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雨の日も、大人も子どもも夢中になる南国気分。「夢の島熱帯植物館」で楽しむ、緑と水の温室散歩

  • 2026.10.23

JR・りんかい線の新木場駅から歩いて13分ほど。木々の緑が広がる夢の島公園のなかに、丸みを帯びた3つのガラスドームが姿を現す。ガラスの扉をくぐると空気が一変。ふわりと暖かな空気に包まれ、みずみずしい葉の香りが迎えてくれた。天候や季節に左右されず、気軽に熱帯の森へ迷い込んだ気分を味わえる夢の島熱帯植物館。入館料もお手頃で、ふらりと出かける散歩やデートにぴったりのスポットだ。今回は、広報・企画担当の関達也さんに案内してもらいながら、ぐるっと1周してきた。

ガラスのドームが3つ並ぶ、夢の島熱帯植物館 提供画像
ガラスのドームが3つ並ぶ、夢の島熱帯植物館 提供画像

ゴミを燃やした熱で年中ぽかぽか。清掃工場の余熱で育つ800種の植物

夢の島熱帯植物館がオープンしたのは1988年。かつて埋立地だった場所が緑豊かな公園へと整備され、その一角に誕生した。とりわけユニークなのが、すぐ隣にある新江東清掃工場から届く、ゴミ焼却の余熱を温室のエネルギーに活用している点だ。パイプラインで運ばれてくる125度の高温水を熱源にして、大温室の室温はおよそ25度前後に保たれている。

【写真】植物館の予熱利用のしくみを紹介するパネルが、館内の通路で紹介されている
【写真】植物館の予熱利用のしくみを紹介するパネルが、館内の通路で紹介されている

「この黒い太い筒が熱交換器で、温風を送るための管なんです。設定温度は25度にしていますが、お天気に左右されるところもあるので、日々の温度管理はかなり気を配っていますね」

足元の配管を指差しながら教えてくれた。かつて街中のゴミが集まっていた埋立地で、今はゴミを燃やした熱をエネルギーにして、800種類を超える植物たちが元気に葉を広げる。普段は何気なく捨てているゴミが、巡り巡ってここの植物たちを支えていると思うと、温室の足元を走る太い配管を見る目も少し変わりそうだ。

探検気分で滝の裏をくぐる、みずみずしい水辺へ

「大温室は3つのドームが連なっていますが、空間としてはひとつながりで、エリアごとにコーナー分けをしています」と関さん。

熱帯性スイレンが浮かぶ池と滝が特徴的な「Aドーム」
熱帯性スイレンが浮かぶ池と滝が特徴的な「Aドーム」
滝の裏側がルートになっているのも魅力。植物館でありながら、ワクワクドキドキも楽しめる
滝の裏側がルートになっているのも魅力。植物館でありながら、ワクワクドキドキも楽しめる

最初の「Aドーム」に入ると、ゴォ〜っと豪快な水音が響き、タライのような熱帯性スイレンが浮かぶ池の頭上から、水しぶきをあげて滝が勢いよく流れ落ちている。滝の裏側もコースになっていて、水しぶきをくぐり抜ける瞬間はちょっとした洞窟探検気分が味わえる。

「湿地に根を張るマングローブの雰囲気を感じていただける景観になっています」という関さんの言葉どおり、植物本来の姿を間近で観察できる工夫が凝らされている。

大きく幻想的な花を咲かせる「サガリバナ」
大きく幻想的な花を咲かせる「サガリバナ」
落ちてしまった「サガリバナ」の花は、水を張ったお皿で鑑賞できるように工夫されていた
落ちてしまった「サガリバナ」の花は、水を張ったお皿で鑑賞できるように工夫されていた

その先、通路沿いの水面には、夜になると甘い香りを放って咲く「サガリバナ」が枝を伸ばす。朝にはポトリと花を落としてしまう一日花だ。

「熱帯植物は夜に咲く花が多いんです。サガリバナも夜に咲いて昼には散ってしまうので、7月などの夏場には閉館時間を遅くして、夜の植物を楽しんでいただく特別開館も行っています」

開花期(5月から9月ごろ)の朝一番に訪れれば、散る直前のなごりの花や、水面にぽつりと浮かぶ姿に出合える可能性もあるという。

幹から実るカカオに驚く、人と植物がつながる森

続く「Bドーム」は、人々の暮らしと結びついた植物が集まるエリア。ヤシの葉で屋根を葺いた東屋「熱帯の家」が立ち、南国の村のようなのどかな空気が漂う。ここでは、スイーツや日々の食卓でおなじみの果物たちが思いがけない姿を見せてくれる。黄色い果実をぶら下げたスターフルーツ(ゴレンシ)や青いバナナの房。関さんによれば、植物館ならではの展示方針があるという。

