺が離れていた間に、2人が何を話したのかは知りませんでした。

皿を洗い終えたあとに届いたメッセージには、こうありました。

「卵焼きの自慢のこと、彼女さんに言っといたから。家でもちゃんと言えよ」

会社では毎日、彼女の弁当を同期に見せていました。卵焼きがうまい、今日のも最高だと、呆れられるほど話していたのは本当です。それを本人に知られたと思うと、どんな顔で話せばいいのか分からなかったのです。

写真フォルダに並んだ弁当

浴室のドアの前まで行き、ノックしかけては手を下ろし、結局ソファに戻って写真フォルダを開きました。同期に見せてきた弁当の写真が、ずらりと並んでいました。どの弁当にも、端の少し崩れた卵焼きがありました。

なのに、どうして本人の前であんなことを言ったのか。考えているうちに、実家の食卓を思い出しました。客が来るたび、父は「うちのは料理下手で」と笑い、母は黙って笑い返していた光景です。身内を下げるのが礼儀なのだと、いつの間にか思い込んでいたのかもしれません。あのとき母がどんな気持ちで笑っていたのか、考えたこともありませんでした。

浴室のドアが開き、彼女が俺の横を通って寝室へ入っていきました。声をかけるつもりで顔を上げ、結局スマホの画面を消しただけです。

そして...

翌朝、玄関で弁当を受け取ると、彼女が「人前で下手って言われるのは、嫌だった」と言いました。弁当箱を両手で持ったまま、「ごめん。言い方、間違えた」と返すのが精一杯。父の話をしても、言い訳にしかならない気がしたからです。

会社の休憩室でふたを開けると、いちばん目立つ場所に卵焼きが入っていました。いつもなら同期に見せる弁当を写真に撮り、食べ終えてから彼女に送りました。

「今日の卵焼き、うまかった」

既読はつきましたが、その日のうちに返信は届きませんでした。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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