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「うるせえな」レストランで子ども連れに舌打ちした男性→睨んだ私が、隣の席の女の子に差し出したもの

  • 2026.10.24
ハウコレ

言い返したい言葉はいくつも浮かびましたが、口論になれば一番困るのは隣の親子。そう思った私がテーブルの間から差し出したものに、泣き続けていた女の子の声がふっと途切れました。

隣のテーブルで女の子がしゃくりあげるたびに、その向こうの席の男性がフォークを皿に打ちつけるように置いていました。女の子を抱き上げながら、周りに何度も頭を下げる母親。私の椅子の背にかけたバッグでは、持ち手につけたうさぎのマスコットがぶら下がっていました。

昼どきのレストランで泣き続ける女の子

仕事の合間に、駅ビルのレストランに1人で入ったときのことです。窓際に2人掛けのテーブルが狭い間隔で並び、私の隣には3歳くらいの女の子と母親、そのさらに隣にはスーツ姿の男性が座っていました。

女の子が泣き出したのは、料理が運ばれてきてすぐでした。

「おうちかえる」

背中をさすっても、お子さまプレートの旗を見せても、泣き声はやみません。母親は小声で謝りながら、女の子の顔を自分の肩に押し当てるようにして抱いていました。

2つ隣の席から聞こえた舌打ち

男性が大きく舌打ちをしたのは、泣き声が少し落ち着きかけたときでした。

「うるせえな」

「すみません」

母親が頭を下げると、女の子はまた大声で泣き出しました。

気づけば、私は男性の横顔を睨んでいました。視線に気づいた男性はこちらを向き、眉を寄せてから皿に目を戻しました。言い返したい言葉はいくつも浮かびました。けれど、ここで口論になれば一番困るのはあの親子でした。

椅子の背に手を伸ばすと、持ち手のうさぎが揺れていました。金具を外し、テーブルの間から身を乗り出しました。

「ほら、うさぎさんだよ」

女の子の泣き声が、ふっと途切れました。濡れた目がマスコットをとらえ、小さな口が何かを言いかけるように動いたのです。

女の子が呼んだ名前

「ぴょんちゃん」

はっきりそう言って、女の子は両手を伸ばしてきました。マスコットを渡すと、胸に抱えて泣き顔のまま笑い出しました。母親はその名前を聞くと窓の外へ顔を向け、しばらくそのままでした。

向かいの席の年配の女性が、こちらを見て目を細めました。

「かわいいうさぎさんね」

女の子が得意げにうさぎを掲げると、近くの席から小さな笑い声がこぼれました。食器の触れ合う音が戻り、店員さんの足取りまで軽くなったように見えました。

男性は一度周りを見回すと、半分残った皿をそのままに伝票をつかみました。誰とも目を合わせないまま会計を済ませ、足早に店を出ていきました。

ドアが閉まると、母親がこちらへ向き直りました。

「本当に、ありがとうございました」

そして...

私が先に席を立つとき、女の子はうさぎを抱いたまま、ポテトを1本ずつ口に運んでいました。母親が慌ててうさぎを返そうとしたので、私は小声で伝えました。

「よかったら、その子もらってください」

レジの前で振り返ると、何度も頭を下げていた母親の隣で、女の子がうさぎの手を持って小さく振っていました。

初めて見るはずのうさぎを、あの子はどうして迷わず名前で呼んだのでしょう。その名前を聞いたあと、窓の外を見ていた母親の横顔が、ずっと気になっています。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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