南国風の茅葺き屋根が特徴的な休憩スポットも
南国風の茅葺き屋根が特徴的な休憩スポットも
断面模型も一緒に展示されているスターフルーツ。ここでは、正式名称の「ゴレンシ」として紹介
断面模型も一緒に展示されているスターフルーツ。ここでは、正式名称の「ゴレンシ」として紹介

「よく『収穫するんですか?』と聞かれますが、植物館としては、実がなってから朽ち果てるまでのありのままを見せる方針です。収穫して売店で売るようなことはしていません」

だからこそ、来館者からも「植物がどう枯れていくのかを最後まで見られるのがいい」と喜ばれることが多いそうだ。図鑑やスーパーの店頭だけではわからない命の巡りを、間近でじっくり学べるのもこの場所ならではのおもしろさだ。

低い位置にも実をならすカカオ。枝ではなく、幹に実がなるのは驚き
低い位置にも実をならすカカオ。枝ではなく、幹に実がなるのは驚き

奥にはカカオの木も目に入る。ゴツゴツした幹から直接小さな花が咲き、ラグビーボールのような実がぶら下がっていた。

「植物園でもなかなか結実しないと言われるカカオですが、うちでは年中実がついています。幹から直接花が咲いて実がなる『幹生花(かんせいか)』という特徴を、ぜひじっくり見てほしいですね」

さらに顔を上げると、ガラス天井へ届かんばかりに背を伸ばす巨大なヤシの木がそびえ立つ。

上へ上へと高く成長したヤシの木は、このエリアのシンボル的存在でもある
上へ上へと高く成長したヤシの木は、このエリアのシンボル的存在でもある
はるか頭上には、ヤシの実がなっていた
はるか頭上には、ヤシの実がなっていた

「ヤシは成長点が一番てっぺんにあるので、高さを抑えるための剪定ができません。天井に届くと突き破ってしまうため、限界まで見守ったあとに伐採することになります。すでに開館から35年以上が経ちますが、知らないうちにここまで伸びたなと実感しますね」

天井に向かってまっすぐ伸びるヤシを見上げていると、この場所が重ねてきた年月の長さが静かに伝わってくる。

東京の島に息づく、小笠原の固有種に出合う

橋を渡ると「Cドーム」に突入。ここは、東京都心から南へおよそ1000キロ離れた小笠原諸島の植物に焦点を当てたエリア。大陸から隔絶された島々で独自の進化を遂げた固有種たちが、ゆったりと枝葉を広げる。タコの足のように何本もの根っこが地面に踏ん張る「タコノキ」や、初夏に白い花をつける「ムニンヒメツバキ」など、本土ではめったに出合えない植物が並ぶ。「ムニン」とは、かつて人が住んでいなかった「無人島(むにんしま)」に由来するそうだ。同じ「東京都」でありながら、船でしか行けない遠い島の大自然を旅している気分になれる。

独特な形状の根っこに注目したい「タコノキ」
独特な形状の根っこに注目したい「タコノキ」
大きな葉を扇のように広げる「タビビトノキ」(和名オウギバショウ)
大きな葉を扇のように広げる「タビビトノキ」(和名オウギバショウ)

温室の出口付近で待ち受けるのは、旅人の木とも呼ばれるマダガスカル原産の「タビビトノキ」(和名オウギバショウ)。見上げるほど巨大な扇形の葉を広げた姿は、ドーム散策のフィナーレを飾る記念撮影スポットとしても親しまれている。

触ってもすぐには閉じない?間近でじっくり観察できる食虫植物の知恵

大温室を出たすぐ左手にあるのが「食虫植物温室」だ。やせた土地で生き抜くため、自ら虫を捕らえて栄養にする個性的な植物が約9種類並ぶ。フラスコのような袋をぶら下げる「ウツボカズラ」、粘液でからめ捕る「モウセンゴケ」、そして二枚貝のように口を開いた「ハエトリグサ」。なかでも思わず触ってみたくなるハエトリグサの前で、関さんがその巧妙な罠の仕組みを教えてくれた。

見た目のインパクトも強烈な「ハエトリグサ」
見た目のインパクトも強烈な「ハエトリグサ」
捕虫袋が特徴的な「ウツボカズラ」。袋の口に“返し”がついていて、内側はつるつるなので、袋の中に落ちた虫は外に出られなくなる
捕虫袋が特徴的な「ウツボカズラ」。袋の口に“返し”がついていて、内側はつるつるなので、袋の中に落ちた虫は外に出られなくなる

「葉をバチンと閉じるのには膨大なエネルギーが必要で、実は3回ほど開閉を繰り返すとその葉は力尽きて枯れてしまうんです。だから、むやみに触るのは禁物。葉の内側をよーく見ると、左右に3本ずつ小さな針(感覚毛)が並んでいて、そこに2回刺激が当たらないと閉じない仕組みになっています。風で飛んできた落ち葉や雨粒が1回当たったくらいでは誤作動せず、獲物がもがいて2回触れたときだけ確実に捕らえるんです」

