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私の父に「結婚は考えてません」と答えた彼→門扉を出たところで「さっきの、続きがあって」と言われた私

  • 2026.10.25
ハウコレ

父の問いに、彼は少し間を置いて答えました。一番聞きたくなかった言葉のあとで、彼は何かを付け足そうとしていたのに、私は坂道を先に下りていました。

実家の引き戸が閉まる音がして、門扉までの飛び石を早足で進みました。後ろから追いついてくる彼の足音に、振り返る気にはなれませんでした。

駅からの坂道で伝えておいたこと

付き合って3年になる彼を、初めて実家へ連れていった日のことです。駅からの坂道で「お父さん、たぶん聞いてくると思う」と言うと、彼は手土産の最中の袋を反対の手に持ち替えて「分かってる」とだけ返しました。

今年に入って、友人の結婚式の招待状は3通目でした。聞かれたらどう答えるつもりなのか、彼に確かめたことはありません。確かめなくても、同じほうを向いていると思っていたからです。

湯のみを置いた父と、台所へ立った母

座卓には母の筑前煮が並び、彼は父の正面、私はその隣に座りました。料理の話がひと通り済んだころ、父が湯のみを持ったまま「それで、結婚は考えているのかな」と聞きました。

彼は箸を置き、少し間を置いてから「結婚は考えてません」と答えたのです。

父は湯のみを座卓に置いて「そうか」とだけ言い、母は「お茶、入れ直すわね」と台所へ立ちました。横を見ると、彼は父の手元に目を落としたまま、それ以上は口を開きません。

話題はすぐに庭の柿の木のことへ移り、相づちを打ちながら、取り皿のにんじんを箸で端に寄せては戻していました。3年間を数えていたのは、私1人だったのでしょうか。

門扉の外で、彼が言いかけたこと

門扉を出たところで、母が「これ食べて元気出して」と紙袋を渡してくれました。そのとき、彼が「さっきの、続きがあって」と言いました。

「もういいよ」

振り返らずにそれだけ返して、駅への坂を先に下りました。1歩後ろで彼がまだ何か言っていましたが、耳に入れないようにして足を速めました。

父の前では言わなかったことを、今になって付け足されても困ると思いました。考えていないのなら、それが答えのはずです。返事をしないまま改札を抜け、別々のホームへ分かれました。

そして...

部屋に帰って紙袋を開けると、筑前煮のタッパーが2つ入っていました。片方のふたには、母の字で「彼の分」と書いた付箋が貼ってあります。

父の手元を見たままだった彼の横顔を思い出しながら、スマホに「続き、明日ちゃんと聞かせて」と打って送りました。すぐに既読がつき、「うん。今度は最後まで言う」と返ってきました。

最後まで、ということは、あの答えにはまだ先があったのでしょうか。坂道で耳に入れなかったあの言葉も、気になり始めていました。付箋のついたタッパーは、冷蔵庫の一番手前に入れました。

(20代女性・営業事務)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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