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店内で泣き続けた娘が、知らない女性のうさぎを「ぴょんちゃん」と呼んだ理由

  • 2026.10.24
ハウコレ

舌打ちと「うるせえな」に、私はただ頭を下げました。料理を包んでもらおうと決めかけたとき、隣の席の女性がテーブルの間から身を乗り出しました。

その日の朝、実家の玄関で手を振る母の足元に、白いうさぎがちょこんと座っていました。帰省していた1週間、娘が「ぴょんちゃん」と呼んで離れなかった子です。乗り換えの駅ビルのレストランで、料理が運ばれてきてすぐ、娘は泣き出しました。

ばあばの家のぴょんちゃん

夫の仕事が立て込む時期で、娘と2人で私の実家に帰っていました。母は数年前から、庭の小屋でうさぎを飼っています。娘は起きている間じゅう小屋の前にしゃがみ込み、母と一緒に餌をあげていました。

帰り道、列車の時間まで少しあったので、窓際の2人掛けのテーブルにつきました。片側の隣にはスーツ姿の男性、もう片側には若い女性が座っていました。

料理が運ばれてきてすぐ、娘が泣き出しました。

「おうちかえる」

娘の言う「おうち」は、ばあばの家のことでした。

頭を下げるばかりだった私

私が背中をさすっても、お子さまプレートの旗を見せても、娘は泣きやみません。周りに小声で謝りながら、娘を抱き上げて顔を肩に押し当てていました。

少し落ち着きかけたところで、男性の席から大きな舌打ちが聞こえました。

「うるせえな」

「すみません」

反射的に頭を下げると、娘はまた大声で泣き出しました。料理を包んでもらって店を出よう。そう決めかけたとき、反対隣の女性が男性を睨んでいるのが見えました。

女性はバッグから何かを外し、テーブルの間から身を乗り出しました。

「ほら、うさぎさんだよ」

窓の外に向けた顔

「ぴょんちゃん」

娘の声を聞いて、私は窓の外へ顔を向けました。玄関で手を振っていた母と、その足元のうさぎ。娘は寂しくて泣いていたのに、帰りを急がせたのは私でした。しばらく娘のほうを見られずにいました。

向かいの席の年配の女性が「かわいいうさぎさんね」と目を細めると、娘は得意げにうさぎを掲げました。近くの席から笑い声がこぼれ、店の中の空気が一気にやわらいでいきました。

気づくと、男性が伝票を持って立ち上がっていました。こちらを見ないまま会計を済ませ、足早に店を出ていきました。

ドアが閉まってから、ようやく女性のほうへ向き直りました。

「本当に、ありがとうございました」

名前のわけも話そうとしましたが、うまく言えそうになく、お礼だけで終わってしまいました。

そして...

先に席を立つ女性にうさぎを返そうとすると、「よかったら、その子もらってください」と言われました。何度も頭を下げる私の隣で、娘はうさぎの手を持って振っていました。

家に着いてから、母にビデオ通話でレストランでの話をしました。娘がマスコットを画面に近づけて「ぴょんちゃん、ふたりになった」と言うと、母は小屋のうさぎを抱き上げて映してくれました。「次は、ふたりそろって連れておいで」

あの店で、私は頭を下げるばかりでした。舌打ちに言い返してくれたのは、隣の席の女性と、小さなうさぎだったのだと思います。名前のわけを伝えられなかったことだけが、今も少し心残りです。

(30代女性・パート)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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