「本当に3本生えてる!」「雨粒じゃ閉じないんだ」と、小さな葉をじっとのぞき込む子どもたちの姿も。図鑑で知っていたつもりでも、本物を間近で見ると驚きと発見がある。

身近な1杯から広がる熱帯。企画展で知るコーヒーの背景

植物館では、訪れるたびに新しい発見に出合える企画展も開かれている。企画展示室では年間およそ10回にわたり、さまざまな切り口で熱帯や植物にまつわる展示を行う。取材時に開催されていたのが、キーコーヒー株式会社と連携した企画展『コーヒーで旅する熱帯の国』(2026年11月1日(日)まで)。毎日のように口にするコーヒーも、もとをたどれば熱帯で育つ「コーヒーノキ」という植物の恵みだ。

企画展『コーヒーで旅する熱帯の国』は、2026年11月1日(日)まで開催中
企画展『コーヒーで旅する熱帯の国』は、2026年11月1日(日)まで開催中
コーヒー豆の産地ごとの違いを、触れたり匂いを嗅いだりしながら知ることができる
コーヒー豆の産地ごとの違いを、触れたり匂いを嗅いだりしながら知ることができる

展示室には、赤く熟したコーヒーチェリーの写真や、苗木から1杯のカップに注がれるまでの工程、生産国の文化を紹介するパネルが並ぶ。会場の一角には自家焙煎店で見かけるような本物の大きな麻袋も展示され、丈夫な手触りや通気性のよさを確かめることができる。身近なコーヒーがたどってきた道のりを知ると、次に飲む1杯の味わいも少し違って感じられそうだ。

世界最大級の花を咲かせる「ラフレシア」の模型も展示
世界最大級の花を咲かせる「ラフレシア」の模型も展示
切り株を利用した子ども用のすべり台も設置されている
切り株を利用した子ども用のすべり台も設置されている

南国ランチと滝を眺めるカフェでひと息。クスッと笑える食虫植物グッズに出合う

温室や展示を巡ったあとは、館内の「BONIN BLUE Cafe(ボニンブルーカフェ)」でひと休み。土・日曜、祝日限定オープンのこちらのカフェでは、窓越しに温室の緑と滝を眺めながら、ゆったりとランチやティータイムを楽しめる。

平日の「BONIN BLUE Cafe」は、休憩所として利用されている
平日の「BONIN BLUE Cafe」は、休憩所として利用されている
ガラス越しに、池の風景を間近で楽しめる特等席
ガラス越しに、池の風景を間近で楽しめる特等席

フードメニューには、小笠原産レモンを使ったさわやかな酸味が食欲をそそる「レモンカレー」(1200円)をはじめ、「チーズタコライス」(1200円)や「ロコモコ丼」(1200円)などが並び、散策後のおなかを満たしてくれる。スイーツなら、ふんわり厚みのある「ゆめふわパンケーキ」(1500円)や、フルーツたっぷりの「トロピカル・アサイーボウル」(800円)がおすすめ。

帰り際には、エントランス近くのショップにも立ち寄りたい。棚には植物好きの心をくすぐる、ユーモラスで愛らしいオリジナルグッズが並ぶ。目をひくのは、館内で親しまれている植物をモチーフにしたリアルなぬいぐるみアイテム。葉の内側にある感覚毛まで再現された「ハエトリソウポーチ」(1700円)には、獲物のハエの刺しゅうがちょこんと入る細やかさ。葉脈や縁の反り返りまで立体的に仕立てられた「パラグアイオニバスポーチ」(2530円)も独特の味わいがある。

入り口の横にあるショップでは、ここだけでしか手に入れることができないオリジナルグッズなどが販売されている
入り口の横にあるショップでは、ここだけでしか手に入れることができないオリジナルグッズなどが販売されている
「ハエトリソウポーチ」(右下・1700円)や、「パラグアイオニバスポーチ」(中央下・2530円)のほかにも、「蓄光 ヤコウタケキーチェーン」や「ウツボカズラキーチェーン」(各種1350円)、「ハエトリソウキーチェーン」(990円)、「ラフレシアキーチェーン」(1050円)など、キモかわいいグッズがそろう
「ハエトリソウポーチ」(右下・1700円)や、「パラグアイオニバスポーチ」(中央下・2530円)のほかにも、「蓄光 ヤコウタケキーチェーン」や「ウツボカズラキーチェーン」(各種1350円)、「ハエトリソウキーチェーン」(990円)、「ラフレシアキーチェーン」(1050円)など、キモかわいいグッズがそろう
リフレクター仕様の「ミステリアスプランツ」シリーズ。バッグなどに付けて、実用的にも役立つ便利アイテム
リフレクター仕様の「ミステリアスプランツ」シリーズ。バッグなどに付けて、実用的にも役立つ便利アイテム

都心から少し足を延ばすだけで、天候を気にせず豊かな自然に触れられる夢の島熱帯植物館。のんびり温かなジャングル散歩へ出かけよう!

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取材・文・撮影 = 北村康行

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